天然有機化合物討論会講演要旨集
Online ISSN : 2433-1856
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  • 佐藤 均, 小島 健一, 植田 浩史, 徳山 英利
    p. Oral1-
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/10/01
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    【背景】 (+)-Haplophytine (1) は、古代中南米において、駆虫薬として用いられていたキョウチクトウ科の植物Haplophyton cimicidumの葉から単離された二量体型インドールアルカロイドである1。Corey、Nicolaouらをはじめとする、世界的に著名なグループにより合成研究2,3が行われたにも関わらず、その極めて特異な構造のために、2009年の当研究室による初の全合成4まで、単離以来50年以上に渡り全合成の報告はなかった。当研究室では、テトラヒドロ–β–カルボリン2を用いたアニリン3のFriedel-Craftsアルキル化反応により、両ユニット連結部の第四級不斉炭素を構築し、その後のmCPBAを用いた1,2–ジアミノエテン部位の酸化と連続的な骨格転位反応によるビシクロ[3.3.1]骨格の構築と、Fischerインドール合成によるアスピドスペルマ骨格の構築を行い、1の初の全合成を達成した(Scheme 1)。しかし、直線的な合成経路のため、収束性の面で改善の余地が残されていた。

     本研究では、左ユニット前駆体テトラヒドロ–β–カルボリン誘導体と右ユニットであるアスピドスペルマ骨格の初の直接的カップリングと、合成終盤での化学選択的な酸化的骨格転位反応に成功し、収束的な第二世代全合成を達成したので報告する。

    【合成戦略】 (+)-Haplophytine (1)を含んだ植物からは、左ユニットの酸化段階が低く、骨格転位が進行していないcimiciduphytine (9)5や、cimiciphytine (10) 6などの類縁化合物も単離されている。このことから、生合成では左ユニットのテトラヒドロ–β–カルボリンと右ユニットのアスピドスペルマ骨格がカップリングした後、酸化と続く骨格転位によりビシクロ[3.3.1]骨格が形成されたものと推測した。この生合成仮説を基に、より収束性の高い合成経路を立案した(Scheme 2)。すなわち、1は類縁化合物9の酸化的骨格転位反応により合成可能であると考えた。9は、インドレニン11より導くこととした。左右両ユニット12、13の、立体的に混み入った位置での直接的カップリングは困難が予想されたが、第一世代合成で用いた銀試薬によるFriedel-Craftsアルキル化反応を基に新たな条件を見出し、実現を図ることとした。

    【両ユニットの直接的カップリング】 テトラヒドロ–β–カルボリン2をヨウ素化して調製したヨードインドレニン14を用い、右ユニット13とのカップリングを検討した(Scheme 3)。まず、第一世代合成の最適条件である、両ユニットに–10 °CでAgOTfを添加するProcedure Aに付したところ、望みのカップリング体15は全く得られなかった。この際、還元体である2が生成したため、次に14と銀試薬によりカチオン16を生じさせた後、13を添加するProcedure Bを試みた。その結果、低収率ではあるが、両ユニットのカップリングに初めて成功した(entry 1)。収率の向上を目指し、様々な銀試薬を検討したところ、AgNTf2を用いると収率は向上し、さらに反応温度を0 °Cで行うことで、収率

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  • 松村 圭介, 布施 新一郎, 池邊 彩子, 大角 和也, 柄澤 智哉, 田中 浩士, 廣瀬 友靖, 砂塚 敏明, 大村 智, 高橋 孝志
    p. Oral10-
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/10/01
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    <概要>

     ピリピロペンAは1993年に本演題共同発表者の大村らによりAspergillus fumigatusから単離、構造決定され1、8つの不斉点を有する5環性の骨格をもつ。また近年、アブラムシに対する強力な殺虫活性をもつことが報告された2。ピリピロペンAは大村、Smithらにより初の全合成が報告され3、さらにその後、大村、長光らによる全合成も報告された4。我々は天然に存在しないent-ピリピロペンA(Figure 1)の殺虫活性に興味をもち、独自の合成法による全合成を達成するとともに、殺虫活性を評価した。さらに、ピリピロペンAはその合成に多段階を要することから、より短工程で合成できるピリピロペンAを模した新規テンプレートを開発し、その殺虫活性も評価したので報告する。

    <ent-ピリピロペンAの全合成>

    我々は、収束的な合成戦略に基づく全合成を目指した(Scheme 1)。ent-ピリピロペンAの骨格を、AB環Iに対するDE環IIの求核付加反応、続く分子内環化反応により構築しようと考えた。また、Iはtrans-デカリンIIIの7位への水酸基の導入と、13位水酸基の酸化、アルケンの異性化により構築できると考えた。IIIは、我々が独自に開発した三価チタン触媒を用いるエポキシジエンIVの連続的ラジカル環化反応により構築しようと計画した。なお、光学活性なIVはファルネシルアセタートから誘導することとした。

     光学活性なエポキシジエンIVをファルネシルアセタートから4段階を経て合成した(Scheme 2、上段)。すなわち、ファルネシルアセタートに二酸化セレンを作用させ、その後、水素化ホウ素ナトリウムを作用させることでアリルアルコール1を収率29%でE/Z異性体混合物(E:Z = 9:1)として得た。これらの異性体は分離が困難であったため、混合物として香月―Sharpless不斉エポキシ化反応に用いたところ、高エナンチオ選択的かつ高収率にてエポキシド2が得られた。ここでシリカゲルカラム精製を試みたところ、主生成物であるE体由来のエポキシド2を単離できた。得られたアルコール2をTBS基で保護した基質3を用いて鍵段階の連続的ラジカル環化反応を検討した[SF1] (Scheme 2、下段)。まず、化学量論量のチタン試薬を用いて環化反応を行ったところ目的の環化体4が収率60%で得られた。続いて、我々の過去の研究をもとに触媒的ラジカル環化反応の条件を検討した結果、最終的にScheme 2に示した、0.2当量のチタン試薬と共に添加剤としてマンガン、炭酸カリウム、TMSCl、Et3Bを加えた条件5において目的の環化体4を収率60%で得ることに成功した。なお、本反応の機構は次の通りに考えている(Scheme 3)。まず、Cp2TiIVCl2が還元されて活性種のCp2TiIIIClが生じ、3のエポキシ環の開裂による5の生成と続くラジカル環化により中間体6を与える。その後、Cp2TiIIIClと中間体6との不均化によるアルケン7の生成、TMSClによるTi-O結合の開裂を経て目的物4が得られる。なお、生じた二種類の4価チタン種(Cp2TiIVCl2, Cp2TiIVClH)の内、Cp2TiIVCl2はマンガンにより、Cp2TiIVClH はEt

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  • 道木 和也, 小野 裕之, 下川 淳, 福山 透, 北村 雅人
    p. Oral2-
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/10/01
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    【序論】

     ヒンクデンチンA (1)は1987年にHincksinoflustra denticulataから単離された海洋産アルカロイドであり,7員環ラクタムとトリブロモインドロ[1,2-c]キナゾリンが4置換炭素を介して結合した構造が特徴的である.小さな骨格の中に官能基が凝縮した,合成化学的に大変興味深い構造を持っていることから,挑戦的な合成ターゲットとしていくつかの合成研究がなされており,これまでにラセミ体の合成が1例報告されている.我々は,本化合物の合成において最も困難が予想される不斉4置換炭素中心の構築法を開発し,1の不斉合成法を確立することを目的として研究に着手した.

    【逆合成解析】

     これまでの合成研究から1の有する3つの臭素原子の位置選択的な導入はアミジン部位構築後に行うことが困難であることが知られている.そこで合成終盤において2つのアニリン部位のうち片方をアシル化して電子状態を制御した2のような中間体に対してブロモ化を行うことにより,位置選択的なブロモ化が実現できると予想とした(Scheme 1).2の構造において最も構築困難だと予想される不斉4置換炭素中心は,3のようなインドールに対する2位選択的な脱芳香的不斉結合形成反応により導入することを計画した.基質合成をより単純化するべく,7員環ラクタムとアミジンの窒素原子は後に導入することとし,インドール4を基質とした脱芳香的環化反応の実現を最初の課題として設定し,不斉触媒の探索を行うことを計画した.

    【不斉脱芳香的環化反応の開発】

     文献既知のインドールより2段階で調製した4を基質として不斉脱芳香化の検討を行った(Table 1).パラジウム触媒を用いる条件において各種不斉配位子の探索を行ったところ,単座配位子であるホスホロアミダイト(S,R,R)-6aを用いる条件において不斉脱芳香化反応が進行し,良好な収率,エナンチオ選択性で目的とするインドリン5が得られることを見出した(entry 1).Entry 2-4における配位子の構造最適化検討の結果,窒素上の置換基がエナンチオ選択性に影響することが明らかとなり,(S,R,R)-6cを配位子に用いる条件下において98%収率,93:7のエナンチオ選択性で不斉4置換炭素中心を有するインドリン5を得ることに成功した(entry 3).さらに溶媒検討を行った結果,DMAやDMSOのような非プロトン性高極性溶媒を用いる条件下においては,高い反応性を示すもののエナンチオ選択性が低下した(entry 5, 6).一方,ジオキサンやジクロロエタンなどの低極性溶媒を用いる条件下においては,高いエナンチオ選択性を発現するものの反応速度の低下に由来する収率の低下が見られ(entry 7, 8),トルエンを用いた際には反応の進行が見られなかった(entry 9).配位子(S,R,R)-6cを用いて得られるインドリン5の絶対立体配置をVCD法により確認したところ(S)-5であることを見出した.これはヒンクデンチンAの有する不斉4置換炭素中心の絶対立体配置とは逆であった.そのため,これ以降の全合成研究には反応検討に用いたものとは逆の立体化学を有するホスホロアミダイト(R,S,S)-6cを配位子として鍵反応を行っている.

    【7員環ラクタ

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  • 上野 壮平, 中崎 敦夫, 西川 俊夫
    p. Oral3-
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/10/01
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    【背景】

     Saxitoxin (STX)は、麻痺性貝毒として知られるアルカロイドであり、電位依存性ナトリウムイオンチャネル(VGSC)を強力に阻害する(Figure 1)。その化学構造は、二つのグアニジンと水和型ケトンを含む複雑な三環性骨格から成り、共通の骨格を持つ多様な天然類縁体が存在する。これまで、1977年の岸らによる最初の全合成から、Jacobiら、Du Boisら、長澤ら、LooperらによってSTXとその類縁体の全合成が達成されている1。近年、STX誘導体がVGSCの生理学的研究のツールとして用いられるようになっており、さらに多様なSTX誘導体の供給が強く望まれている2。当研究室においても、VGSCの機能解明と制御を目指し、サブタイプ選択的阻害剤の創製に取り組んでいる3。これまで、独自に開発したホモプロパルギルグアニジンのブロモ環化反応を利用し、STX骨格構築法の開発に成功した4。しかしながら、三環性骨格を構築する際に全ての保護基を脱保護する必要があるため、多様な誘導体合成への展開は困難が予想された。そこで演者らは、より温和な条件で三環性骨格を構築でき、かつ誘導体化の容易な手法の開発に着手することとした。本講演では、プロパルギルグアニジンのカスケードブロモ環化反応を用いた新規STX骨格構築法の開発と北米産ラン藻類Lyngbya wolleiより単離されたSTX類縁体であるdecarbamoyl-a-saxitoxinol (dc-a-STXol, 1)5の全合成を達成したので報告する。

    【合成計画】

     STX骨格の構築における最も大きな課題は、アミナール結合を含む不斉四級炭素をいかに合成するかである。演者らは、そのアミナール結合を含むBC環に着目し、末端にグアニジンもしくはグアニジンと合成的に等価なウレアを持つプロパルギルグアニジン2のカスケードブロモ環化反応を用いることでこの課題を解決することを計画した(Scheme 1)。すなわち、2に対して臭素カチオンを作用させると、アセチレンの活性化とグアニジンの5-exo-dig型環化が進行し、5員環グアニジン3が形成される。続いて、3はさらなる臭素化を受け、イミニウムイオン4へと変換される。次いで、末端の窒素原子が5-exo-trig型で付加することでアミナール結合を含むジブロモスピロアミナール5 (BC環)を一段階で合成できると期待した。続いて、gem-ジブロモメチレンの酸素官能基化と1,2-ジオールを酸化的に開裂することで生じるヘミアミナール6に対し、求核剤 (Nu-)としてシアニドを付加させることでアミノニトリル7を合成する。最後に、ニトリルの水酸基への変換を行うことで1の全合成が達成できると考えた。また、環化前駆体2はD-(+)-Arabitolより大量供給可能な既知の光学活性アルコールから導くこととした。なお、本合成法の特徴は、以下の3点である。①最も合成が困難な不斉四級炭素を含むBC環をカスケードブロモ環化反応により合成の前半で一挙に構築できる。また、これまでBC環を一段階で合成した例は無く、全く新しい戦略である。②カスケードブロモ環化反応により生じるgem-ジブロモメチレンは、1の水酸基に対応する位置にあるため、効率的な変換が期待できる。③合成の終盤に導入するニトリルは、水酸基だけでなく様々な官能基へ

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  • 髙村 浩由, 藤原 敬之, 川久保 陽平, 門田 功, 上村 大輔
    p. Oral4-
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/10/01
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    【序論】

     シンビオジノライド(1, Figure 1)は渦鞭毛藻Symbiodinium sp.から単離された海洋産ポリオール天然物である1。本化合物は7 nMで電位依存性カルシウムチャネルに対する開口活性を有し、また2 μMでCOX-1阻害活性(65%の阻害)を示すことが明らかとなっている。1の平面構造は詳細な二次元NMR解析により決定されたが、分子量2,860と61個の不斉中心に特徴付けられた巨大かつ複雑な分子構造を有するため、その立体構造は未決定である。我々のグループでは以前より、1の構造解明に向けて合成化学的なアプローチを行っており、Figure 1の四角で囲んだ各部位の合成と構造決定を完了している。本討論会ではC79–C104フラグメントの立体発散的合成と立体構造改訂について報告する2

    【C79–C104フラグメント4aの立体選択的合成】

     まずは提唱立体構造を有するC79–C104フラグメント4aの合成を検討した。すなわち、PT-スルホン2とアルデヒド3をJulia–Kocienskiオレフィン化により連結し、対応する(E)-アルケンを合成した(Scheme 1)。その後、Sharpless不斉ジヒドロキシル化を行うことで93,94-連続酸素官能基部位を導入し、目的とする4aを立体選択的に合成した。合成した4aと天然物1の対応する部位との13C NMRデータを比較したところ、ケミカルシフトに大きな差が確認できたため、C91–C99鎖状部位の立体構造について再検証する必要があることが明らかとなった。

    【C79–C104フラグメントの立体構造解明に向けた計画】

    C91–C99鎖状部位においては不斉中心が7つあるため、考え得るジアステレオマーの数は26 = 64個である。この64個のジアステレオマーを全て合成できれば、合成品と天然物とのNMRデータの比較により、C79–C104フラグメントの立体構造を解明できるが、この手法は非現実的である。そこで我々は、効率的かつ現実的な方法として、C79–C104フラグメント4をC79–C97フラグメント5とC94–C104フラグメント6に分割することとした(Scheme 2)。5および6の立体構造をそれぞれ決定した後、C95位の立体化学を介してそれらをつなぎ合わせることで、C79–C104フラグメント4の立体構造を決定するという計画である。

    【C79–C97フラグメント5a–5hの立体発散的合成】

     C79–C97フラグメントの鎖状部位には不斉中心が3つあるため、Figure 2に示す8つのジアステレオマーが考えられる。そこでこれらを統一的かつ立体発散的に全て合成することとした。まず、アルデヒド7とジチアン8とのカップリングを行うことで、C93エピマーの関係にある9および10を合成した(Scheme 3)。続いて、ジチアン部位の加水分解を行うことで、5aと5bの合成中間体となる11および5cと5dの合成中間体となる12をそれぞれ合成した。次に11から5aへの変換を検討した。アルコール11をTBSエーテルへと変換した後、C93位の立体化学を利用したFelkin–Anh型の還元について検討を行った(Scheme 4)。そ

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  • 早川 一郎, 岡村 真未, 鈴木 一瑛, 島貫 万実, 舟久保 翔太, 木村 築, 山田 拓也, 大好 孝幸, 木越 英夫
    p. Oral5-
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/10/01
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    ビセライド類は,当グループにおいて沖縄産ホヤより単離・構造決定されたポリケチド化合物である(Figure 1)1.類縁体として,沖縄産ホヤ,および海綿から単離されたハテルマライド類が知られている2.ビセライド類とハテルマライド類の構造的な違いとして,ビセライド類はC20位に酸素官能基を有することが挙げられる.また,ビセライドE (7)は他のビセライド類,ハテルマライド類とは異なり,ラクトンが巻き直した構造を有している.当グループでは,これら天然物の各種生物活性試験を行った結果,ビセライドA (1),B (2),およびハテルマライドNAメチルエステルは,海洋生物であるブラインシュリンプに対して毒性はほとんど示さないにもかかわらず,様々なヒトがん細胞の増殖を抗癌剤であるシスプラチンよりも低濃度で阻害することを見出した.このことから,ビセライド類,ハテルマライド類は副作用の少ない,新しいタイプの抗癌剤のリード化合物として期待されている.

    当グループではビセライド類,ハテルマライド類の興味深い生物活性に着目し,これまでにハテルマライドNA (5)とB (6)の全合成を達成した3.さらに全合成経路を基盤とした構造活性相関研究を行い,これら天然物の強い細胞毒性は,マクロラクトン部分と側鎖部分の両方の組み合わせが必要であることを報告している.

    今回,ビセライド類の詳細な生物活性試験の実施と構造活性相関研究を行うため,ハテルマライド類の全合成経路を基盤として,様々なビセライド類を合成できる柔軟性の高い合成経路の開発を検討し,ビセライドA (1)とE (7)の全合成を達成したので報告する.

