2023 年 12 巻 1 号 p. 1-11
同種造血幹細胞移植後のキメリズム解析は生着の確認,移植後再発や生着不全などの診断に必須である。レシピエントキメリズムの増加傾向を認める例では,移植片拒絶による生着不全や再発に備え,再移植やドナーリンパ球輸注を検討する。一方,完全ドナー型キメラにもかかわらず血球回復が不十分な場合には移植片機能低下が示唆される。キメリズム解析の検査法として,わが国では異性間FISHのみが保険診療で認められているが,異性間移植にしか利用できない。異性間FISHよりもドナー・レシピエント間の識別率が高く,少ない細胞数でも検査可能なSTR-PCRや定量PCRが生着不全や再発の診断にも有利であり,国内外の多くの施設で汎用されている。わが国でも,それらPCRによるキメリズム解析の承認が強く望まれる。