谷本学校 毒性質問箱
Online ISSN : 2436-5114
試験法ガイドライン
1.ICH S5(R3)ガイドライン総論
三ヶ島 史人真木 一茂
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2022 年 2022 巻 24 号 p. 62-68

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抄録

  医薬品の生殖発生毒性試験は、医薬品のヒトへの適用が生殖及び発生過程における何らかの悪影響を誘発するかどうかに関する情報を得るための試験である。生殖発生毒性は一般毒性と異なり、ヒトで検証することが難しいため、得られた試験結果はヒトに外挿され、ヒトでの生殖発生に対する医薬品の安全性の評価に利用される。生殖発生毒性試験では、生殖細胞の形成、受胎、妊娠の維持、分娩及び哺育などの親世代の生殖機能に対する影響、胎生期の死亡及び発育遅滞、発生異常あるいは出生後の成長と発達などについての次世代に対する影響が評価される。

 サリドマイド禍を契機として、本邦では1963年に最初の生殖発生毒性試験法ガイドラインである「胎児に及ぼす影響に関する動物試験法」 1)が制定され、1975年にこの試験法は全面的に改正され、いわゆる三節生殖発生毒性試験法 2)が新しく制定された。1993年には医薬品規制調和国際会議(ICH)においてICH S5ガイドライン 3)が、また、1995年には雄の受胎能評価についてICH S5(R1)ガイドライン 4)で合意された。さらに、2000年のICHにおいて、雄の交配前投与期間についてICH S5(R2)ガイドライン 5)で合意され、本邦では「医薬品の生殖発生毒性試験についてのガイドラインの改正について」 6) (旧ガイドライン)が発出された。

 その後、当該ガイドラインには改定の機運はなかったが、2015年から全改定に向けた議論が始まり、2019年12月にICH S5(R3)ガイドライン 7)が合意され、本邦では2021年1月に「医薬品の生殖発生毒性評価に係るガイドライン」 8)(本ガイドライン )として発出された。

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