天然有機化合物討論会講演要旨集
Online ISSN : 2433-1856
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生合成を模倣した(+)-Haplophytineの全合成
佐藤 均小島 健一植田 浩史徳山 英利
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抄録

【背景】 (+)-Haplophytine (1) は、古代中南米において、駆虫薬として用いられていたキョウチクトウ科の植物Haplophyton cimicidumの葉から単離された二量体型インドールアルカロイドである1。Corey、Nicolaouらをはじめとする、世界的に著名なグループにより合成研究2,3が行われたにも関わらず、その極めて特異な構造のために、2009年の当研究室による初の全合成4まで、単離以来50年以上に渡り全合成の報告はなかった。当研究室では、テトラヒドロ–β–カルボリン2を用いたアニリン3のFriedel-Craftsアルキル化反応により、両ユニット連結部の第四級不斉炭素を構築し、その後のmCPBAを用いた1,2–ジアミノエテン部位の酸化と連続的な骨格転位反応によるビシクロ[3.3.1]骨格の構築と、Fischerインドール合成によるアスピドスペルマ骨格の構築を行い、1の初の全合成を達成した(Scheme 1)。しかし、直線的な合成経路のため、収束性の面で改善の余地が残されていた。

 本研究では、左ユニット前駆体テトラヒドロ–β–カルボリン誘導体と右ユニットであるアスピドスペルマ骨格の初の直接的カップリングと、合成終盤での化学選択的な酸化的骨格転位反応に成功し、収束的な第二世代全合成を達成したので報告する。

【合成戦略】 (+)-Haplophytine (1)を含んだ植物からは、左ユニットの酸化段階が低く、骨格転位が進行していないcimiciduphytine (9)5や、cimiciphytine (10) 6などの類縁化合物も単離されている。このことから、生合成では左ユニットのテトラヒドロ–β–カルボリンと右ユニットのアスピドスペルマ骨格がカップリングした後、酸化と続く骨格転位によりビシクロ[3.3.1]骨格が形成されたものと推測した。この生合成仮説を基に、より収束性の高い合成経路を立案した(Scheme 2)。すなわち、1は類縁化合物9の酸化的骨格転位反応により合成可能であると考えた。9は、インドレニン11より導くこととした。左右両ユニット12、13の、立体的に混み入った位置での直接的カップリングは困難が予想されたが、第一世代合成で用いた銀試薬によるFriedel-Craftsアルキル化反応を基に新たな条件を見出し、実現を図ることとした。

【両ユニットの直接的カップリング】 テトラヒドロ–β–カルボリン2をヨウ素化して調製したヨードインドレニン14を用い、右ユニット13とのカップリングを検討した(Scheme 3)。まず、第一世代合成の最適条件である、両ユニットに–10 °CでAgOTfを添加するProcedure Aに付したところ、望みのカップリング体15は全く得られなかった。この際、還元体である2が生成したため、次に14と銀試薬によりカチオン16を生じさせた後、13を添加するProcedure Bを試みた。その結果、低収率ではあるが、両ユニットのカップリングに初めて成功した(entry 1)。収率の向上を目指し、様々な銀試薬を検討したところ、AgNTf2を用いると収率は向上し、さらに反応温度を0 °Cで行うことで、収率

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© 2016 天然有機化合物討論会電子化委員会
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