    Figure 1.Structures of biselides and haterumalides

    【C20位酸素官能基の導入】

     ビセライド類の合成において最も重要な点は,如何に効率良くC20位の酸素官能基を導入するかであった.ハテルマライド類の全合成の時はC20位のオレフィンメチル基を,C5–C15セグメント8を酸化したアルデヒドに対し,C20位に対応するメチル基を有するジ-o-トリルホスホノプロピオン酸エチル (9)を作用させる,Z-選択的Horner–Wadsworth–Emmons反応によって構築していた(Scheme 1)3.この手法をビセライド類に適用する場合,C20位に対応するヒドロキシメチル基を有するホスホネートは,Horner–Wadsworth–Emmons反応において,容易にb-脱離反応が進行することが予想される.

    Scheme 1.Construction of Z-olefin in haterumalides

     当グループでは,これまでにC20位酸素官能基の導入について,ホスホランのa位にヨウ素を有する安定イリド12を用いたWittig反応とクロスカップリング反応を行う経路や(Scheme 2: route 1)4a,ハテルマライド類のC20位オレフィンメチル基を二酸化セレンを用いたアリル酸化反応によってC20位酸素官能基を導入する経路を報告したが(route 2)4b,いずれの合成経路とも位置/立体選択性,収率,および再現性に問題があり,効率的ではなかった.

    Scheme 2. Previous work: introduction of oxygen group at C20 in biselides

     そこで,酵素を用いた位置選択的加水分

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  • 上田 善弘, 竹内 裕紀, 藤森 悠介, 永石 優, 古田 巧, 川端 猛夫
    p. Oral6-
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/10/01
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     糖関連物質は次世代の医薬品候補化合物の宝庫として注目されているが、その化学合成は多段階を要することが多い。その主要因は糖類に多数存在する水酸基の保護-脱保護操作に起因している。グリコシル化反応は糖関連物質合成の中心的位置を占める鍵工程であるが、保護糖を用いるのが一般的である。1一方、光延反応条件下、無保護糖を用いるグリコシル化がGrynkiewiczら2、正田ら3によって報告されているが、立体選択性に問題があった。我々は条件を精査することでほぼ完全にβ選択的なグリコシル化が進行する事を見出した。4また、ジカルボン酸のダブルグリコシル化を鍵とする二量体エラジタンニンcoriariin Aの短工程全合成への展開を昨年度の本討論会にて報告した (Scheme 1)。5本研究では無保護糖を用いるβ選択的グリコシル化の更なる展開を視野に、立体選択性発現機構の解析を行った。その結果、市販のD-グルコースがほぼ単一のα体であり、そのSN2置換反応によって立体選択性が制御される事が明らかとなった。さらにD-マンノースへと適用することで、構築が困難な1,2-cis-マンノシドの立体選択的合成を行った。

    【β選択性発現機構解析】

    β選択性発現機構としてScheme 2に示す三通りの機構が想定される。

    1) α-及びβ-グルコースの平衡混合物から生じるオキシホスホニウムイオンの内、α-オキシホスホニウムイオンに対し選択的なSN2置換

    2) 市販のグルコースがα体のみであり、生じるα-オキシホスホニウムイオンに対しSN2置換

    3) オキシホスホニウムイオンからSN1機構で生じたオキソカルベニウムイオンに対し求核剤がβ面選択的に付加

    これらのうちいずれの機構で選択性が発現しているか実験的に検証を行った。

     光延反応はSN2置換反応として広く用いられる手法であるため、まず原料の異性体混合率を1H NMRにより求めたところ、市販のD-グルコースがほぼ単一のα体であることがわかった (Figure 1)。糖は溶液中でアノマー異性体の混合物として存在することが知られているが、製造工程中で選択的に結晶化したと考えられる。6次に原料の異性体混合比が生成物の立体化学に反映されるか検証を行った (Table 1)。既報告の条件であるDMF溶媒中では立体選択性は完全に消失した (entry 1)。一方1,4-dioxane中では原料と生成物の立体化学に相関があり、原料のα体比率が多いほど生成物のβ体比率が増加することが分かった (entries 2–4)。以上の結果から、溶媒によってメカニズムが異なり、ジオキサン中ではScheme 2-2に示すSN2機構で進行することが示唆された。

     さらに、本反応における13C速度論的同位体効果 (KIE) の測定を行ったところ、アノマー炭素上でのKIEは三回平均で1.27と算出された (Scheme 3)。グリコシル化反応におけるアノマー炭素のα一次同位体効果の報告7 (SN1: KIE ≤1.01, SN2: KIE = 1.02–1.06) と比較する事で、本グリコシル化反応がSN2型で進行することが明らかとなった。

    【推定反応機構】

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  • 池内 和忠, 山下 孝平, 久米 裕二, 芦辺 成矢, プスピタ シシリア, 谷川 康太郎, 山田 英俊
    p. Oral7-
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/10/01
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    《緒言》マロツシニン(1)は1989年にMallotus japonicus(アカメガシワ)の樹皮から単離・構造決定されたエラジタンニンである(Figure 1)1。その構造はD-グルコースのβ-アノマー位にガロイル基、3,6位にRの軸不斉を持ったヘキサヒドロキシジフェノイル(HHDP)基、及び2,4位にテトラヒドロキシジベンゾフラノイル(THDBF)基がエステル縮合している。さらに、HHDP基とTHDBF基に

    よってD-グルコースの立体配座がaxial-richに固定されている。グルコースの2,4位酸素に架橋基を有するエラジタンニンは、これまでに数多く構造決定されているが、合成されたことはない。当研究室では、1の部分構造であるコリラジン(2)の全合成を既に報告している2。しかし、総工程が17段階と長く、全収率が0.78%と低いため、2より複雑な化合物合成への適用が難しかった。今回、2の合成法を改良し、1の初の全合成を達成した。

    《コリラジンの改良合成》既に報告した2の合成経路をScheme 1に示す。本経路では、2の構造的特徴である架橋されたaxial-richなグルコースを構築するため、ピ

    Scheme 1. Previous synthetic route for Corilagin (2)

    ラノース環を一旦開裂して直鎖分子3とした後、酸化的フェノールカップリングにより(R)-HHDP基を構築している。それゆえ、得られた4からピラノース環を再構築する段階が必要である。また、グルコース2,4位酸素の保護基は、HHDP基上の保護基と同じBn基であるため、糖部分とHHDP基部分の保護基を異にする必要がある1の合成へ展開できない。そこで、2の合成法の抜本的改良から本研究を始めた。

     上記の合成経路の最大の欠点はHHDP基を構築するにあたりピラノースの開閉環を経ることである。この経路を採用した理由は、equatorial-richなグルコピラノース環の3,6位酸素に縮合したガロイル基を基質とした場合、グルコースの立体配座が変化しないために二つのガロイル基が近接せず、HHDP基を構築できなかったためである。そこで、D-グルコースの立体配座をあらかじめaxial-richに固定した7を分子内カップリングの前駆体とした(Scheme 2)。まず、1,2,4-オルトアセチルグ

    Scheme 2. Stereoselective oxidative coupling of two galloyl groups on 7

    ルコース(5)3を出発物質とし、5の3位と6位酸素を、Bn基とAllyl基で保護した没食子酸6でアシル化し、脱Allyl化を経て望みのテトラオール7を得た。7をCuCl2/nBuNH2の条件2に付すと酸化的フェノールカップリングは円滑に進行し、(R)-HHDP基を高立体選択的に与えた。生じた軸不斉の絶対配置は、Bn化を経て合成した8の加メタノール分解により誘導したメチルエステル9の旋光度の符号を、文献値4と比較して決定した。

     次に、8のオルトエステル部分を開裂した。まず、アリルグリコピラノシド10への誘導を目的に、1 M HClアリルアルコール溶液を反応させたが、10は得られず、フラノシド11が得られた(Scheme 3)。この原因は以下のように考えている。4位酸素のプロトン化によりオルトエステルが開裂しオキソカルベニウムイオン12が生じる。12に対し、アリルアルコールが付加するのではなく、4位水酸基からの分

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  • 河辺 佑介, 石川 諒, 吉田 直人, 赤尾 祐介, 吉田 篤史, 稲井 誠, 浅川 倫宏, 江木 正浩, 濱島 義隆, 菅 敏幸
    p. Oral8-
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/10/01
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    【序論, 及び合成戦略】

    Sesamine (1) をはじめとするフロフランリグナン類は抗酸化作用による老化防止効果など興味深い生物活性を示すことが知られ 1), 多くが 2 つのフェニルプロパノイドを構成要素としている。芳香環の置換様式によって多種多様の分子構造を持ち, 左右非対称なフロフラン化合物も多く存在する。類縁体合成に適用可能な柔軟な合成法が求められており, 2 つの芳香環を順次導入する収束的合成法が理想的である。そこで我々は, 2 置換ラクトンを鍵中間体とする収束的な合成戦略を計画した (Scheme 1)。4 連続不斉中心を持つフロフラン骨格は合成の終盤にてキノンメチド中間体 4 を経由した環化反応によって構築し, 前駆体を 2 置換ラクトン 5 とした。2 置換ラクトンは 3 成分のアルデヒド 6, 8, 9 のアルドール反応によって得ることとした。

    【フロフラン系天然物合成法の確立】

    まず, 立体選択的なβ置換ラクトンの構築法を検討した (Table 1)。MacMillan らにより報告された不斉有機触媒を用いた条件 2)により 8 と 9 を反応させた。この際, 電子密度の高い芳香族アルデヒドは反応が進行しなかった (entry 1)。そこで, 酸素原子の電子供与効果を抑えることを目的として電子求引性の Ns 基を導入することとした。その結果 , 反応性は大きく上昇し, 目的とする付加体を得た (entry 3)。これは, Ns 基により酸素原子の電子供与効果を抑え, その高い電気陰性度により芳香環の電子密度を下げることによりアルデヒドの求電子性が向上したと考えている (Figure 1)。本方法論は通常困難な酸素官能基を多数有する芳香族アルデヒドの有機触媒を用いたアルドール反応に対して有力な手段であった。また, ウレア 11 3)を添加することで反応時間の短縮とエナンチオ選択性が向上した。生じたアルドール付加体は還元, 酸性条件によるラクトン化によって高立体選択的に 10c を得た。

    次いで, フロフラン骨格の構築を行った (Scheme 2)。まず, PhSH を用いて Ns 基を除去し, BrCH2Clを用いてラクトン 12 へと変換した。その後, 12 に対して LHMDS を作用させ,アルデヒド 13 や 14 を加えることで高立体選択的にそれぞれのアルドール付加体 15 を得た。続いて, Ca(BH4)2 を用いて還元することでトリオール体 16 へと変換した。さらに, 酸性条件に付すことでベンジル位水酸基の脱離によりキノンメチド中間体 17 が生成し, 続く環化によってフロフラン骨格の 4 連続不斉炭素原子を単一の立体化学で一挙に構築することに成功し, 1 と 2 の全合成を達成した 4)

    【ハイブリッド型フロフラン系天然物への合成展開】

    次に, より複雑な 3 つのフェニルプロパノイドから構成されるフロフラン化合物に着目した (Figure 2)。1985 年, Kikuchi らによってアカネ科植物 (hedyotis lawsoniae) の葉より単離・構造決定された hedyotol A (18) 5), 2003 年, Waibel らよってトウダイグサ科植物 (joannesia princeps) の種子より単離・構造決定された princepin (19) 6)は構造的に興味深く, 優れた生物活性が期待されるにもかかわらず十分な研究が行われていない。また, 18 のジヒドロベンゾフラン骨格, 19 のベ

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  • 服部 弘, Elias Kaufmann, 宮武 秀樹, Karl Gademann
    p. Oral11-
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/10/01
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    緒言

     Fidaxomicin(1, Lipiarmycin A3, Tiacumicin B, OPT-80)は1972年にActinoplanes deccanensisより単離構造決定されたマクロライドであり1,2)、RNA polymerase複合体におけるDNA 2本鎖の分離を阻害するという新規の作用機序と、狭い抗菌スペクトルを有する。本化合物は2011年FDAとEMAよりClostridium difficile関連下痢症に対する治療薬として承認されたことに加え、多剤耐性菌を含む結核菌に対しても極めて有効であることから3)、高い関心を集めている。特に多剤耐性結核菌感染症は現在世界中で増加の一途をたどっており、新規の作用機序を有する有効な治療薬の開発が期待されている。

     Fidaxomicinの構造的特徴として、不飽和度が高く疎水的な18員環アグリコンと、2つのβ配座を有する糖部位があげられる (Figure 1)。現在までにAltmann4), Zhu5)らの大員環アグリコン部位の合成をはじめとして、活発な合成研究が展開されている。我々は上記の生物活性及びユニークな構造に関心を持ち、全合成研究を開始した。今回、Fidaxomicinの全合成を達成し6,7)、さらにその構造活性相関研究のための類縁体合成を行ったので報告する。

    Figure 1. Fidaxomicin and its analog,tiacumicin A.

    合成計画

    Scheme 1. Retrosynthetic analysis of fidaxomicin.

     Tiacumicin類のの合成において、(i)大環状ラクトンの合成、(ii)ラムノース部位並びにノビオース部位の合成、(iii)二つの糖部位のβ選択的グリコシル化反応、が鍵となる。合成計画をScheme 1に示した。Fidaxomicin (1) は、マクロ環中間体Cに対する二つの連続的なグリコシル化反応により合成できるとすると、糖供与体AとBへと逆合成できる。3つの重要中間体のうち、ラムノース部位Aは位置選択的エステル化反応を鍵工程として単糖と芳香族カルボン酸から合成できると期待できる。一方で最も工程数を要すると思われる、大環状ラクトンCは閉環メタセシス反応と鈴木カップリング反応により構築するとすれば、DとEから合成可能である。さらにDはSharpless法と山口法により、EはBrown不斉アリルホウ素化反応とEvans不斉補助基を用いたVinylogous向山アルドール反応を適用することで合成できるものと考えた。

    ラムノース供与体の合成

     まずBarretらの芳香環構築法8)を参考にラムノース部位の合成に着手した (Scheme 2)。すなわち、文献既知のケトン4のジアニオンに対し1-propionylimidazole 3を作用させることによりジケト体4aに導いたのちに、塩基処理することにより芳香環化させ、目的化合物5を57%で得た。続いてSulfuryl chlorideによる塩素化とフェノール性水酸基の保護によりエステル化前駆体6を合成した。

    Scheme 2. Synthesis of the protected resorcylate 6.

     次に、α-methyl-D-mannnopyranosideより得られる79)の3、4位選択的ジアセタール化とメチル化、続く脱保護によりメチルエーテル8を得た (Scheme 3)。さらに8をZnI存在下、PhSTMSを作用させることでチオラムノシド9に変換した。9は先に合成したケテン前駆体6と反応させることにより4位選択的にエステル10を与えた。本反応ではケテンとの反応により、まず3位アシル

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  • 深澤 亮, 平井 剛, 加藤 麻理依, 大沼 可奈, 越野 広雪, 袖岡 幹子
    p. Oral12-
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/10/01
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    【背景・目的】

    シアリダーゼ(ノイラミニダーゼ)は、複合糖質の非還元末端からシアル酸を除去する酵素である。ウイルスやバクテリアのシアリダーゼは感染・増殖に深く関与していることから、これらに対する阻害剤が多数開発されてきた。そのほとんどは、加水分解の遷移状態構造を模倣したDANA(1、Figure 1)を起点として開発されており1)、Zanamivir(リレンザ)1a)やLaninamivir(イナビル)1b)などが代表例である。

    しかしながら、阻害剤だけでは生物現象とシアリダーゼ機能を分子レベルで議論することは困難である。シアル酸は、糖タンパク質、糖脂質(ガングリオシド)の両方に存在し、またその構造はガラクトースとの連結様式だけで2,6-と2,3-の2パターンが知られている。シアリダーゼの基質選択性が厳密ではないので、酵素-基質の組み合わせは複数の可能性を考える必要がある。我々は、“どのシアリダーゼがどのシアロ糖鎖からシアル酸を切断したか”を解析できれば、基質も含めたシアリダーゼの機能解明に繋がると考えた。そこで本研究では、これを実現できるSubstrate-Specific Metabolism Monitoring(SMM)プローブの開発を目標とした。

    SMMプローブに求められる性質は、①興味対象のシアロ糖鎖と同様の構造を有し、②これがシアリダーゼによって基質として認識され、③分解される際にシアリダーゼと共有結合を形成する、ことである。似たようなプローブとして、3位にF原子を持つシアル酸単糖構造の2が挙げられる2)。2はシアリダーゼの基質となるものの、カチオン性中間体3がF原子の電子求引性により不安定化されるため、シアリダーゼと共有結合を形成した複合体4の寿命が長くなる。これを検出することで“どのシアリダーゼが活性を持っていたか”を解析できるactivity-based probeとして、利用できる可能性が示唆されている3)。しかしながら、2の基質としての反応性がF原子によって低下するため、XにはF原子などの脱離基が必須であり、糖質構造を導入すること、すなわち上記の①の性質を持たせることができなかった。そこで本研究では、SMMプローブとなりうる新しいシアロ糖鎖アナログを考案し、その合成法開発と機能解析に取り組んだ。

    Figure 1. SMMプローブとシアリダーゼ阻害剤及び機能解析プローブ

    【分子設計】

    今回先に示した要件をすべて満たすシアリダーゼのSMMプローブとして、3位にメチレン基を導入したシアロ糖鎖誘導体5を設計した。5は、電子求引基を持たず、また3位sp2炭素によって遷移状態様のコンホメーションに歪むことが予想される。このことで、シアリダーゼに対する親和性と基質としての反応性を低下させず、むしろ向上させることができ、Rに糖鎖構造を導入可能と期待した。さらに5がシアリダーゼの基質になると6を生成する。6は活性化されたMichael受容体と見ることができ、近傍の求核性アミノ酸と反応して、シアリダーゼと共有結合を形成できると考えた。今回我々は、アルキル基やアリール基を有する単糖型の5a-b、および二糖型の5c-dの合成を目指した(Figure 2)。

    Figure 2. SMM(Substrate-Specific Me

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  • 保野 陽子, 濱田 まこと, 吉田 侑矢, 川崎 昌紀, 島本 啓子, 茂里 康, 秋澤 俊史, 小西 元美, 大船 泰史, 品田 哲郎
    p. Oral13-
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/10/01
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    イオンチャネル型グルタミン酸受容体 (iGluR)は,内因性リガンドであるグルタミン酸 (1)の結合を引き金として細胞外から細胞内へのイオン流入を調節する膜タンパク質である.哺乳動物の脳中枢神経における主要な興奮性情報伝達を担い,記憶や学習などの高次脳機能に関与していることが報告されている.1 iGluRは,リガンド [N-メチル-D-アスパラギン酸 (2), a-アミノ-3-ヒドロキシ-5-メチル-4-イソオキサゾールプロピオン酸 (3), カイニン酸 (4)]との親和性の違いによって,NMDA型受容体(NMDAR),AMPA型受容体 (AMPAR),およびカイニン酸型受容体 (KAR)の3つのサブタイプに大別されている (図1).各iGluRサブタイプがそれぞれどのような機能と役割を担っているのかに関心が集まる中,各受容体を選択的に活性あるいは不活性化するリガンドの開発に大きな期待が寄せられている.

