2023 年 12 巻 1 号 p. 12-17
ブスルファンは造血細胞移植の前処置として広く用いられているが,体内動態には個体差が大きいことが知られており,血中濃度の過剰・過少のいずれも移植の転帰に悪影響をもたらしうる。この対策として,ブスルファンの薬物濃度モニタリングに基づいた用量調整が行われる。特に血中濃度が移植成績に直結することが示されている疾患に移植を行う場合や,小児患者に移植を実施する場合はその必要性が高い。また,ブスルファンを前処置に用いる臨床試験では,体重あたりの固定用量ではなく,標的とする血中濃度で表記されることが多くなっている。臨床試験の成果を受けて標準治療が確立した場合には,その成績を実臨床で再現するためにも血中濃度測定による用量調整が必要となる。より安全かつ有効な造血細胞移植を実施するためにも,ブスルファンの血中濃度測定が広くなされるような体制の整備が望まれる。