2022 年 11 巻 1 号 p. 72-80
【緒言】国内では同種造血細胞移植(以下,移植)患者のせん妄に関する実態調査が十分ではない為,当院の実態を明らかにする事を目的に調査した。【方法】2015年1月~2018年12月に当院で移植を受けた患者66人の診療録を対象に後方視的にせん妄の発生状況を調査し,せん妄群と非せん妄群でリスク因子の 「低酸素状態,オピオイド使用,腎・肝機能障害等」 を比較した。【結果】移植後30日以内のせん妄発症率は30.3%(うち14日以内発症:70%)であった。酸素投与,オピオイド使用,BUN異常,CRE異常,Bil異常は其々せん妄群:非せん妄群で70%:19.6%,70%:60.9%,85%:39.1%,65%:26.1%,80%:39.1%と,せん妄群で高頻度であった。【考察】生着の目安となる移植後14日以内のせん妄発症率が高い傾向にあった。この時期は身体侵襲が高く活動性が低下しやすい為,低活動性せん妄と鑑別が難しい。特有のせん妄リスク因子や要注意時期を踏まえたケアの重要性が示唆された。