    近年,パーキンソン病,アルツハイマー病,筋萎縮性側索硬化症などの神経変性疾患とiGluRの機能失調との関連が示唆されている.iGluRは,神経変性疾患治療薬開発の標的受容体として注目を集め,これまでにNMDARアンタゴニストであるメマンチンがアルツハイマー病の治療薬として開発されている.2瀬戸・新家らは,KARアゴニストであるカイニン酸の神経毒性から神経を保護する天然物をスクリーニングし,放線菌Eupenicillium shearii PF1191の培地からカイトセファリン (KCP: 5)を見いだした.3 2010年になり,Milediらは電気生理学的手法によりKCPの作用特性を調べ,NMDAR選択的アンタゴニストであることを明らかにした.4

    図1 グルタミン酸受容体サブタイプとリガンドの構造

    今回,我々はKCPの優れた生物活性と特異な構造に着目し,KCPの構造改変による優れたサブタイプ選択的リガンドとiGluR標識プローブの開発を行った.具体的には,KCPおよびアナログの効率的合成法の開発,ラット脳膜画分より調製したiGluRサブタイプに対する結合活性評価,KCPとiGluR結合ドメイン複合体の構造解析,および構造活性相関研究による活性発現部位の特定を実施した.一連の研究から新規NMDAR選択的リガンドを創製できたので,その詳細について報告する.

    【カイトセファリンの結合活性評価】

     KCP (5)は天然から得ることが困難となっている.そこで,アナログ合成にも適用可能なフラグメント6〜8のカップリングによる5の効率的合成法を開発した.5これより約300 mgのKCPと,後述する種々のアナログを合成できた (図2).はじめに,ラット脳膜画分より調製したiGluRを用いて5のサブタイプ選択性と結合活性を評価した.比較として内因性リガンドであるグルタミン酸の結合活性を評価した.グルタミン酸 (1)は,すべてのサブタイプに対して非特異的に結合することに対して,KCPはNMDARに対して選択的かつ強力に結合した (NMDAR: Ki = 7.8 nM, AMPAR: Ki = 590 nM, KAR: Ki = 14000 nM).6 KCPのNMDARに対する優れた結合活性は,これまで報告されているNMDARリガンドの中で最も強力なクラスに位置するものである.

    図2 KCP (5)およびグルタミン酸 (1)のiGluRサブタイプ結合活性. [

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  • 浅野 理沙, 渡邉 瑞貴, 長澤 和夫, 上杉 志成
    p. Oral14-
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/10/01
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     SREBP(Sterol Regulatory Element-binding Protein)は、脂質生合成の指令塔となる転写因子である。我々の研究室では、脂質代謝の生体内制御メカニズムを理解するために、SREBPの活性を変調する化合物の研究を行ってきた。その中で、SREBPの活性化を阻害する内因性分子として水酸化ビタミンDを同定した。今回は、水酸化ビタミンDによるSREBP阻害メカニズムの解明、及び脂質代謝疾患治療への応用を目指した誘導体展開について報告する。 

    【背景・研究目的】

    SREBPはSCAP(SREBP Cleavage-activating Protein)と安定な複合体を形成し、ER膜上に存在している。脂質やステロールレベルが低いときには、SREBPはSCAPの働きによってER膜からGolgiへと移行し、そこでプロテアーゼS1P、S2Pによる二度のプロセシングを受けて活性型となる。その後核内で転写因子として脂質やステロールの生合成に関与する遺伝子を活性化する。一方、生合成産物の一種であるコレステロールやオキシステロールは、直接SCAPやInsigなどのタンパク質に作用し、安定なSREBP-SCAP-Insig三者複合体形成を促し、SCAPのGolgiへの移行を抑制する。すなわちSREBPの活性化は、ステロール類によるネガティブフィードバック機構によって制御を受けている。

    しかし、SREBPは生体内で複雑な制御を受けているため、その全貌は明らかではなく、さまざまな疾患への関与も知られている。例えば、ガン細胞や脂質疾患などにおいては、このネガティブフィードバックによるSREBP制御機構は正常に機能していないと考えられている。

    このような背景から、我々はSREBPの複雑な生体内制御機構を理解・制御するために、新規内因性SREBP阻害物質を探索した。269種の脂質化合物からなるライブラリーを用いてスクリーニングを行った結果、水酸化ビタミンDを見出した(図2)。          

    今回の報告では、水酸化ビタミンDによるSREBP阻害メカニズムの解明、及び脂質代謝疾患治療への応用を目指した誘導体展開について議論する。 

          

    【結果・考察】

    ① メカニズム解析

    第56回本討論会において、水酸化ビタミンDがSCAPのユビキチン化による分解を誘発している可能性について報告した。SCAPはSREBPの重要な結合パートナーであり、SCAPの分解がSREBPの不安定化及び分解を誘発し、SREBPの活性化を制御していると考えられる。これは既知の阻害分子であるステロール類とは異なる新規のSREBP制御メカニズムとして非常に興味深いものであるが、なぜ水酸化ビタミンDがSCAPのユビキチン化による分解を引き起こすのかは不明であった。

    そこでユビキチン化の詳細を明らかにするために、プロテアソーム阻害剤MG132処理を行いWestern Blottingで検出したところ、SCAPの全長のバンドが回復するという予想に反し、SCAPの全長よりも低分子量のバンドの蓄積が見られたことから、SCAPの切断体の存在が示唆された。更にこのSCAPの切断及び分解は、プロテアーゼ阻害剤処理により抑えられることが分かった。(図3) 

    これらの結果は、水酸化ビタミンD存在下におけるSCAPのユビキチン化に先立って、プロテアーゼによるSCAPのプロセシン

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  • 荒井 緑, 田口 翔太, 小松﨑 一裕, 内山 健人, 増田 彩花, 佐藤 守, 荷堂 清香, 石橋 正己
    p. Oral15-
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/10/01
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    【序論】

      Fuligocandin A (1), B (2)は、2004年に変形菌Fuligo candida(和名シロススホコリ)より当研究室にて単離・構造決定された、新規天然物である(Figure 1)1。天然物探索材料として興味深い変形菌は、系統分類学的には最も下等な真核生物の一つとして位置づけられ、胞子、アメーバ体、変形体、子実体など様々な形態をとる独特の生活環を有している。Fuligo candida野外子実体より単離されたこれら天然物は、アントラニル酸とプロリンが縮合した母骨格とa,b-不飽和カルボニル部を有し、2はさらにインドール骨格を有する。当研究室において1および2の全合成を行い、未決定であった11a位の立体をSと決定した2。Fuligocandin B (2)は、がん細胞をアポトーシスに導くデスリガンド、tumor necrosis factor (TNF)-related apoptosis-inducing ligand (TRAIL)に耐性を有するがん細胞に対し、TRAILに対して感受性を上げ、アポトーシスに導く作用を有している3。腫瘍壊死因子(TNF)はサイトカインであり、TRAILはTNFファミリーの一つである。TRAIL経路では、まずデスリガンドであるTRAILがその受容体であるデスレセプター(DRs)に結合することで開始され、アダプタータンパク質Fas-associated protein with death domain (FADD)の介在のもと、pro-caspase 8との複合体(death-inducing signaling complex; DISC)を生成したのち、pro-caspase 8の自己消化の後、カスケードが活性化され、アポトーシスを導く(Figure 2)。正常細胞ではTRAILと結合するがシグナルを伝えないおとり受容体(decoy receptor)が多く発現しているため、TRAILの正常細胞に対する影響は低い。従って、TRAIL経路はがん細胞を効率的にアポトーシスに導くがん治療の標的として注目を浴びているシグナル経路である。しかしながら、白血病細胞、乳がんなど多くのがん細胞でTRAILに対する感受性が低下していることが問題となっている。このため、TRAILへの感受性を上げる(すなわちTRAIL耐性克服作用を有する)化合物の発見は大変重要となっている。我々は2が成人T細胞白血病細胞(adult T cell leukemia; KOB)に加え、ヒト胃がん細胞(human gastric adenocarcinoma; AGS)にも顕著なTRAIL耐性克服作用を示すことを見いだしていたが、そのメカニズムは不明であった。今回、強い活性を有する誘導体5’-I Fuligocandin B (9)のAGS細胞における標的タンパク質を同定し、そのメカニズム解明の検討を行った。

    【誘導体合成と活性評価】

     Fuligocandinsの合成は、次のように行った(Scheme 1)。アントラニル酸誘導体とL-プロリンの縮合により化合物5に導いた後、分子内でのアミド化により三環性化合物6とした後、プロピニルマグネシウムブロミドを用いて化合物7とした。以前は1,2-ジブロモプロパンとLDAから生じさせたプロピニルリチウムを反応に用いていたため、この段階で光学純度の低下が問題となっていたが、本法により解決した。化合物7を用いてMeyer-Schuster転位反応により、99% eeのFuligocandin A (1)を合成した。その立体はNOEにてZ配置であると確認した。さらに、インドールアルデヒドとのアルドール縮合により、99% eeのFuligocandin B (2)を合成した。また、インドールアルデヒドを種々用いることにより、数種のFuligocandin B誘導体を合成した。誘導体のTRAIL耐性克服作

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  • 福島 弘之, 前島 寛, 魚崎 英毅, 松尾 武彦, 吉田 将人, 恩田 勇一, 鈴木 淳, 藤野 雄太, 増田 裕一, 八田 和久, 夏目 ...
    p. Oral16-
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/10/01
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     心筋梗塞などの心疾患に対する治療法として,ES 細胞やiPS 細胞を用いる再生治療に注目が集まっている。心筋の再生治療法には,①人工的に分化誘導した心筋細胞を直接移植する細胞移植治療法と,②生体内に存在する前駆細胞に直接働きかけて心筋へと分化誘導する治療法のふたつのアプローチが検討可能である。①については細胞の誘導法,純化法,移植法など多くの研究成果が報告されている一方で,②のような治療についての研究例はほとんどない。これらいずれの治療法についても,その実現のためには,強い心筋分化誘導活性を有する薬剤の開発が望まれる。また,異種混入を防ぐ観点からは,分化誘導に用いるOP9などのフィーダー細胞がなくても分化誘導活性を発揮する薬剤の開発がより強く望まれる。

     そこで,既存の薬剤とは作用プロファイルの異なる,新たな心筋分化誘導活性剤の開発を目的として,海洋生物由来の心筋分化誘導活性物質の探索を行った。その結果,鹿児島県加計呂麻島産の海洋シアノバクテリアMoorea bouilloniiから,非常に強力な心筋分化誘導活性を有する活性本体としてアプラトキシンC(ApxC;1)を見出した。本化合物1は心筋分化誘導活性が知られるサイクロスポリンA(CsA)やIWP4,XAV939,IWR1などのWnt阻害剤と比較して,約1000分の1の濃度において強い分化誘導活性を示すとともに,フィーダー細胞が存在しない条件下でも強い分化誘導活性を示した。

     本研究では,合成Apx類縁体ライブラリーを用いて構造-活性相関解析を行うとともに,作用メカニズムの解析を行った。また,ラット亜急性期心筋梗塞モデルへの治療効果の検討について行ったので,これらの経緯について報告する。

    1.スクリーニング

     独自に開発したマウスES/iPS細胞を用いたin vitro心筋分化誘導法1を用いたアッセイによって(図2),海洋生物エキスサンプル800検体を対象に,心筋分化誘導活性スクリーニングを行った。すなわち,心筋特異的遺伝子であるαMHCのプロモーター制御下でGFPを発現するES細胞株(EMG7)を用いて,心血管系前駆細胞であるFlk-1陽性中胚葉細胞に導き,セルソーターによって純化したFlk-1陽性中胚葉細胞に対して,エキスサンプル存在下で6日間フィーダー細胞(OP9細胞)との共培養を行うと,GFPを発現した心筋細胞が分化誘導されてくる。ES細胞由来心筋細胞のGFPの蛍光強度,および心筋特異的収縮タンパク質であるcTnT陽性細胞の占有領域を測定することにより,各サンプルの心筋分化誘導活性を測定した。この結果,鹿児島県加計呂麻島産のシアノバクテリアから調製したエキス成分の脂溶性画分に強い心筋分化促進活性を見出した。

    図2 心筋分化誘導活性試験

    2.単離,同定

     活性が認められたシアノバクテリアサンプル(128 g,湿重量)をメタノールで抽出し,合一した抽出液を濃縮後,水とクロロホルムで

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  • 井上 悠敬, 清水 崇史, 瀬尾 光範, 高橋 公咲, 松浦 英幸
    p. Oral17-
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/10/01
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    【バレイショの塊茎誘導】  主要作物の一つであるバレイショ(Solanum tuberosum)の塊茎誘導は日長の影響を強く受ける。長日高夜温条件下では、茎の基部に近い部分からストロンと呼称される地下茎が水平方向へ伸長するが,地上部が短日低夜温条件にさらされるとストロンの伸長は停止し,その先端が肥大して初期塊茎が形成される。バレイショ茎断片組織培養法を用いたin vitro実験では、多くのジャスモン酸(JA)類が塊茎形成誘導活性を持つことが明らかとなった。そこで実際に葉部から移動しストロンにおいて作用する化合物を検討した。その結果、短日条件に呼応した地上部から地下部への移動、ストロン部での活性型ジベレリンの不活性化酵素をコードする遺伝子の転写産物の蓄積誘導を加味して、JAの12位が酸化された12OHJAが実際の植物で作用する化合物と確認した。

    【ダンシャクイモ(Irish Cobbler)の短日応答性】  一般的にはバレイショ塊茎誘導の短日応答性はアンディゲナ種(S. tuberosum spp. angdigena)のみとされている。しかしながら、バレイショ茎断片組織培養法においてはダンシャクイモ(S. tuberosum cv.Irish Cobbler)を用いることから、本バレイショ種における、短日要求性を観察した。萌芽後、2週間、長日条件(14時間明期,10時間暗期、23℃)で植物を人口気象期内で育成した。その後、半数の植物を短日条件(10時間明期,14時間暗期、23℃)へ移行し、更に2週間両条件で植物を育成した。その結果、7日目において短日条件下の植物はストロン先端のフック形成、14日目では初期塊茎が形成された。長日条件ではストロンが伸長を続けるのみであった(図1)。以上の結果から、本実験において設定した生育条件で、栽培種にもかかわらず、ダンシャクイモにおける塊茎誘導の短日応答性を引き出せることが明らかとなった。

    図1. ダンシャクイモ(Irish Cobbler)における塊茎誘導の短日誘導性

    ストロン、初期塊茎の観察を容易にするために根部を除去後、写真を撮影。

    【短日条件に呼応した生理活性物質の移動】  短日条件において塊茎誘導を引き起こす移動性因子に関してはフロリゲンタンパクの一種であるStSP6A、および、転写因子となるStBEL5 mRNAの移動が報告されている。しかしながら、植物ホルモン様の低分子化合物においてはその報告がない。以前にJA類に塊茎誘導活性があることが明らかとされ、[13C-2]JAの葉部投与実験では短日に呼応した植物全体へのラベル体の移動が観察されたことから、JA類を第一候補とした。上記の2つの生育上件で植物を育成し、グループ分け後の2日目、10日目に茎を地際で切断し、地下部を有する茎から滲み出る浸出液をUPLC MS/MSによりJA類を分析した(図2)。検出できた化合物の傾向としては、JAの12位炭素が水酸化された12-hydroxyJA (12OHJA)およびその配糖体(12OGlcJA)が両試験区の主要化合物であった。塊茎誘導の傾向が観察されない2日目において両生育条件下で化合物同士の検出量に顕著な差は観察されなかった。しかし、短日条件で塊茎誘導が生じている10日目の観察では、短日条件に呼応

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  • プラディプタ アンバラ, 田中 克典
    p. Oral18-
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/10/01
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    Acrolein, a highly toxic a,b-unsaturated aldehyde, exists both as ubiquitous pollutants in environment (e.g. in tobacco smoke or exhaust gas) and as endogenous metabolites generated by cells through enzymatic oxidation of polyamines or through reactive oxygen species (ROS)-mediated lipid peroxidation. Acrolein, which is sometimes generated on millimolar scale in cells under oxidative stress, has been reported to be more toxic than ROS molecules (e.g. H2O2, •OH). Considering that acrolein has been used as longstanding key biomarker in numerous oxidative stress-related diseases including cancer and Alzheimer’s, consequently detection of acrolein level in biosystems is becoming of significant importance for defining pathogenesis of the disease and to provide information for the therapeutic and diagnostic remedies.

