タウリンリサーチ
Online ISSN : 2434-0650
Print ISSN : 2189-6232
ミトコンドリア・活性酸素と人の疾患
米田 誠
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ジャーナル オープンアクセス

2023 年 9 巻 1 号 p. 6-9

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抄録
1959 年に、ミトコンドリアの異常による人の疾患が、初めて報告された。1980 年代、臨床・生化学的および病理学的解析から、様々な病型存在が明らかとなり、脳や筋肉の症状をきたすことが多いことから「ミトコンドリア脳筋症」といわれた。1985 年に、代表的な脳筋症の三病型が提唱され、1990 年までに、病因となるミトコンドリア遺伝子mtDNA)変異が同定された。また、糖尿病、心筋症、難聴などの原因としてのmtDNA 変異が次々同定され、人のミトコンドリアの異常による疾患が、脳や筋肉にとどまらない全身の疾患(「ミトコンドリア病」)に拡大した。1990 年代、変異mtDNA の機能的影響を培養細胞やモデル動物で検証する方法が開発され、病態の解明が進んだ。2000 年代になり、次世代シークエンサーの活用によって数多くの核の遺伝子変異がミトコンドリア病の病因として同定された。病態の上で、呼吸鎖不全はATP 産生の低下のみならず、活性酸素の漏出による酸化ストレスを引き起こす。筆者らは、PET 画像装置を用いて患者の生体脳の酸化ストレスの状態をイメージングすることに成功した。新しい分子診断マーカーの開発も進んだ。有効な治療法がないと考えられていたミトコンドリア病においても、基礎科学の知見を元に、本研究会の主題であるタウリンなどの様々な薬剤が日本発で開発された。さらに、病因となるmtDNA の次世代への伝搬を防ぐ生殖医療も行われるようになった。このように、基礎科学の進歩が臨床医学としてのミトコンドリア病の研究を発展させた。
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© 2023 国際タウリン研究会

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