2022 年 11 巻 3 号 p. 148-160
同種造血細胞移植は原発性および本態性血小板血症や真性多血症など古典骨髄増殖性腫瘍から移行した骨髄線維症(MF)患者に対して唯一完治が望める治療法である。MFの患者は高齢者が多く,合併症を有する患者,脆弱な患者も多く,治療関連死亡率と併存疾患が問題となるが,骨髄非破壊的前処置の登場により70歳前後の患者にも移植が可能になった。骨髄バンクドナーに加えて,臍帯血移植,移植後シクロホスファミド投与によるハプロ一致移植,MFに対する移植前のJAK阻害薬の投与などにより移植可能な患者が増えている。MFの移植適応の判断と移植成績の予測には,遺伝子変異検査やDynamic International Prognostic Scoring Systemなど予後予測モデルが参考になる。MFはその症状や病状の進行,遺伝子変異背景など多様性のある疾患であり,先に述べた移植技術の進歩もあって,移植のタイミング,ドナーの選択,前処置の強度,脾腫の管理など最新の情報を得て,治療戦略を決める必要がある。