    The conventional analytical method for detection of acrolein, e.g. HPLC analysis after derivatization with 3-aminophenol under harsh reaction conditions, is not suitable for high-throughput assay and frequently provide poor selectivity when other aldehydes are present. Furthermore, while notable, the use of antibodies that can recognize 3-formyl- 3,4-dehydropiperidine (FDP), an acrolein-lysine adducts, is not only costly but also requires procedures that are time-consuming. More critically, the formation of FDP is quite slow, and thus, this method suffers from lack of detection sensitivity in a time-dependent manner. Consequently, developing new analytical tools for acrolein detection that are straightforward, cost-effective, selective, and preferably feasible in live cells remains a highly essential pursuit in the therapeutic treatment of oxidative stress related diseases. Herein we would like to demonstrate a simple but robust method for detecting and imaging acrolein generated by cells in the context of oxidative stress processes or introduced via environmental exposure.

    1. Discovery of 1,3-dipolar cycloaddition between phenyl azide and acrolein

    Recent advances in Huisgen 1,3-dipolar cyclo- addition between azide and terminal acetylene has led to extensive application in the fields of chemical biology and organic functional materials. The reaction may be accele- rated in the presence of Cu(I) catalyst or by placing the acetylene group within a strained ring. Aside from these “click reactions”, we serendipitously uncovered that phenyl azide can participate in similar 1,3-dipolar cycloaddition with acrolein to produce triazoline and triazole derivatives.

    Reaction of phenyl azide with 10 equiv. of acrolein present in THF at millimolar level smoothly gave the heterocyclic products (Fig. 1-i). The reaction is generally complete within 30 minutes at room temperature in the absence of catalyst. After silica gel column chromatography, the products were identified to be 4-formyl-1,2,3-triazoline 2 and 4-formyl-1,2,3-triazole 3 (Fig. 1-i). Interestingly, in the case of 4-formyl-1,2,3-triazoline 2, the double bond isomerized at conjugated position of C4-aldehyde, and decomposition was not observed even over an incubation period of several days. Thus, the thermally labile triazoline cycloadduct was stabilized by this isomerization. Significantly, the 1,3-dipolar cycloaddition between phenyl azide and acrolein is highly chemoselective for acrolein. Under the same conditions, no discernable products were found when phenyl azide was reacted with a- or b- substituted acrolein (e.g. methacrolein, crotonaldehyde, trans-2- octenal) and activated olefins serving as model of lipid metabolites (Fig. 1-ii). Surprisingly, to the best of our knowledge, such inherent reactivity of acrolein towards phenyl

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  • 李 鐘光, 星野 学, 松田 侑大, 三橋 隆章, 岡田 正弘, 阿部 郁朗, Urban Sylvia, 藤田 誠
    p. Oral19-
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/10/01
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     天然物は複雑かつユニークな構造を有することから、全合成研究や新規反応開発研究において魅力的な標的である。さらに、強い生理活性と幅広いファーマコフォアを与えることから、新規医薬品候補化合物としても大変魅力的な標的である。しかしその一方で、複雑な構造と希少な入手性が天然物の構造決定を難しくしているのも事実であり、製薬会社における天然物発の医薬品開発の足止めに大きく影響していると考えられる。今回我々は、当研究室が開発した新規X線結晶構造解析技術である結晶スポンジ法1を用い、天然物の絶対立体配置を迅速に解明することに成功した。本結果は枯渇の一歩を辿る天然物由来の医薬品資源供給を再活性化する可能性を提供する。

     結晶スポンジ法とは、予め単結晶化された多孔性を有する金属錯体にゲスト化合物の溶液を染み込ませることで、ゲスト分子を孔内に整列させ、得られた新たな単結晶をX線結晶構造解析することで、ゲスト化合物の構造を解明する技術である。したがって、ゲスト化合物の結晶化検討は不要であり、液体分子、気体分子の構造解析を可能とする。さらに、用いる結晶スポンジは微小であることから、必要なゲストの化合物量はマイクログラムオーダーで十分である。これらの利点は希少かつ油状天然物の構造解明に大きく貢献できると考え、検討を開始した。

    Fig.1 結晶スポンジ法の概略図.

     最初のターゲットであるelatenyneは1986年にHallらにより単離された海洋天然物である。単純な2,2’-ビフラン骨格にも関わらず、30年間その絶対立体配置は決定されていない。その理由として、elatenyneは油状化合物であり結晶化が難しいため、X線結晶構造解析が適応できない化合物であることに加え、擬メソ構造を有し、比旋光度がほぼ0を示すことから、全合成研究でも絶対立体構造の決定が不可能であることが挙げられる。

     今回我々は結晶スポンジ法を用い、わずか5 mgの化合物量でその絶対立体配置を決定した。2

    Fig. 2 擬対称面を有するelatenyneの相対立体構造 (左図)と

    絶対立体構造 (ORTEP with 50% probability) (右図).

     また、elatenyneに結晶性の高いトリアゾール基、ベンズアミド基を導入することで結晶化を期待した誘導体の構造解析も行った (結晶は得られなかった)。本導入反応は2,2’-ビフラン骨格の絶対立体配置に影響は与えない。結果、誘導体の母骨格の絶対立体配置はelatenyneと一致し、elatenyne構造の確実性をサポートするデータであった。

    Fig. 3 Elatenyne誘導体の絶対立体構造.

     糸状菌Emericella variecolorよりゲノムマイニングによって見いだされた新規セスタテルペンastellifadieneはNMR研究により相対立体配置まで決定されたが、絶対立体配置は決定できていない。その理由として、astellifadieneは油状化合物であり結晶化が難しいため、X線結晶構造解析が適応できない化合物であることに加え、誘導体化やフラグメンテーション解析が困難な化合物であることが挙げられる。

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  • 加藤 光, 田之頭 夏希, 久木田 沙菜子, 根平 達夫, 塚本 佐知子
    p. Oral20-
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/10/01
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    1.はじめに

     Xestoquinoneは、海綿Xestospongia sapraから単離された五環性キノンで1)、その類縁体は細胞毒性や抗菌活性、Na,K-ATPaseの阻害活性など、さまざまな生物活性を示すことが知られている。本研究室では海洋生物資源から生物活性物質を探索しており、今回、インドネシア近海で採集した海綿のエキスについてスクリーニングした。その結果、海綿Petrosia alfianiのエキスに、脱ユビキチン化酵素であるubiquitin-specific protease 7 (USP7) の阻害活性が認められた。USP7は、自己ユビキチン化したMdm2からユビキチンを除去する働きをしている。Mdm2は、がん抑制遺伝子産物p53に対するE3酵素であることから、USP7阻害物質は、有望ながん治療薬になると考えられる。そこで、海綿のエキスからUSP7阻害物質を探索したところ、新規骨格を含む16種のxestoquinone類縁体 (1-16) を得たので、それらの構造と生物活性について報告する。

    2.新規xestoquinone類縁体(1-16) の単離と構造解析

    インドネシア北スラウェシ州で採集した海綿P. alfiani(湿重量1 kg) を、エタノールで抽出した。抽出物を液々分配後、各種オープンカラムクロマトグラフィーおよびHPLCにより精製し、16種の新規化合物であるpetroquinone A (1, 0.14 mg)、B (2, 2.5 mg)、C (3, 2.9 mg)、D (4, 0.72 mg)、E (5, 1.7 mg)、F (6, 4.2 mg)、G (7, 3.6 mg)、H (8, 1.3 mg)、I (9, 2.7 mg)、J (10, 8.3 mg)、K (11, 0.5 mg)、L (12, 2.8 mg)、1-(2-hydroxyethyl)xestoquinone (13, 6.1 mg)、1-(1-hydroxyethyl)xestoquiononeのC-21のエピマーの混合物 (14と15, 5.9 mg) および3S-3-hydroxyxestoquinone (16, 3.8 mg) を得た。

    Petroquinone AとB (1と2) は、高分解能ESIMSにより、どちらもC60H36O12の分子式を有することが分かった。1の1Hおよび13C NMRスペクトルはxestoquinone (17) とよく類似していたが、17のquinone部分に由来する2本のCH由来のシグナルが認められず、新たに2個の四級炭素の存在が認められた (dC 140.4と140.6)。これらのデータは、1がquinone部分で新たな環構造を形成し、対称的な三量体を形成していることを示唆している。一方で、2の1Hおよび13C NMRスペクトルには1に由来する3対分のシグナルが認められたので、2は非対称な三量体であることが示唆された。1と2の6、6’ および6’’ 位の立体配置は、同じ海綿から単離した単量体17が6S体であることから、6S,6’S,6’’Sであると考えられる。1の最安定配座を密度汎関数 (DFT) 法を用いて計算したところ、大きなねじれを有するプロペラ型の配座であることが分かった (図1a)。そのため、1は17や2に比較して比旋光度が非常に大きく (1: +389 (c 0.1, CH3CN); 17: +22 (c 0.1, CH3CN); 2: -6 (c 0.1, CH3CN))、また、ECDスペクトルでも大きな強度を示した(図1b)。

    Petroquinone C-H (3-8) は、17を構成単位とする二量体であった。それらの中でも、3は g- および d-lactone環が1個の炭素を共有して結合している構造であることがわかった。これまでに多くの g- あるいは d-lactone環を有する化合物が天然資源から単離され合成されてきたが、2個のlactone環がそのように結合した構造を有する化

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  • 澄本 慎平, 岩﨑 有紘, 大野 修, 犬塚 俊康, 照屋 俊明, 末永 聖武
    p. Oral21-
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/10/01
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    【概要】

     海洋シアノバクテリアは多様な二次代謝産物を生産している。これらの化合物には特異な生物活性を示すものが多く含まれる。また、近年のゲノム解析の結果からシアノバクテリアは他の生物が持たない特異な修飾酵素を有することが示唆されている1。以上の背景より、私たちの研究室では海洋シアノバクテリアより特異な構造を持つ新規生物活性物質の探索を行ってきた。今回、私たちは南西諸島で採集した海洋シアノバクテリアより新規リポペプチドkanamienamide (1) とminnamide類 (2-5) を発見した。これらの化合物の単離、構造決定、生物活性について報告する。

    1. Kanamienamideの単離、構造、生物活性

    1-1. Kanamienamideの単離・構造決定

     鹿児島県徳之島の沿岸にて海洋シアノバクテリアMoorea bouillonii 1000 g (湿重量) を採集した (Figure 1)。このものをメタノール抽出し、得られた抽出物を酢酸エチル/水で分配した後、有機層をヘキサン/90%メタノールにて分配した。90%メタノール画分に対し、HeLa細胞への増殖阻害活性を指標として各種クロマトグラフィーにて分離・精製を行い、kanamienamide (1, 11.0 mg) を単離した。

     平面構造は各種スペクトル解析を通じて明らかとなった(Figure 2)。また、Kanamienamide (1) の11員環部分の相対立体配置はプロトン間の結合定数およびNOESYスペクトルの解析により決定した(Figure 3)。

    \﷽﷽﷽﷽﷽﷽﷽﷽﷽﷽﷽﷽5),we基の絶対立体配置を決定し、\﷽﷽﷽﷽﷽﷽﷽﷽﷽﷽﷽﷽5),we基の絶対立体配置を決定し、

     Kanamienamide (1)を酸加水分解して得たN-Me-LeuをキラルカラムHPLCにより分析したところL体であった (Scheme 1)。以上の結果、kanamienamideの絶対立体配置を決定した。

     結果として、KanamienamideはN-Me-Leuを含む11員環のリポペプチドであり、天然には珍しいエノールエーテル構造とエナミド骨格を有していた。

    1-2. Kanamienamide (1) の生物活性

     Kanamienamide (1) の細胞増殖阻害活性の評価をMTTアッセイにより行った。その結果、1 はHeLa細胞に対して増殖阻害活性を示すことが明らかとなった (IC50 : 2.5 μM)。また、kanamienamide (1) の添加によって引き起こされる細胞死が形態的にアポトーシスと類似していたため (Figu

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  • 菊地 晴久, 西村 壮央, 權 垠相, 川井 絢矢, 大島 吉輝
    p. Oral22-
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/10/01
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     天然物化学は,新規の化学構造や有用な生物活性を有する化合物を提供してきた.特に,創薬研究においては天然化合物をリード化合物として開発された医薬品が数多く存在する.天然化合物が医薬品の探索源として有用である理由の一つとして,これらが有する多様な化学構造が挙げられる.しかし,天然資源の探索が活発に行われてきた結果,近年では新規性の高い骨格を有する化合物を取得することは困難になってきている.そのため,高度な構造多様性を有する化合物を得るための新たな方法論が求められる.

     有機反応を用いて,多様な構造を有する化合物群を構築する手法の1つとして,2000年にSchreiberにより提唱された多様性指向型合成が存在する.1 多様性指向型合成は,共通の基本骨格から枝分かれした合成により分子骨格を変換することで,多様性にあふれた化合物群を構築する手法である.

     テルペノイドアルカロイドは,sp3性に富んだテルペノイドの特徴と窒素原子を含むアルカロイドの特徴を併せ持ち,有用な生物活性を有する化合物が多く存在する.例えば,インドジャボク属やニチニチソウなどに含まれるテルペンインドールアルカロイドのajmalicineや,トリカブトに含まれるaconitineなどが知られている.これらのテルペノイド部分はsecologaninやent-kaureneなどの限られた前駆体から生合成されている (Figure 1a).多様性指向型合成により,非天然型のテルペノイド骨格を有するテルペノイドアルカロイド様化合物群を構築できれば,創薬研究において有用な化合物ライブラリーとなることが期待できる (Figure 1b).

     本研究では多様性指向型合成の考えに基づき, humulene (1) の骨格を基盤としてテルペノイドアルカロイド様化合物群の構築を行う.Humuleneは,ホップ (Humulus luplus) やテンダイウヤク (Lindera aggregate) に多く含まれているセスキテルペノイドである.Humuleneは3つの二重結合を含む11員環構造を有しており,分子内環化反応などにより多様な環構造の構築が可能であると期待される.

     化合物ライブラリーの構築は次のような戦略に基づいて行った.まず,humuleneの反応性が高められたhumulene diepoxide (2) に対し,ルイス酸存在下でベンゼン環上の置換基としてビニル基もしくはアリル基を有するアニリンを作用させる.これにより,アニリンの求核攻撃とエポキシドの開裂に伴う分子内環化反応により3のような二環式化合物が得られる.さらに,化合物ライブラリーの多様性をさらに高めるため,humulene骨格に残る二重結合と導入したアニリンが持つ二重結合を利用し,メタセシス反応による環骨格の組み換えを行い,多様な環構造を有する化合物群を構築する.二環式化合物3に対する開環メタセシス反

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  • 佐藤 隆章, 須藤 貴弘, 柳田 悠太, 長島 義之, 松尾 直哉, 黒須 靖弘, 瀧川 晋作, 千田 憲孝
    p. Oral23-
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/10/01
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    1.緒言

    スキップジエン構造は、マダンガミン(抗腫瘍活性)、コラロピロニン(抗真菌活性)、リポスタチン(RNAポリメラーゼ阻害作用)に代表される生物活性天然物に広く存在する重要な構造モチーフである(スキーム1A)。これらの天然物は様々な幾何異性体で存在しており、スキップジエン構造の取り得る4つの幾何異性体を同一原料から網羅的に作り分ける方法の開発が望まれている。これまで様々なスキップジエン合成が報告されているが、全ての幾何異性体を作り分けられる収束的な合成は困難であり、現在の精密有機合成における挑戦的課題の1つである。そこで私達は、次のような基本合成戦略を立てた(スキーム1B)。アレン1に対し、ヒドロホウ素化によりアリルアルコール2とする。続いてビニルスズ3との右田‐小杉‐Stilleカップリング1)を用いれば、収束的かつ様々な幾何異性を有するスキップジエン4を構築できると考えた。本発表では、立体選択的スキップジエン構築法の開発と、これを用いたマダンガミンCの全合成を報告する。

    2.アレンの立体選択的ヒドロホウ素化

    基本合成戦略を確立するにあたり最も重要な課題は、同一のアレンからE体またはZ体のアリルアルコールを立体選択的に合成する方法の確立である。一般的に、アレンに対する9-BBNを用いたヒドロホウ素化は、熱力学支配のアリルホウ素化合物を与えることが知られている2)。実際、アレン5に対し9-BBNを作用した後に酸化処理すると、2回のアリル転位(Z-6 → 7 → E-6)を経てE-8が高立体選択的に得られた(89%, E/Z = 11:1)(スキーム2)。一方、私達は立体障害の大きなホウ素化合物を用いれば、アリル転位が抑制できると考えた。アレン5を(Sia)2BHで処理すると、期待していた通り、速度論的生成物のZ-8を高立体選択的に与えた(97%, E/Z = 1:8.3)。このように、同一のアレンからホウ素試薬のかさ高さを調整してアリル転位を制御し、2つのアリルアルコールE-8、Z-8の作り分けを実現した。

    3.マダンガミンCの全合成

     マダンガミン類は、Andersenらにより海綿:Xestospongia ingensより単離されたアルカロイドである3)。D環構造のみが異なる類縁体としてマダンガミンAからEまで報告されている。生物活性としては、マダンガミンA、Dがそれぞれ異なるヒト癌細胞に対する抗腫瘍活性を示すことが知られており、D環構造の重要性が示唆されている3a, 4)。しかし、それら以外の類縁体の生物活性は未だ解明されていない。

