天然有機化合物討論会講演要旨集
Online ISSN : 2433-1856
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N-Me-Welwitindolinone C isothiocyanateの全合成
小嶺 敬太野村 祐介高橋 圭介石原 淳畑山 範
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p. Oral22-

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抄録

緒言

N-Me-welwitindolinone C isothiocyanate (1) は、MooreらによりシアノバクテリアHapalosiphon welwitschiiから単離されたwelwitindolinoneアルカロイドの代表的な化合物である2)。本天然物は、ヒト癌細胞において薬剤耐性 (MDR) に関わるP-糖タンパク質 (P-gp) に対して強力な阻害活性を示すことから、本天然物は癌化学療法における抗薬剤耐性薬開発のリードとして注目されている。また本天然物は、高度に官能基化されたビシクロ[4.3.1]デカノン骨格とインドリノン環が縮環した極めて特徴的な構造を有しており、イソチオシアナート基やビニル基を含む2連続4級不斉中心および、クロロオレフィンを含む。このような生物活性と合成化学的に極めて難易度の高い構造から、世界中で合成研究が盛んに行われている3)。しかし、全合成の報告はGarg4) らとRawal5) らによる2例のみである。今回、我々はPd触媒を用いるタンデム環化反応に基づくビシクロ[4.3.1]デカノン骨格の一挙構築法を開発し、N-Me-welwitindolinone C isothiocyanate (1) の全合成およびN-Me-welwitindolinone D isonitrile (2) の形式合成を達成したのでその詳細について報告する。

逆合成解析

本研究において、インドリノン環に隣接したビシクロ[4.3.1]デカノン骨格の構築が最大の難所であり、いかに効率的に構築するかが鍵である。我々はPd触媒を用いたエノラートのアリル化とアリール化を経るタンデム環化反応によりビシクロ骨格が一挙に構築できると考え、本反応を基軸とした合成計画を立案した。すなわち、1の前駆体として3を設定し、その合成法として4のPd触媒を用いたタンデム分子内エノラートカップリング反応を考えた。4は、6と7のジアステレオ選択的なカップリング反応とその後の変換によって容易に得られると考えられる。従って、もし4から3へのタンデム環化が立体選択的に進行すれば、1の全ての不斉点は7の不斉中心に基づき、制御できることになる。

9および4のタンデム環化反応の検討

8から2工程を経て7へと変換後、TMSOTf存在下6とのカップリング反応6)を行い、高選択的にanti体5を得た。その後、5に対しアセトニトリルの求核付加を行い、さらに3工程を経て9を合成した。しかし、種々の条件で9のPd触媒タンデム環化反応を検討したが、複雑な混合物が生成するのみであり、ビシクロ体10は全く得られなかった。

続いて、anti体5をsyn体11へ速度論的プロトン化によりエピメリ化した後、同様に4へと導き、Pd触媒タンデム環化反応を検討した。その結果、Verkadeら7)の触媒系であるiBu-PAP/Pd2(dba)3を用いた際、望むビシクロ体3が2% (d.r. = 2:1) と低収率ながら生成することがわかった。

以上の結果から、C-12位にあらかじめメチル基をもつ9や4の環化は、環化遷移状態において深刻な立体反発をもたらすため困難であると考えられた。そこで、環化下での立体反発を軽減するため、ビシクロ[4.3.1]デカノン骨格構築後にC-12位にメチル基を導入することにした。

15および17のタンデム環化反応の検討

市販の光学活性ラクトン(+)-12を出発原料とし、3工程を経て13

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© 2015 天然有機化合物討論会電子化委員会
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