1997年のナホトカ号の事故や1999年のエリカ号の事故では,船体が荒天下で折損し,沿岸は多大な海洋汚染に見舞われた。海難事故で損傷した船は,2次災害を防止するためにも,早急に安全な海域に曳航する必要がある。しかし,船体が折損した場合,その安定な曳航法や曳航時の運動を取り扱った研究は過去に例がなく,海難事故の現場でも曳航する側の経験に頼るところが大きいように思われる。そこで,折損したタンカーの船首部模型による水槽試験とその結果を用いた曳航シミュレーション計算を行ない,曳船・被曳船系の保針性能とふれまわり運動について検討を行なったので結果を報告する。[graph]