    3-1.合成計画

    私達は開発したスキップジエン合成法の有用性を示すため、マダンガミンCの全合成に取り組んだ。マダンガミンCの全合成には2つの大きな課題がある。1つは1,3-ジアキシアル反発が多数存在するABC環の構築、もう1つはE環部の三置換Zオレフィンを含むスキップジエンの合成である。これまでABC環構築法は様々なアプローチが報告されているが、マダンガミン類の三置換Zオレフィンを含むスキップジエンの立体選択的な合成は未解決のままである4)。そこで、これら2つの課題を一挙に解

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  • 佐藤 翔吾, 阪田 慶一郎, 橋本 善光, 瀧川 紘, 鈴木 啓介
    p. Oral24-
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/10/01
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     テトラセノマイシンC(1)は、1979年にZeeckらによって放線菌Streptomyces glaucescensの二次代謝物として単離、構造決定された芳香族ポリケチド化合物である1a)。このものはL1210白血病細胞に対する強力な増殖阻害活性を示し、半合成を基盤とした構造活性相関研究から、酸化的に脱芳香化されたAB環部が活性発現の鍵を握ることが明らかにされた。また、C12a位水酸基がメチル化された誘導体であるテトラセノマイシンX(2)が、1より高活性を示すことも分っている1b)。こうした生物活性に加え、その特徴的な構造、すなわち高度に官能基化された直線型の4環性構造は、合成化学的にも興味深い。しかし、これまでの合成研究はテトラセノマイシンA2(3)のようにA環が芳香化された類縁体の合成に留まり2)、1や2の全合成は未報告である。今回、我々は、先に開発した骨格構築法を基盤とした1および2の効率的な合成経路を開拓し、不斉全合成を達成した。

    1.合成計画

     合成における課題は、(1)多くの酸素官能基を有する4環性骨格の構築、ならびに(2)C4、4a、12a位に連続する不斉中心の立体選択的構築、である。これらを考慮し、1の逆合成解析を行った(図1)。まず、C4位の第2級アルコールは、テトラケトン4の位置、立体選択的なヒドリド還元による構築を想定した。この4の核間位に置換した2つの水酸基のうち、C12a位の方は先に報告したイソオキサゾール環の酸化反応によって導入できると考え3)、前駆体としてイソオキサゾール5を想定した。また、C4a位水酸基はトリアゾリリデン6を用いるベンゾイン環化反応によって導入することにし、その基質であるケトアルデヒド7をナフトニトリルオキシド8とo-キノンモノアセタール9との付加環化反応4)によって合成することを考えた。さらに、この8のニトリルオキシド部位は、シクロブテノンオキシム10の酸化的開環反応によって構築できると期待し、これを1,4-ベンズジイン11に対するケテンシリルアセタール12ならびにフラン13の付加環化反応によって合成できるものと考えた。

    図1

    2.ナフトニトリルオキシド8の合成

     上述の計画に基づき、まずフロログルシノール(14)から3工程の変換により1,4-ベンズジイン等価体15を合成した(図2)。この15は2箇所のヨードトシラート部位において逐次的にベンザインを発生させることができる。また、親アライン体との反応の際の位置選択性は、ベンザインのベンジルオキシ基の効果により制御可能である。実際、まず、15に対してn-BuLiを作用させて発生させたベンザインはケテンシリルアセタール12と位置選択的に [2+2]付加環化反応を起こし、ベンゾシクロブテン16を収率良く与えた。続いて、逆側のヨードトシラート部位で同様にベンザインを発生させ、フラン13との[4+2]付加環化反応を行うと、二重環化付加体17が得られた。この17に対して低原子価チタンを作用させ、還元的芳香化によりナフタレン環を形成させた後、シリルアセタールを加水分解し、生じたケトンをヒドロキシルアミンと縮合させて10へと変換した。

    図2

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  • 川俣 貴裕, 長友 優典, 井上 将行
    p. Oral25-
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/10/01
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    【序】

    ザラゴジン酸C (1)は、1992年に菌類の一種Leptodontium elatiusより単離・構造決定された天然物である1a)。1は、スクアレン合成酵素に対する強い阻害活性を有するため、コレステロール生合成の抑制作用を示し1)、新規高脂血症治療薬の開発に向けた創薬リード化合物として期待されている。その構造的特徴として、6連続不斉中心を有する特異なジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン母骨格が挙げられる。この母骨格上には、3つのカルボン酸、2つのヒドロキシ基、C1位アルキル側鎖部位およびC6位アシル側鎖部位が存在している。高度に密集した親水性の酸素官能基と疎水性側鎖を併せ持つ構造ゆえ、1の全合成は極めて挑戦的な課題である。1を合成する上での最重要課題は、連続するC4,5位四置換炭素の効率的な構築にある。今回我々は、本課題を当研究室で開発したNorrish-Yang光環化反応を鍵とする化学・立体選択的なC(sp3)−H結合のアシル化2)を用いて解決し、1の全合成を達成した。以下に、詳細を述べる。

    【合成計画】

    1の全合成計画の立案に先立ち、置換基Xの異なる1,2-ジケトン2a, bを用いて、Xの差異がNorrish-Yang光環化反応に与える効果を調査した(Scheme 1)。まず、2a (X = OTBS)を基質としてPh2C=O存在下UV光照射を行った。その結果、連続する四置換炭素を有する6/4-cis-縮環化合物3aが化学・立体選択的に61%の収率で得られた。本反応機構は次のように考察される。まず光励起により2aは1,2-ビラジカルAとなる。続いてAの電子求引性のオキシルラジカルが、電子豊富なシロキシa位のメチン水素原子を化学選択的に引き抜くことで、1,4-ビラジカルBとなる。最後に立体選択的なC−C結合形成を経て3aが生成する。一方、2b (X = OBz)を基質とした場合、反応系は複雑化した。電子求引性であるBzO基の効果により、引き抜かれうる酸素a位メチン水素原子の反応性が低下したためであると説明できる3)

    Scheme 1. Effect of functional groups on chemoselective Norrish-Yang photocyclization

    以上の結果から我々は、保護基による酸素a位メチン水素原子の反応性の差異を利用すればNorrish-Yang光環化反応の化学選択性を制御できると予想し、1の全合成計画を立案した(Scheme 2)。すなわち、出発物としてC6,7位立体中心をすでに有したグルコノラクトン誘導体4を設定し、C1位アルキル側鎖導入とC5位アシル基導入によって、1,2-ジケトン5を合成する。5を鍵となるNorrish-Yang光環化反応に付すことで、シクロブタノン6へと導く。このとき、BzO基の効果によりC6位メチンC−H結合の反応性が低下するため、鍵となる光反応は電子豊富なエーテル酸素a位であるC4位メチンC−H結合に対して起こる。続いて、6のC3,8,9位の官能基変換によりラクトン7を合成する。7は1の母骨格に必要な全ての立体中心および官能基を有している。7の分子内アセタール交換によって、母骨格を形成し、8へと変換する。最後に、8のC6位にアシル側鎖を導入することで1を全合成する。

    Scheme 2. Synthetic strategy for zaragoz

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  • 前原 知明, 本山 敬祐, 藤間 達哉, 横島 聡, 福山 透
    p. Oral26-
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/10/01
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    1. 研究背景

     (–)-テトロドトキシン(1, 以下TTXと略す)はフグ毒として知られる海洋性天然物であり、電位依存性ナトリウムチャネル(Nav)を低濃度で、かつ選択的に阻害する神経毒である1)。Navの異常はてんかん、ブルガタ症候群、無痛症などの疾患を招くため、Navを標的とした医薬品開発は精力的に行われている。Navは9つのサブタイプ(Nav1.1~1.9)が知られており、それぞれの発現場所や薬理学的作用は異なっている。そのうち、TTXはNav1.2, 1.3, 1.4, 1.6, 1.7を阻害すること、また、TTXの構造類縁体である4,9-anhydroTTX (2) はNav1.6を選択的に阻害することが明らかとされており2)、TTXを基盤としたサブタイプ特異的なNav阻害剤の創出が期待できる。しかしながら、TTXは多くの酸素、窒素官能基を有する官能基密集型化合物であるため、TTXからの半合成による構造類縁体の供給は非常に困難である。このような背景に加え、TTXは小分子ながら9つの連続する不斉中心、およびジオキサアダマンタン骨格と環状グアニジンを有する高度に官能基化された化合物であるため、その効率的な全合成は合成化学者にとって極めて挑戦的な課題である。そこで我々は、構造類縁体の合成も見据えた、TTXの実用的な合成経路の確立を目指した研究を行った。

    2. 逆合成解析

     TTX (1) のオルトエステルおよび環状グアニジンは合成の終盤で導入することとすると、多置換シクロヘキサン3を効率的に合成することが全合成への鍵となる (Scheme 1)。3の4a位ホルミル基と5位水酸基がシス配置であることに注目し、分子内反応を用いてこれらを一挙に導入することとした。即ち、ニトリルオキシドと二重結合との分子内1,3-双極子付加環化反応を進行させることでイソキサゾリン4を得る計画である。1,3-双極子付加環化反応に必要なリンカーはアルデヒド6に対して立体選択的に導入できると考えることで、シクロヘキセン6へ逆合成した。シクロヘキセン環上の各官能基の立体化学はエノン7の三環性骨格の有する立体的特性を利用することで制御可能であると考えた3)。光学活性なエノン7は、対称なジオール8を不斉非対称化することで合成することとした。

    3. 三環性骨格の立体的特性を利用した変換

     三環性骨格の立体的特性を利用して連続する3つの不斉点の制御を行った (Scheme 2)。市販のp-ベンゾキノン (9) と5-TMS-シクロペンタジエン (10) とのDiels-Alder反応を行い、そのままLuche還元することによりメソ体のジオール8を得た。これに対し、リパーゼを用いた不斉非対称化を行い、光学的に純粋なアリルアセテート11を高収率で合成した4)。その後、保護基の変換と酸化を経て光学純度を損なうことなくエノン12を調製した。エノン12の有する三環性骨格はconvex面とconcave面で立体障害が大きく異なるため、立体選択的な化学修飾ができる3。エノン12に対して、ヒドロキシメチルアニオン13の付加と四酸化オスミウムによる酸化を行ったところ、期待通り三環性骨格のconvex面から試薬が接近し、完全な立体選択性にて6,7,8位の立体化学を制御

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  • 真鍋 良幸, 李 昊晟, 徳永 健斗, Sianturi Julinton, 寺尾 尚子, 高松 真二, 種村 匡弘, 三善 英知, 深瀬 ...
    p. Oral27-
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/10/01
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    a-galエピトープ(Fig.1)は,多くの哺乳類で広く発現しているものの,ヒトではその合成酵素であるa1,3galactosyltransferse(a1,3GT)が変異を受け,活性を持たず,この糖鎖構造を持たない.代わりにヒトは,抗a-gal抗体(抗Gal抗体)を持ち,その量はヒトの自然抗体の中で最も多い.ブタなどの異種臓器には大量のa-galが発現しており,ブタ‐ヒト間の臓器移植でみられる超急性拒絶反応は,a-galと抗Gal抗体の免疫反応に起因する.我々は,この激しい免疫反応を利用した効果的ながん免疫療法の開発を目指して研究を行った.

    がんの免疫療法は手術,放射線療法,化学療法の3大療法に続く第4の治療と期待され,副作用が少なく,転移や再発を抑制する効果的な治療となる可能性を秘めているものの,未だ標準的治療としては確立されていない.この要因としては,全身状態不良のがん患者では,免疫機能が低下しているため腫瘍抗原に対する抗原提示能が低いこと,がんの持つ免疫回避機構のために免疫系が十分に機能しないこと,などが考えられる.本研究では,a-galエピトープを化学合成し,これをアジュバント(抗原性補助剤)として利用したがんワクチン療法の開発に取り組んだ.また,がん細胞をa-galで標識し,がん細胞特異的に超急性拒絶反応を引き起こす新しいがん免疫療法の開発も検討した.

    ・a-galエピトープの効率合成

     a-galの合成に関しては,通常の化学合成に加え,固相での合成や,酵素を用いた合成など複数の報告がある1.本研究では,a-galの量的供給を目的として新規の合成ルートを検討した.まず,チオ糖1と2を用いたグリコシル化を検討した(Table 1).グリコシル化において電子供与性の保護基で保護したドナー(アームドドナー)は電子吸引性の保護基で保護したドナー(ディスアームドドナー)よりも反応性が高い.そこで,ディスアームドドナー2存在下でアームドドナー1を選択的に活性化して,2糖3を合成し,得られたチオ糖3をそのまま続くグリコシル化に用いることで,効率的な糖鎖骨格の構築が可能となると考えた.種々の活性化剤を検討したところ,NIS,TfOHを用いたときに最も良好な結果を与え(entry 1-4),1を小過剰に用いることで収率が向上し,目的の3を82%の収率で得ることができた(entry 5,6).

    一方で,本反応はスケールアップにともない収率が低下した(57%, entry 6).そこで,本反応にマイクロフロー系を適用した.マイクロフロー系では,反応溶液をポンプにより流路に送液し,マイクロメートルオーダーの反応場を持つリアクターで混合し,反応を行う.これにより,効率的な混合や精密な温度制御が可能となり,アームドドナーである1の活性化の選択性が向上することに加え,生成した3を系外に取り出すことで,過剰反応を抑制できると考えた.さらに,本系では送液時間を延長することで,完全に同じ条件でのスケールアップが可能である.マイクロフロー系でのグリコシル化はFig. 2に示す装置を用いて行った.マイクロフロー系における反応条件の検討にあたり,基質1,2の消費量を最小限に抑えるために,HPLCで用いられるレオダインインジェクターを系内に

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  • 井貫 晋輔, 相羽 俊彦, 平田 菜摘, 市原 収, 吉留 大輔, 喜多 俊介, 前仲 勝実, 深瀬 浩一, 藤本 ゆかり
    p. Oral28-
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/10/01
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    背景・目的

    脂質抗原受容体CD1dは樹状細胞等に存在しT細胞の分化、活性化を制御することが知られている。CD1dは糖脂質リガンドと結合すると、ナチュラルキラーT(NKT)細胞上のT細胞抗原受容体(TCR)に認識され、様々なサイトカイン(INF-g、IL-4、IL-10など)を誘導する1)。これらのサイトカインは免疫応答のバランス制御に関わっており、制御を可能とするリガンドの創製は重要な研究課題である。既知のCD1dリガンドとしては海洋天然物を基盤に開発された糖脂質a-GalCer (KRN7000) が知られている(Fig.1)2)。これまでのa-GalCerの構造活性相関研究によりCD1dに対するリガンド結合様式の解明が精力的に進められてきたが3)、CD1dの疎水性ポケットにおける脂質リガンド認識機構の詳細な解析はあまり行われていない。このような背景のもと、我々はa-GalCerの長鎖アルキル基の構造展開を基に、CD1dの脂質結合部位におけるリガンド認識機構の解明とその制御を目指し、本研究に着手した。

    化合物デザイン・合成

    糖脂質やリン脂質など生体関連脂質分子は、主に糖やリン酸基等の親水性ヘッドグループと長鎖アルキル基等の疎水性領域から構成されている。長鎖アルキル基等は、脂質認識タンパク質中の非極性アミノ酸から構成される疎水性ポケットによって疎水性相互作用を介して認識される。しかしながら、いくつかの脂質認識タンパク質において、これらの疎水性ポケット中の、非常に限定的な領域に、極性アミノ酸を見出すことができる。疎水性領域における水素結合はタンパク質表面などの親水性領域における水素結合と比較し、より安定な結合を形成することが報告されているが4)、脂質認識において疎水性ポケット中の親水性アミノ酸残基に着目して、水素結合形成を狙う試みは限られている。我々は、これらの親水性残基との水素結合形成による活性制御を指向したリガンド構造のデザインを行った。報告されているmCD1d—a-GalCer複合体のX線結晶構造(PDB: 3G08)5)を精査した結果、a-GalCerの長鎖アルキル基との相互作用領域である疎水性ポケット(A’ pocket)中に、水素結合可能な親水性領域(Ser28およびCys12, His38周辺部)を見出した(Fig.1)。これまでにこれらの親水性領域との相互作用を意図したリガンドとして、脂質末端に水酸基を含むa-GalCer誘導体が報告されているが、詳細な構造活性相関研究は行われていない6) 。今回、我々は親水性領域に対して水素結合等を介して相互作用可能なアミド基をa-GalCerの長鎖アルキル基に導入することを計画した(Fig.2)。まずCD1d のSer28との相互作用が予想される部位近傍にアミド基を導入した5数種のリガンド(1a-e)を合成した。またCys12, His38との相互作用を意図したリガンド(2a、2b)も併せて合成した。

    生物活性評価

    最初にmCD1dタンパク質とNKTハイブリドーマ(2E10)7)を用いたサイトカイン誘導能評価を行った(APC-free assay)8)。すなわち、CD1dをプレートに固定化し、各リガンドを加えた後、NKTハイブリドーマを加え、誘導されるサイトカイン(IL-2)の量を定量した(Fig.3)。1a、1bはa-GalCerと比較し、

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  • 花木 祐輔, 菊森 将之, 堀田 夏紀, 四方 雄貴, 井本 正哉, 岡村 睦美, 旦 慎吾, 柳田 亮, 入江 一浩
    p. Oral29-
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/10/01
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    1. 緒 言

     プロテインキナーゼC(PKC)は10種類以上のアイソザイムから構成されるセリン・スレオニン特異的リン酸化酵素であり,細胞の増殖,分化,アポトーシスといった情報伝達の中枢を担っている.近年,がん細胞におけるPKC変異のほとんどが機能欠損型であることが明らかになった1.これより,PKCの活性化は有効な制がん戦略の一つと考えられることから,12-O-tetradecanoylphorbol 13-acetate(TPA)に代表される天然のPKC活性化剤は,抗がん剤としての応用が期待される.しかしながら,PKC活性化剤の多くは発がん促進性ならびに炎症性を示すことから,薬剤としての利用が懸念されていた.本研究グループは,アメフラシ由来のPKC活性化剤であるdebromoaplysiatoxin(DAT)から,発がん促進性および炎症性を取り除いた単純化アナログ・aplog-1の開発に成功したが2(図1),aplog-1のPKC結合能およびがん細胞増殖抑制活性はDATよりも10倍以上低かった.本研究では,aplog-1をリード化合物としてスピロケタール部位の系統的な構造修飾を行うことにより,DATを凌ぐがん細胞増殖抑制活性を有する誘導体・10-Me-aplog-1を開発した.また,10-Me-aplog-1の大量合成を行い,in vivoでの抗がん活性ならびにin vitroでのがん細胞増殖抑制機構を調べた.

