2022 年 11 巻 1 号 p. 10-21
抗胸腺細胞グロブリン(ATG)は同種造血幹細胞移植において慢性GVHDの抑制効果が示されてきたが,ATGの予後への影響は種々の移植条件により異なる。骨髄破壊的前処置では再発や生存に負の影響を及ぼさず慢性GVHDを抑制する効果が示されているのに対し,骨髄非破壊的前処置では再発や生存への影響について一定の結論は出ていない。移植ソースに関し,現時点でATGはPBSCT全般とHLA1座不適合移植で推奨されるが,臍帯血移植では推奨されない。最適なATGの投与量は未確立だが,近年ATGの投与量は減量されつつあり,本邦の非血縁者間PBSCTにおいても低用量で慢性GVHDの抑制効果が得られていた。またATGを用いた同種移植における予後予測マーカーとしてATG投与前リンパ球数が注目されており,“個別化治療” への発展が期待される。