    図1 Debromoaplysiatoxinおよびその単純化アナログ

    2. Aplog-1の構造最適化

     コンピューターによるドッキングシミュレーションによって,DATのスピロケタール部位のメチル基はPKCとの結合において重要な役割を担っていると予測された.そこで,aplog-1のスピロケタール部位の4,10,12位にDATと同じ立体配置のメチル基を系統的に導入した誘導体を5種類合成し,各種生物活性を評価した.その結果,10位にメチル基を導入した誘導体3種(10-Me-aplog-1,4,10-diMe-aplog-1,10,12-di-Me-aplog-1)がaplog-1よりも10倍以上高いPKC結合能およびがん細胞増殖抑制活性を示した3, 4.続いて,これらの誘導体の発がん促進活性をマウス皮膚二段階発がん試験によって評価した.10-Me-aplog-1ならびに10,12-diMe-aplog-1はDATが発がん促進性を示す量の5倍量を塗布してもまったく腫瘍を発生させなかった.一方で,4,10-diMe-aplog-1は5倍量の塗布によって約半分のマウスに腫瘍を発生させた(図2).また,マウス耳を用いた炎症試験においても,4,10-diMe-aplog-1は他2種の誘導体と比較してやや高い炎症活性を示した(図3).以上の結果より,強力ながん細胞増殖抑制活性を有し,かつ副作用をほとんど示さない10-Me-aplog-1および10,12-diMe-aplog-1が抗がん剤シードとして最適であると考えられた.

    3. 10-Me-aplog-1のin vivoにおける抗がん活性評価

     構造最適化された誘導体の一つである10-Me-aplog-1のin vivoにおける抗がん活性を評価する目的で,本化合物の大量合成を試みた.当初はaplog-1の合成法を10-Me-aplog-1の合成にそのまま適用していたが,段階数が多く

    図2 新規誘導体のマウス皮膚における発がん促進活性

    図3 新規誘導体のマウス耳における炎症活性

    大量合成には不適であると考えられたため合成経路の見直しを行った(図4).アルケンか

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  • 古徳 直之, 荒井 雅吉, 河内 崇志, 住井 裕司, 福田 昭典, 田中 駿, 小林 資正
    p. Oral30-
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/10/01
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     近年、がん細胞と周辺環境との相互作用が、がん細胞の生存や増殖に深く関与していることが明らかにされ、がん微小環境におけるがん細胞の応答や代謝が、がんに対する新しい薬剤標的として注目されている。特に、がん微小環境の特徴の1つである低酸素環境に適応したがん細胞の性状に関しては、低酸素環境下で発現誘導される転写因子Hypoxia Inducible Factor-1 (HIF-1) αを中心に研究が行われ、HIF-1αが発現誘導されることにより、血管新生の促進、転移や浸潤に関わる因子が産生される事が明らかとなっている。加えて、低酸素微小環境はがん特有の環境であり、正常組織ではほとんど観察されないため、低酸素環境選択的に細胞増殖阻害活性を示す化合物は、副作用の少ない、新たな抗がん剤シーズとなる事が期待される。

     この様な背景のもと、我々は、がんに対する新しい医薬シーズの探索研究の一環として、HIF-1αを含め、がん細胞の低酸素環境適応に関わる分子全体を標的にできるフェノタイプスクリーニングを用いて探索研究を行ってきており、インドネシア産海綿Dactylospongia elegansの抽出エキスから、フラノセスタテルペンfurospinosulin-1を低酸素環境選択的な細胞増殖阻害活性物質として見出している。Furospinosulin-1に関しては、腫瘍移植モデルマウスに対して、経口投与で顕著な抗腫瘍活性を示すことを明らかにするとともに、作用メカニズムの解析を行った結果、その標的分子が2つの転写制御因子、LEDGFおよびp54nrbであることを見出し、第55回本討論会にて報告している。1,2

     最近著者らは、同海綿の抽出エキスをさらに精査した結果、新たな活性成分としてセスキテルペンフェノールdictyoceratin-C (1)を見出した。Dictyoceratin-C (1)は、1 ~ 30 μMまで濃度依存的かつ低酸素環境選択的にヒト前立腺がんDU145細胞の増殖を阻害することが明らかになった。また、著者らが以前に単離した1と類似の化学構造を有する数種のセスキテルペンフェノール / キノン類についても同スクリーニング系を用いて評価した結果、dictyoceratin-A (2)が、1と同等の活性を示すことを見出した (Figure 1)。3

    こうした背景下、今回著者らは、化合物1, 2が低酸素微小環境を標的とする有用な抗がん剤シーズになり得ると考え、化合物の量的供給と構造活性相関の解析を指向した合成研究を展開するとともに、プローブ分子を用いた作用メカニズム解析を行った。

    <Dictyoceratin類の全合成と構造活性相関>

    化合物1については、これまでその絶対立体構造に関する報告例がなかった。一方、2の絶対立体構造については、既知化合物への変換によって決定された報告がある一方で、2と鏡像異性体の関係にある化合物として単離されたsmenospondiolの旋光度の符号が2と同じであると報告されているなど、疑問が残されている状況にあった。そこで、両化合物の絶対立体構造を明らかにするとともに、さらなる活性評価のための量的供給に向けて、不斉全合成に着手した。類縁化合物の合成例を参考に、出発物質の確保やスケールアップの容易さなどを考慮して、Scheme 1 に示す方法、すなわち両鏡像異性体を容易に大量合成可能な化

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  • 大類 洋
    p. Oral31-
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/10/01
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    HIV感染(エイズ)は作用機序が異なる複数の薬を併用するHAARTが開発され致死から臨床的に処置が可能な長期感染症となっている。しかし、現在のHAARTには依然として耐性HIVの発現や、毎日飲まねばならない複数の薬の副作用などの問題点があり、より優れた薬剤の開発が望まれている。

    演者は耐性HIVを発現させないヌクレオシド薬の創製を考えている間に、ウイルスが薬剤耐性を獲得する突然変異が抗ウイルス活性修飾ヌクレオシド創製の鍵であることに気付き “抗ウイルス活性修飾ヌクレオシド創製の為の基本概念” を提出した。更に、HAARTの問題点を解決出来る修飾ヌクレオシドの分子設計の為に4つの作業仮説を立てその検証する研究を行い非常に優れた抗HIV活性を持つEFdA(4’-ethynyl-2-fluoro-2’-deoxyadenosine、表1)を創製した1)ので報告させて頂く。

    抗ウイルス活性修飾ヌクレオシド創製の為の基本概念2)

    ウイルスは突然変異して薬剤耐性を獲得するので“ウイルス感染症の治療は難しい!”と考えられている。しかし、演者は“突然変異は優れた抗ウイルス活性を持つ修飾ヌクレオシド薬創製の為にある事象である”と考えている。即ち、“突然変異とはウイルスがA:T,G:Cのペアリングを無視し設計されていないヌクレオシドを取り込んで遺伝子を変えることである。これはウイルスの核酸合成酵素の基質選択性が非常に甘いことを示している。一方、人はその様なことをしない。これは人の核酸合成酵素の基質選択性が非常に厳格であることを示している。この基質選択性の違いを利用すれば、ウイルスの核酸合成酵素の基質となり(ウイルスに活性)、人の核酸合成酵素の基質とならない(人には低毒性)修飾ヌクレオシドの創製が可能である。”

    HAARTの問題点を解決する為の4つの作業仮説1)

    ① ヌクレオシド薬に耐性HIVを発現させない方法

     図1

    現在臨床に用いられている逆転写酵素(RT)阻害ヌクレオシド薬は全て2’,3’-dideoxynunucleoside(ddN)誘導体であり、“ddN構造はヌクレオシドがRTのチェインーターミネーター(CT)になる為に必須である”と考えられていた。しかし、全てのddN薬に短期間で容易に耐性HIVが発現した。演者は“耐性とはHIVがddNを生理的2’-deoxunucleoside(dN)と識別しddNをRTの活性中心に取り込まない能力を獲得したことである”と考えた。dNとddNの構造の違いは3’-OHを持つか否かであるので “HIVは3’-OHの有無で両者を識別している”と考えた。それ故、耐性HIVを発現させない修飾ヌクレオシドは“HIVによってdNと識別されないように3’-OHを持たなければならない、しかも3’-OHを持ちながらRTのCTと成らなければならない”と考えた。

    その目的を達成出来るヌクレオシドとして4’-位に置換基を持つ4‘-substituted- 2-deoxynucleoside(4’SdN)を設計した(図1)。その理由は“4’-位に置換基を導入すると3’-OHは反応性が非常に低いネオペンチル型2級水酸基となるのでこのOH基は認識には使えてもRTによるウイルスのDNA鎖延長反応には使えない”と考えた為である。しかし、RTが4’SdNを基質として受け入れて4’SdN

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  • 叶 英, 南 篤志, 五十嵐 祐也, 尾崎 太郎, 梅村 舞子, 町田 雅之, 五味 勝也, 及川 英秋
    p. Oral32-
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/10/01
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     Ustiloxins represented by ustiloxin B (1) were toxic fungal ribosomal peptides, isolated from rice false smut caused by the pathogenic fungus Ustilaginoidea virens (Figure 1).1-3These family members, including a structurally related phomopsin and asperipin-2a (Figure 1), exhibit potent antimitotic activity and inhibit microtubule assembly. Of particular structural interest is a maclocyclic structure constructed by an oxidative cyclization between the amino acid side chains. Recently, a biosynthetic gene cluster (ust) of 1was identified in the genome of Aspergillus flavus using a sequence motif-independent de novo detection algorithm (MIDDAS-M).4,5 The cluster contained a unique precursor protein, UstA, that has 16 repeated Tyl-Ala-Ile-Gly (YAIG) sequences. Recently, we elucidated the biosynthetic machinery of 1 through heterologous expression and in vitro studies.6 The results confirmed the oxidation enzymes harboring a DUF3328 motif for the macrocylization and unique modification enzymes for the amino acid-like side chain on the aromatic ring. In this presentation, we will discuss the biosynthesis of the first ribosomal peptide produced by filamentous fungi.

    Proposed biosynthetic pathway of ustiloxins

     Previous gene knockout experiments showed eleven genes were responsible for the ustiloxin biosynthesis.7 LC-MS analysis of the extracts from five mutants, DustM, DustC, DustF1, DustF2, and DustD, showed the accumulation of ustiloxin derivatives (2-6). Except known ustiloxins, ustiloxin F (3) and ustiloxin C (6), our collaborators determined the structure of novel ustiloxins, N-desmethylustiloxin F (2), S-deoxyustiloxin H (4), and ustiloxin H (5).6These data enabled us to speculate the functions of the ustMCF1F2D genes. For the last transformation with UstD, condensation of a C3 nucleophile with an aldehyde form 8 of 6is more likely to be involved. Taken together, we proposed a biosynthetic pathway for 1 as shown in Scheme 1.6

    Cyclic peptide formation catalyzed by unprecedented oxidation enzymes

     The gene knockout experiments of ustQYaYbindicated that these enzyme genes were involved in the characteristic cyclic peptide formation because the corresponding mutants completely abolished production of 2. The ustQ gene displays the highest similarity to a tyrosinase which usually catalyses an oxidation of tyrosine and dopamine. The ustYa and ustYb genes exhibit no homology with functionally characterized enzymes but have a common DUF3328 motif. For functional characterization of these genes, we conducted heterologous expression in Aspergillus oryzae.8We transformed the wild-type NSAR1 strain by applying the “tandem transformation8” strategy with different combination of plasmids, and three transformants, AO-ustAQYa, AO-ustAQYb, and AO-ustAQYaYb, were obtained (Figure 2). Although AO-ustAQYaand AO-ustAQYb produced no cyclic- and linear peptides, AO-ustAQYaYbgave 2 (Figure 2). Additional introduction of ustYb into AO-ustAQYa resulted in the production of 2 (Figure 2), suggesting that both UstY enzymes are responsible for the oxidative cyclization. The successful in vivo reconstitution of the biosynthetic machinery of 2further confirmed the importance of the three oxidation enzymes. Given the results of the gene inactivation studies, we speculated that the UstA protein is digested into 16 pieces of trideca-/tetradeca-peptides by intrinsic Kex2 prot

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  • 張 驪駻, 閻 岩, 森 貴裕, 淡川 孝義, 劉 文, 阿部 郁朗
    p. Oral33-
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/10/01
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     アンチマイシンは9員環ジラクトン骨格を持ち、強力な電子伝達系阻害活性を有する抗生物質であるが、近年Bcl2蛋白に結合しアポトーシスを誘導させることや活性酸素種を放出させることなど様々な生物活性が報告され、抗真菌活性、細胞毒性を持つ機能性分子として注目されている1)。生理活性に加えその特徴的な構造から、アンチマイシンの全合成は数多く試みられているが2)、C7–9位の立体制御とマクロラクトン化が困難であるため、天然においてC7位およびC8位側鎖に多様性が見られるアンチマイシン類の網羅的全合成は未だ達成されていない。また、ホルムアミドサリチル酸(FSA)部分やC7位の多様なアルキル側鎖の由来などは生合成的知見から興味が持たれる。今回我々は、アンチマイシン生合成経路の解明と多様性指向型生合成エンジニアリングを達成したのでここに報告する。

    1.生合成経路の解明

     始めに、アンチマイシン産生株である放線菌Streptomyces sp. NRRL2288株およびS. blastmyceticus NBRC12747株のゲノムシーケンスより非リボソーマルペプチド合成酵素(NRPS)、ポリケタイド合成酵素(PKS)遺伝子を含む生合成遺伝子クラスターを見出し、PKS遺伝子破壊株におけるアンチマイシン産生が消失したことから、本クラスターがアンチマイシン生合成を担うことを同定した。クラスター内の遺伝子を分析した結果、トリプトファンの酸化反応により供給されたFSAがNRPSと

    PKSによる伸長反応を経たのちにマクロラクトン化し、アシル化修飾を受けることでアンチマイシンが生成されると推定した(図1)。次いで、FSA部分の生合成を解明すべく、6-フルオロトリプトファンの培地添加による取り込みを行ったところ、5’-フルオロアンチマイシンを発酵生産により得ることができた3)。このことから、FSA部分の生合成ではエポキシ化を経たカルボニル基の1,2-転位を経ていることが示唆され(図2)、同時期に行われたHutchings, Spiteller, Zhangらの生合成遺伝子および生合成経路の報告4)と一致する結果を得た。

    2.生合成マシナリーを利用した構造多様化

     次に、我々はアンチマイシンのC7位側鎖がポリケタイド生合成経路から構成されている点に注目した。既知のアンチマイシン類はジラクトン骨格のC7位に様々な炭素数のアルキル基を有することが知られており、クロトニルCoA炭酸化酵素AntEにより供給された様々なアルキルマロニルCoAが伸長基質としてPKSに取り込まれることで構造多様性が生み出されることが推定された。従って、この経路における酵素の基質特異性は寛容であることが予想されるため、非天然前駆体を培地に添加した発酵生産による、天然物を超えた炭素骨格の構造多様化を目指した。

     まず、アンチマイシン骨格の効率的な生産のため、基質特異性の低いアシル基転移酵素AntBの破壊株を作成し、C8-deacylantimycinを産生する変異株を取得した。本株に種々のカルボン酸基質を投与した結果、カルボン酸が一次代謝を受けたのちにC7位に効率的に取り込まれることが確認され、シクロアルカンやアルキン、ハロゲンなど多

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  • 恒松 雄太, 山本 剛, 福冨 愛実, 岸本 真治, Lin Hsiao-Ching, Tang Yi, 渡辺 賢二
    p. Oral34-
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/10/01
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    1. 研究背景

     がん化した細胞が増殖し、サイズの大きながん組織になるには血液からの酸素と栄養の供給が必要となり、そのためにがんは血管新生を誘導する。続いて新生した血管を通じて浸潤や転移が誘発され、がんの悪性化が加速される。故に、血管新生を阻害するがん治療戦略が考案され、いくつかの分子標的薬が成功を収めてきた。糸状菌Aspergillus fumigatusは化学構造の全く異なる2種類の血管新生阻害剤、fumagillin (1)およびpseurotin類を生産する。これまでに1の合成誘導体TNP-470について抗がん剤としての臨床開発研究が行われていたが、その副作用や薬物動態の悪さのために現在では開発が中止されている。我々は、依然として医薬品リードとして重要な1について、生合成遺伝子および生合成経路が未解明であったこと、遺伝子工学的手法を用いて非天然型誘導体を創出することで新たな医薬品候補を世に提供できると考え、その生合成研究に着手した。

    2. Fumagillin-pseurotin複合型生合成遺伝子クラスターの発見

     その化学構造より、1はテルペン骨格とポリケタイド骨格から構成されていると推測された。そこでA. fumigatusゲノム中よりテルペン環化酵素、ポリケタイド合成酵素を含む遺伝子クラスターを探索したところ、第8番染色体上にこれらの条件を満たすクラスターが確認された。続いて本領域に含まれるテルペン環化酵素の遺伝子破壊株Dfma-TC株を構築した。その代謝産物をLC-MSにて解析したところ、1の生産消失が認められた。以上の実験から、1の生合成遺伝子クラスターを同定することに成功した。興味深いことに、fma-TCは全く別の二次代謝産物pseurotin A (2)生合成に必須な遺伝子psoA1のすぐ近傍の約2.5 kb離れた位置に存在していた。

    図1. Fumagillin-pseurotin生合成遺伝子クラスター

     続いて、1の生合成経路解明を目指した。1の生合成遺伝子クラスターに存在する約15種の酵素遺伝子について、それぞれの遺伝子破壊株を作製した。その結果、8種の遺伝子破壊株において1の生産が失われ、これらの遺伝子が1の生合成に必須であることが示唆された。一方、別の2種の遺伝子破壊株(DpsoF, DpsoG)では、1の生産に変化は認められなかったものの、予想外なことに2の生産が消失していた。さらに転写因子遺伝子fapR破壊株においては、1と2が共に生産されていなかった。以上の結果から、染色体上の本領域において1と2の生合成に必須な遺伝子が互いに交じり合って存在していること、加えて、一つの転写因子FapRにより各化合物の生合成が統一的に制御されていることが示唆された。そこで、当初2の生合成遺伝子として推定されていた計6種の遺伝子(psoAを含む) 1についても同様に遺伝子破壊を行い、うち4種の遺伝子が2の生合成に必須であることを実験的に確認した。以上、全く別の化学構造を持つ1および2が、約20種の酵素遺伝子から構成される一つの巨大クラスターによって生合成されると決定した2(図1)。

    3. fumagillin生合成経路の解明

    2013年、上述した我々の研究とは独立してTangらは1の生合成遺伝子を同定し、テルペン環化酵素Fma-TCが1のテルペン骨格の前駆体で

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  • 小笠原 泰志, 川田 純平, 野池 基義, 藤盛 道子, 佐藤 康治, 降旗 一夫, 大利 徹
    p. Oral35-
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/10/01
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    【背景と目的】 我々は放線菌が生産するペプチド系抗生物質、フェガノマイシン(1)の生合成に関与する新規ペプチドライゲース(PGM1)を見出し2014年の本討論会で報告した。本酵素はアミジノフェニルグリシン誘導体のカルボキシル基をATPの存在下でリン酸無水物へと活性化させ、ここにリボソームによって生合成されたオリゴペプチドのN末端が求核攻撃することでアミド結合形成反応を触媒する。これはATP-grasp型のアミド結合形成酵素の中で、ペプチドを求核剤として用いる初めての例である。本酵素は求核剤基質の認識が非常に緩く、様々なペプチドを受容可能であったことから、ペプチドのN末端修飾酵素として応用面でも興味が持たれた。また、PGM1のオルソログが、(1)類縁体であるレゾルシノマイシン(2)の生合成におけるアミド結合形成にも関与していることを遺伝子破壊実験で証明した。これら酵素のオルソログをゲノムデータベースに探索した結果、一部の放線菌に見いだすことができ、それらは何れも固有な遺伝子群とクラスターをなしていた。この中で3つの放線菌、Micromonospora sp. ATCC 39149、Salinispora tropicaCNB-440、およびStreptomyces mobaraensis NBRC 13819に見出された遺伝子クラスターは互いに類似しており、6つの遺伝子群をすべて共通に含んでいた(図2)。そこで本研究では、これら遺伝子群の機能解明を行った。

    【方法および結果】

    1)遺伝子クラスター由来の特異的な代謝産物の同定と構造解析

    初めにクラスター由来の代謝産物の解析を行った。オルソログを含む推定生合成遺伝子クラスターをPCRで増幅後、各々異種宿主であるStreptomyces lividansに導入した。形質転換株の培養液を HPLCとLC-MSで分析した結果、Micromonospora sp.の遺伝子クラスター導入株およびS. tropicaの遺伝子クラスター導入株ではそれぞれ1つずつ、S. mobaraensisの遺伝子クラスター導入株では6つの特異的ピークが検出された(図3)。そこで形質転換株を大量培養、精製後、高分解能質量分析とNMRで代謝産物の構造を解析した。その結果、得られた代謝産物はすべて、通常のペプチド結合がカルボニルメチレン構造に置き換わったシュードジペプチド構造を有しており、そのN末にアミジノアミノ酸がアミド結合したシュードトリペプチド構造を有していた(図4)。カルボニルメチレン構造を持つペプチド天然物としては、ジペプチドのアルファメニン類のみが知られており、ケトメミシン類はシュードトリペプチドとして初の例である。

    2)ペプチドライゲースオルソログの機能解析

    ケトメミシン生合成遺伝子クラスターに共通する6つの遺伝子の内、ペプチドライゲースのオルソログは、生合成の最終段階においてアミド結合形成

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  • 中村 仁美, ショルツ エリカ, バルスカス エミリー
    p. Oral36-
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/10/01
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    Nature constructs structurally diverse, bioactive molecules using enzymes. Many enzymes catalyze synthetically challenging reactions under mild, physiological conditions. Consequently, they have long been a source of inspiration for developing biomimetic organic syntheses and methods. In addition, enzymes are increasingly being used as biocatalysts in industry. Therefore, the discovery of enzymes that catalyze chemically intriguing transformations can positively impact synthesis in multiple ways. With the recent advances in next-generation DNA sequencing technologies, we are now able to access enormous amount of genomic sequencing data, which encodes a treasure chest of new enzymatic chemistry. The challenge now is to devise a method to efficiently identify chemically interesting enzymes from this vast pool of information.

    One possible solution to this problem is to study the biosynthetic pathways of structurally unique natural products, which are predicted to involve novel enzymatic reactions. We aimed to discover new enzymes that catalyze intriguing chemical reactions through biosynthetic investigation guided by our knowledge in organic chemistry. The cylindrocyclophanes are a family of natural products that contain an unusual [7.7]paracyclophane core scaffold.1 Based on the results of the previous feeding studies, cylindrocyclophane biosynthesis is predicted to involve an unusual C–C bond formation (Figure 1).2 To discover the enzymes responsible for this chemistry, we studied the biosynthesis of the cylindrocyclophanes.

    Figure 1. The structures of the cylindrocyclophanes. The predicted biosynthetic disconnection suggests that an unusual C–C bond formation is involved in their biosynthesis.

    First, the candidate cylindrocyclophane biosynthetic (cyl) gene cluster was identified from the genomic sequence of the cylindrocyclophane producer, Cylindrospermum licheniforme ATCC 29412. We next formulated a biosynthetic hypothesis based on the cyl gene cluster annotation (Figure 2). In our original biosynthetic hypothesis, we predicted that cylindrocyclophane biosynthesis initiates with the activation of decanoic acid by the fatty acid activating enzymes, CylA and CylB, to form decanoyl-CylB. The activated decanoyl-CylB is then processed by the type I polyketide synthase (PKS) machinery, CylD-H. The nascent polyketide is released from the type I PKS assembly line by the type III PKS CylI to form the alkylresorcinol, which is the predicted monomeric unit of the cylindrocyclophanes.

    Figure 2. The initial biosynthetic hypothesis for cylindrocyclophane assembly.

    Based on our initial biosynthetic hypothesis, we biochemically characterized the functions of the fatty acid activating enzymes CylA/CylB and the type III PKS CylI. The in vitro activities of these three enzymes were consistent with our biosynthetic hypothesis, which validated the involvement of the cyl gene cluster in cylindrocyclophane production.3 In addition, we conducted feeding experiments using deuterium-labeled decanoic acid in the native producer to confirm that decanoic acid is a precursor to the cylindrocyclophanes. The incorporation of deuterium-labeled decanoic acid into the final cylindrocyclophane scaffold also indicated that cylindrocyclophane biosynthesis involves functionalization of the unactivated carbon center.3

    Following our discovery and validation of the cyl gene cluster, we next focused on the investigation of the key C–C bond formation that results in the construction of the [7.7]paracyclophane scaffold. Through bioinformatics and biochemical characterizations of the enzymes encoded in the cyl gene cluster, we determined that cylindrocyclophane biosynthesis involv

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  • 二宮 章洋, 勝山 陽平, 倉永 健史, 宮崎 征行, 能木 裕一, 岡田 茂, 脇本 敏幸, 大西 康夫, 松永 茂樹, 高田 健太郎
    p. Oral37-
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/10/01
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    【序論】

    Streptomyces属放線菌は生育の過程で複雑な形態分化を示す。胞子が発芽すると,フィラメント状の基底菌糸が培地中に形成される。基底菌糸は気中菌糸へと分化し,気中菌糸中に隔壁が形成された後,それぞれの区画が胞子となる。この形態分化を制御する微生物ホルモンとして,A-factorが知られている1。A-factorは特定の転写活性化因子の転写量を上昇させ,形態分化や二次代謝に関わる様々な遺伝子の活性化を通して,気中菌糸形成や二次代謝産物生産を誘導する。今回,我々が過去に単離したsurugamide 類が,A-factorをはじめとした既知のシグナル分子とは異なる機構で,Streptomyces属放線菌の形態分化を制御することを示す結果を得たので報告する。

    Surugamides A–E(SA–SE,図1)は,海洋放線菌Streptomyces sp. JAMM992から単離された環状オクタペプチドである2。放線菌ライブラリをLC-MSにより分析した結果,異なる海域の底泥から分離された複数のStreptomyces属放線菌,および同属の陸上放線菌がSAを生産することを明らかにした。さらに,Thorsonらは,米国の炭鉱から分離された同属放線菌がSAを生産することを報告している3。このように,地理的に離れ,異なる環境から分離されたStreptomyces属放線菌が共通してSAを生産することから,我々は,SAが生産菌において重要な生理機能を持つと推測した。SAが細菌の生育阻害活性を示すとの報告があるが3,最小発育阻止濃度が10 μMと高いため,SAに異なる生理機能があると考え,機能解明に着手した。

    【Surugamide類生合成遺伝子クラスターの同定とsurugamide Fの発見】

     SAの生理機能を解析するため,JAMM992株のSA非生産性変異株を作製し,野生株と変異株の表現型を比較することを企図した。変異株を作製するにあたり,まずSA–SEの生合成遺伝子を同定することとした。SB–SEはSAに含まれる4つのIle残基のうちいずれか1つがValに置換した構造を有しており,対応する残基の絶対配置がSA–SE間で保存されていることから,SA–SEは,非リボソームペプチド合成酵素(NRPS)によって生合成され,アデニル化ドメイン(A-ドメイン)の低い基質選択性により類縁化合物が生じると考えた。そこで,次世代シーケンサーを用いてJAMM992株のゲノム配列を解析した後,antismashを用いて配列解析をおこなった結果,18のモジュールをコードする,4つの連続したNRPS遺伝子surA,surB,surC,surDを含む遺伝子クラスターを発見した(図2a)。予想される各A-ドメインの基質アミノ酸,および,エピメラーゼドメイン(E-ドメイン)の位置情報をもとに,SA–SE はSurAおよびSurDの組み合わせにより生合成されると推定した(図2b,表1)。一方で,SurBとSurCからは10残基のペプチドが生合成されることが予想されたが,このような代謝物は未知であった。NRPSpredictor2を用いた解析では,SurB/SurCの推定生合成産物のC末端には6つの脂肪族アミノ酸が連続すると予測されたことから(表1),LC-MS/MSを用いて培養液中の代謝物を精査したところ,m/z 1057に分子イオンピークを与え,C末端の配列が-Val-Ala-Val-Alaであるペプチド,surugamide F(SF,図2c)を発見した。このC末端のアミノ酸配

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  • 石川 文洋, 今野 翔, 笠井 昭太, 鈴木 健裕, 堂前 直, 掛谷 秀昭
    p. Oral38-
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/10/01
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    【序論】

    微生物が産生するペプチド性天然有機化合物 (cyclosporin、vancomycin、bleomycinなど) は、構造上、極めて多様性に富み強力な生理活性を有することから、将来にわたる医薬品の探索・供給源として有望視されている。しかしながら、容易に獲得できる資源は枯渇しつつあるといっても過言ではない。今後の医薬資源の開発において、多様性に富む化合物群を効率的に創出 (非天然型化合物ライブラリーの構築) し、迅速な構造活性相関研究を進め、創薬シーズとして提供できるかが鍵となる。ペプチド性天然化合物の多くは、非リボソーム性ペプチド合成酵素 (NRPS) と呼ばれる酵素群により合成される。NRPSはadenylation (A)、thiolation (T)、condensation (C) domainを基本構成単位として有している。A-domainは、非常に厳密な基質特異性を有し、20種類の天然アミノ酸や非天然アミノ酸の生体内プールから特異的に1つをアミノアシル-AMPに活性化する(Figure 1)。すなわち、A-domainはペプチド性天然化合物合成における ”gatekeeper” としての役割を担っている。そのため、非天然型化合物創出へ向けたprecursor-directed biosynthesis (PDB)、mutasynthesis、進化分子工学の標的タンパク質となっている1)。多様性に富む非天然型化合物の合理的設計・創出には、A-domainの酵素システムを理解することに加えて、迅速、簡便、網羅的な機能解析法が必要不可欠である。我々は、厳密な基質特異性を有するA-domainの酵素的性質を利用することにより、テーラーメイドなA-domainのラベル化技術を開発してきた2)-4)。本発表では、1) A-domain選択的ラベル化技術、2) 迅速かつ網羅的機能解析技術について報告する。

    Figure 1. NRPS A-domainの触媒機構。

    【A-domain選択的ラベル化技術の開発】

    放線菌から単離された核酸系抗生物質ascamycinの脱クロロ誘導体5′-O-N-(L-alanyl)sulfamoyl adenosine (L-Ala-AMS) が、アラニルtRNA合成酵素によるアミノアシル化反応の高反応性中間体であるL-Ala-adenosine monophosphate (AMP)の生物学的等価体であることが示された (Figure 2a)5)。その後、aminoacyl-AMSは、種々のtRNA合成酵素のX線結晶構造解析を行うためのリガンド分子として用いられてきた6)。そのため、aminoacyl-AMS はtRNA合成酵素と同様の反応を触媒するNRPS A-domainのリガンドに応用できると期待した。さらに、種々のアミノ酸に入れ替えることによって、個々のA-domainに対する選択性を付与できると期待した。そこで、1. aminoacyl-AMSリガンド、2. 近傍の標的タンパク質と光化学反応により共有結合形成可能なベンゾフェノン、3. クリックケミストリーにより、蛍光標識あるいはビオチン官能基を導入可能なアルキンからなるA-domain選択的ラベル化剤 (aminoacyl-AMS-BPyne) の設計を行った (Figure 2a)。また、多くのA-domainはアデノシン骨格の2′-OH基への化学修飾に寛容であるため7)、2′-OH基にBPyneリンカーを導入した。続いて、L-Phe、L-Pro、L-Val、L-Orn、L-Leuをリガンド部に有するA-domaimラベル化剤の合成を行った。環状ペプチド性抗生物質であるgramicidin Sは、Aneurinibacillus migulanusにより産生される。そこで、内在性gramicidin S NRPS [GrsA (127 kDa): APhe-T-epimerase (E)、GrsB (508 kDa): C-AP

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  • 工藤 史貴, 角田 毅, 高島 惇, 宮永 顕正, 江口 正
    p. Oral39-
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/10/01
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     Aristeromycin(Fig. 1)は、1968年にKusakaらによって放線菌Streptomyces citricolor培養液から単離されたヌクレオシド系抗生物質の一つであり1、リボース部位が炭素五員環に置換されていることが構造上の特徴である。類縁天然物としてneplanocin Aが知られており、aristeromycin が有する抗ウィルス活性に加えて、抗腫瘍性を有することから注目を浴び、その構造活性相関研究が盛んに行われてきた。

     Aristeromycinとneplanocin Aの生合成研究に関しては、Parry らによる取り込み実験により、グルコースの2位と6位に由来する炭素間での結合形成反応により炭素五員環構造が形成されることが明らかにされている(Fig. 1)2。一次代謝系における糖質を基質とする炭素環形成酵素としては、myo-イノシトール-1-リン酸合成酵素(MIPS)と3-デヒドロキナ酸合成酵素(DHQS)が知られており、それらと類似の反応機構で環形成されると推定された。すなわち、MIPSと類似する反応では、フルクトース-6-リン酸(F6P)の5位がNAD(P)+により酸化され6位の水素原子が引き抜かれることでC5-C6エノラートが生じ、C6炭素とC2カルボニル炭素間でのアルドール型縮合反応により炭素環が形成される(Fig. 2A)。酸化されたC5カルボニル基は生じたNAD(P)Hにより還元される。DHQSと類似する反応では、F6PのC4位がNAD(P)+により酸化され6位リン酸基のβ脱離によりC5-C6エノラートが生じ、先と同様なアルドール型縮合反応により炭素環が形成される(Fig. 2B)。酸化されたC4カルボニル基は生じたNAD(P)Hにより還元される。またTurnerらによる生合成遮断変異株を用いた研究から、Fig. 1に示したサイクリトールが生合成中間体であること及びアデニン環とサイクリトール中間体が直接結合してneplanocin Aが形成されることが示唆されている3-5

     本研究では、この興味深いaristeromycinの生合成機構を酵素反応レベルで解明することを目的とし、まず生合成遺伝子クラスターの特定を試みた。Aristeromycin生産菌Streptomyces citricolorのゲノム解析の結果、DHQS遺伝子は1つしか見出すことは出来なかったが、MIPS遺伝子に関しては、一次代謝におけるMIPS遺伝子1つに加えて、それとは低い相同性を示すMIPSタイプ遺伝子を1つ見出すことができた。このMIPSタイプの酵素遺伝子は二次代謝遺伝子と考えられ、おそらくaristeromycin生合成における炭素五員環形成に関与すると推定した。そこで、この遺伝子を含む領域を、生産菌ゲノムDNAからコスミドベクターを用いてクローニングし、異種放線菌Streptomyces albusにて発現させた。その結果、aristeromycinの異種菌生産が確認され、ユニークなMIPSタイプ遺伝子(ari2)を含む31個の読み枠からなる遺伝子クラスターがaristeromycin生合成に関与することが明らかとなった6

     次にMIPSタイプのAri2が、Fig. 2Aで推定したような炭素環形成反応を触媒するか検証

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  • 寺本 和矢, 目黒 亜由子, 本吉 祐大, 佐藤 玄, 増本 優衣, 手塚 則亨, 坂井 健太, 上田 翔太, 遠塚 悠輔, 安藤 祐美, ...
    p. Oral40-
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/10/01
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     テルペノイドは最大の天然有機化合物群であり,多様な構造と生理活性を有することから医薬品だけでなく添加物や工業原料として様々な場面で利用されている。その生合成は,基質であるイソプレニル二リン酸の合成,テルペン環化酵素による環状骨格の形成,水酸化酵素や糖転移酵素等による修飾の各段階からなる。なかでもテルペン環化酵素が担う骨格形成反応は,単独の酵素による分子内カチオン転位反応によって複雑な多環式化合物を立体選択的に一挙に作り出すことから,テルペノイドにおける構造多様性を生み出す鍵反応であるとともに,その反応は厳密な制御下で進行すると推察される。我々はこのテルペン環化酵素の反応制御機構を明らかにすることで,複雑な骨格構造を有するテルペン化合物を合成する新たな生体触媒を開発できることを期待している。

     本討論会で我々は,放線菌の生産するジテルペン化合物cyclooctatin1 の各生合成段階を担う酵素の同定と機能解析に関して報告する。特に環状骨格形成段階を担うジテルペン環化酵素CotB2の反応機構について,安定同位体で標識した各種基質を用いたin vivoとin vitro実験により反応機構の解析を行うとともに,量子化学計算を用いて実験的には捕捉が困難なカチオン中間体や遷移状態の知見を得ることで,環状骨格構造の変化を伴わない炭素−炭素結合の組換えという特異な環化反応過程の詳細を明らかにした。

    1, cyclooctatin生合成遺伝子クラスターの同定

     放線菌Streptomyces melanosporofaciens MI614-43F2が生産するcyclooctatinは,lysophospholipidを加水分解するlysophospholipaseの阻害活性を示し,抗炎症作用を示すリード化合物のスクリーニングにより同定された1。我々は,研究開始当時,二リン酸基の脱離により反応を開始するclass Iジテルペン環化酵素に関する細菌からの報告例がなかったこと,またcyclooctatinが5-8-5員環の縮合した特徴的な三環式骨格を有することからその詳細な生合成機構の解明を目指した。

     まず我々はS. melanosporofaciens MI612-43F2ゲノムのコスミドライブラリーを作製し,その中からGGDP合成酵素 (CotB1),ジテルペン環化酵素 (CotB2),2つのシトクロムP450 (CotB3, CotB4)をコードするcyclooctatin生合成遺伝子クラスターを見出した (Fig. 1a)。このクラスターのクローニングと遺伝子破壊実験から,CotB1がdimethylallyl diphosphate (DMAPP) 1分子とisopentenyl diphosphate (IPP) 3分子から炭素数20のgeranylgeranyl diphosphate (GGDP) (1)を合成した後に,CotB2が三環式生合成中間体cyclooctat-9-en-7-ol (2)を合成し,続いてCotB3, CotB4の順に5位, 18位に水酸基を導入することでcyclooctatinが生合成されることを明らかにした (Fig. 1b)2

    2, [U-13C6]glucoseを用いたin vivo取り込み実験

     cyclooctatin生合成においてCotB2は,不斉点を持たない非環状化合物GGDPを基質として6つの不斉点を持ち三環が縮合した (2R,3R,6R,7S,11R,14R)-cyclooctat-9-en-

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  • 横山 健一, ホーヴァー ブラッドリー, トンサット ナム, シューマッカー マリア
    p. Oral41-
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/10/01
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     モリブデン補酵素(Moco、図1)はヒトを含めたほぼすべての生物種に保存されている金属補酵素で、キサンチン酸化酵素などの酸化還元酵素の活性に必須である1,2。モリブデン補酵素は使用される細胞内で生合成されなければならず、その生合成経路の異常は様々な疾患に関係する。ヒトにおいてモリブデン補酵素は、核酸や硫黄含有分子の代謝に必須であり、モリブデン補酵素生合成遺伝子に異常を有すると、モリブデン補酵素欠損症という致死性の疾患を引き起こす1。また、近年では病原性細菌が宿主体内で生育する際にモリブデン補酵素が必須であることがわかり、感染症との関係も注目されている3-5。このように重要な生合成経路にも関わらず、骨格構築に関わる酵素の機能は不明な点が多い。

     モリブデン補酵素は、すべての生物種においてグアノシン三リン酸(GTP)から生合成されることが知られている(図1)。特に、基本骨格であるピラノプテリン環はGTPがサイクリックピラノプテリン一リン酸(cPMP)へと変換される過程で構築される。 この変換反応は、グアニン8位の炭素がリボース2´位と3´位の間へと挿入されるユニークなもので6、二つのタンパク質、MoaAとMoaCが関わっていることが知られていた7,8。MoaAは、S-アデノシルメチオニン(SAM)を補酵素としてラジカル反応を触媒するラジカルSAM酵素と相同性を示す一方で、MoaCは既知の酵素と相同性を示さない。そのため、一般的にはMoaAがラジカル反応によって GTPからピラノプテリン構造を生成し、MoaCは転位反応には関わらないと考えられていた2(図2a)。しかし、MoaAの反応生成物は同定されたことがなく、MoaAが触媒する反応についても不明な点が多く残されていた。今回、我々はMoaA生成物の単離構造決定に成功し、それを足がかりにMoaA、MoaCの機能解明に成功した。予想外にも、我々の結果は従来の説とは異なり、MoaCがピラノプテリン構造を構築する酵素であることを明らかにした(図2b)。すなわち本発見は本生合成経路を改定する重要なものである。本討論会では、このような結論に至った生化学的、構造生物学的証拠、及び酵素の反応機構も含めて包括的に議論する。

    1. MoaA生成物の解明

     以前の研究から、MoaAとMoaC両者が存在する条件で、GTPがcPMPへと変換されることが知られていた8。しかし、MoaAとMoaCそれぞれ単独での触媒能に関しては知られていなかった。そこで我々はまず、Staphylococcus aureus由来のMoaAとMoaCをそれぞれ大腸菌で発現、精製し、様々な条件下で活性測定を行った。その結果、MoaAとGTPの反応をMoaC非存在下で行った場合に、ごく微量(MoaAに比べて等量以下)の低分子生成物を生じることがわかった。その低分子生成物は強酸性条件下で加水分解した後、塩基性条件下ブタン-2,3-ジオンを作用させるとジメチルプテリン(DMPT)へと変換されることから(図3a)、6-hydroxy-2,4,5- triaminopyrimidin部分構造を有することが考えられた。さらに、この化合物をMoaCと反応させるとcPMPが生成した(図3b)。このことから、本反応はMoaAがGTPを中間体へと変換し、その中間体をMoaCがcPMPへと変換すると推測でき

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  • 土屋 成輝, 長 由扶子, 吉岡 廉平, 美野輪 高之, 此木 敬一, 長澤 和夫, 大島 泰克, 山下 まり
    p. Oral42-
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/10/01
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    [背景]

    サキシトキシン(saxitoxin, STX, 1)とその類縁体は麻痺性貝毒(paralytic shellfish toxins, PSTs)と呼ばれ、海産渦鞭毛藻や淡水産藍藻により生産されることが知られている1-2。食物連鎖により二枚貝に蓄積され、死亡率の高い食中毒を引き起こす。Shimizuら3は、渦鞭毛藻Gonyaulax tamarensis (Alexandrium tamarense)や藍藻Aphanizomenon flos-aquaeを使った、13C、15N標識アミノ酸、酢酸の取り込み実験を行った。その結果、酢酸、Arginine、S-adenosylmethionine (SAM)がSTX骨格構造に必須であることを明らかにし、初めて生合成経路を提唱した(Figure 1)。その後、Kellmannら4は藍藻Cylindrospermopsis raciborskii T3のゲノム中からSTX生合成遺伝子クラスターを発見した。さらに、他の藍藻(Anabaena circinalis, Lyngbya wollei)や渦鞭毛藻(A. fundyense, A. minutum)のゲノム中にも類似の遺伝子が存在することも明らかになり5-6、Shimizuらとは異なる生合成経路を提唱した (Figure 1)。しかし、いずれの経路においても、生合成中間体の同定は不十分であり、化学的な実証はなされていなかった。

    我々は、これまでに推定生合成中間体Int-A’ (6), Int-C’2 (12)を合成し、麻痺性貝毒生産藍藻A. circinalis (TA04)、渦鞭毛藻A. tamarense (Axat-2)の細胞内に存在することを報告した7-8

    本研究では、Int-C’2 (12)以降の経路を明らかにすることを目指し、Int-A’ (6)、Int-C’2 (12)、及び新たな関連化合物Cyclic-C’ (13)の安定同位体標識体を合成して、藍藻A. circinalis (TA04)を用いた取り込み実験を行なった。その結果より、遺伝子配列を基に推定された初期の生合成経路を実証し、中期においては、新規生合成中間体11-hydroxy Int-C’2 (20)の存在や、シャント経路を発見したので、報告する。

    1. 推定生合成中間体Int-A’ (6), Int-C’2 (12), Cyclic-C’ (13)の標識体合成9

    推定生合成中間体6, 12が、麻痺性貝毒の真の前駆体であることを示すため、それぞれ安定同位体(15N)標識体を合成した。[2,5-15N2]l-ornithine(14’)を出発物質として、既知の方法10に従い選択的にグアニジノ化を行い、エチルケトンに変換した後、Boc基を脱保護し、[15N2]Int-A’ (6’)を得た。[15N2]Int-C’2 (12’)も、[15N2]l-ornithine (14’)から合成した。三環性の[15N2]Cyclic-C’ (13’)11(後述)は、Pd/C存在下での環化反応により[15N2]Int-C’2 (12’)から得た(Scheme 1)。

    2. Cyclic-C’ (13)の同定

    Int-C’2 (12)を化学合成する過程で、エチルケトン17のCbz基をPd/C, H2で脱保護すると、Int-C’2 (12)とともに三環性の副生成物Cyclic-C’ (13)が得られた(scheme 2)。一方、エチルケトン18をTFAで脱保護した際には、目的のInt-C’2 (12)のみが得られた。Cyclic-C’ (13)を生成する反応条件を確認すると、Int-C’2 (12)を塩基性、Pd/C存在下、空気中で撹拌することで、定量的に環化が進行して

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  • 安保 港平, 小泉 絵梨, 吉田 圭佑, 小椋 章弘, 高尾 賢一
    p. Poster1-
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/10/01
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    グッチフェロンA (1)は、1992年にBoydらによってオトギリソウ科の植物であるSymphonia globuliferaおよびGarcinia livingstoneiより単離、構造決定された、多環状ポリプレニル化アシルフロログルシノール(PPAP)類に属する天然有機化合物である)。その構造上の特徴としては、高度に官能基化されたビシクロ[3.3.1]ノナン-2,4,9-トリオン骨格、および3つの不斉四級炭素を有していることが挙げられる。生物学的性質としては、抗HIV活性)や抗マラリア原虫活性といった多様な生物活性を示すことが報告されている。その複雑な構造のため1の全合成は困難であったものの、2014年にPlietkerらによって1のラセミ体での全合成が報告された)。私たちは、独自に開発した不斉Claisen転位反応を用いて)、いまだ達成されていない1の不斉全合成を目指し、研究を行っている。

    標的分子1の逆合成解析をScheme 1に示す。1は二環性化合物Aより誘導できるものとし、AはジケトエステルBのDieckmann縮合により合成できると考えた。Bはシクロヘキサノン誘導体Cより立体選択的な官能基導入を含む数工程の誘導を経て得られるものとし、CはジエステルDに対するDieckmann縮合を行うことで合成できると考えた。Dの持つ二連続不斉中心は、不斉補助基を用いた立体選択的Claisen転位反応によりFより構築することとした。

    まず、不斉Claisen 転位反応を用いて、不斉四級炭素を含む二連続不斉中心の構築を行った(Scheme 2)。不斉補助基であるカンファースルタムを装着したプロピオル酸誘導体2に対し、ゲラニオールから誘導したアリルアルコール3をオキシMichael付加することにより、Claisen転位反応基質4を得た。得られた4をトルエン溶媒中加熱するとClaisen転位反応が進行し、望みの立体化学を有するメジャー体5-aを収率86%、マイナー体5-bを収率14%で得た。

    続いて、得られたClaisen転位体5-aよりトリオール10への誘導を行った(Scheme 3)。安定イリドを用いたWittig反応を施し、不飽和エステル6を得た。得られた6に対してDIBAL-H還元により不斉補助基の除去とエステルの還元を一挙に行い、アルデヒド7を得、再度Wittig反応を行うことでトリエン8を合成した。8に対しメチルリチウムによる1,2-付加を行いジオール9とし、続いて官能基選択的なヒドロホウ素化-酸化反応によりトリオール10へと誘導した。

    次に、重要中間体となるシクロヘキサノン誘導体17の合成を行った(Scheme 4)。トリオール10に対して酸化白金を触媒として接触水素添加を行い、2つのオレフィンを飽和し11を得た。続いてTEMPO酸化によりジカルボン酸12とした後、メチルエステル化を行うことでジエステル13を合成した。得られた13に対して酸触媒としてAmberlyst 15を用いてオレフィンを再生し、化合物14を得た。14に対しDieckmann縮合を行ったところ、位置選択的に環化反応が進行し、環化体15を高収率で得ることができた。そして、C-アリル化およびO-アリル化を一挙に行い、Claisen転位反応基質16を合成した。なお、16の立体化学の決定は行っていないが、立体電子効果により求電子剤がアキシアル位から近づき、

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  • 田中 直伸, 矢野 優希, 大屋 厚, 小林 淳一, 柏田 良樹
    p. Poster10-
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/10/01
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     オトギリソウ科植物に含有されるメロテルペンや、ベンゾフェノン誘導体を含むアシルフロログルシノール誘導体は、特異な生物活性や化学構造を有することから、医薬リードならびに全合成研究のターゲットとして注目されている。我々の研究グループは、オトギリソウ科植物に含まれる成分の探索研究を行っており、これまでに、Hypericum属の植物から種々のメロテルペンやアシルフロログルシノール誘導体を単離・報告している1)。この研究の一環として、徳島県産Hypericum patulumならびに北海道産Triadenum japonicumの抽出エキスについて、詳細な成分探索を行った。その結果、8種の新規ベンゾフェノン誘導体1–8を単離したので、それらの構造と生物活性について報告する。

    1. 抽出・分離

    徳島県で採集したH. patulum の地上部をMeOHで抽出後、抽出物をn-hexaneと水で分配した。n-Hexane可溶部を各種クロマトグラフィーで繰り返し分離し、新規ベンゾフェノン誘導体hypatulin A (1) および B (2) を単離した (Chart 1)。

    Chart 1. Structures of hypatulins A (1) and B (2) from Hypericum patulum, and (–)-nemorosonol (3) and trijapins A–E (4–8) from Triadenum japonicum.

     北海道で採集したT. japonicum地上部のMeOH抽出エキスについても同様に成分を探索し、新規ベンゾフェノン誘導体 (–)-nemorosonol (3) ならびにtrijapin A–E (4–8) を単離した。

    2. Hypatulin A (1) およびB (2) の構造

     Hypatulin A (1) は光学活性な無色非結晶性の固体として単離され、HRESIMSより分子式C32H40O4が明らかになった。1D NMRスペクトルの解析から、1は3個のプレニル基と1個のメチル基、ならびにベンゾイル基を有する化合物であると示唆された (Table 1)。1H-1H COSYとHMBCスペクトルを詳細に解析し、三環性のoctahydro-1,5-methanopentalene部分の構造と、前述の置換基の結合位置を明らかにした (Fig. 1A)。3位水酸基の存在は、重水素置換シフトから支持された。NOESYスペクトルを解析し、6位および8位の相対配置をFig. 1Bに示した配置と帰属した。

     Hypatulin A (1) の絶対立体配置を、ECDスペクトルの実測値と計算値の比較により明らかにした。すなわち、2種のエナンチオマーのECDスペクトルをTDDFT法により計算し、実測値と比較したところ (Fig. 2)、1S,3R,4R,6R,7R,8S体のスペクトルが実測値と類似していたので、1の絶対立体配置をChart 1に示した配置と帰属した。

     Hypatulin B (2) の分子式はC33H44O5であり、1D NMRスペクトルの解析から1と同様の置換基をもつ化合物であることが示唆された。各種2D NMRスペクトルの解析 (Fig. 3) から、2の構造をbicyclo[3.2.1]octane部分に3個のプレニル基、1個のメチル基、1個の水酸基、および1個のカルボン酸メチルが結合した構造と推定した。Hypatulin A (1) をメタノール中4-ジメチルアミノピリジンで処理し、得られた1aとhypatulin B (2) の1H NMR スペクトルと比旋光度が一致したことから、2の絶対立体配置をChart 1に示した配置と帰属した。

    Table 1. 1D NMR data for hypatulins A (1) and B (2) in CD3OD.

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  • 阿部 匠, 伊藤 智貴, 田口 諒, 石倉 稔
    p. Poster11-
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/10/01
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    1. 序論

     近年、インドロ[2,1-b]キナゾリンを基本骨格とするアルカロイド群がPhaius mishmensis (Orchidaceae)1)、Isatis indigotica (Cruciferae)2)、や Cephalantheropsis gracilis (Orchidaceae) 3)から相次いで見出されている (図1)。Phaitanthrin D (6)とラセミ体として単離されたcruciferane (8)を除き、絶対立体配置はX線結晶構造解析により決定された。また2014年、中国伝統薬物成分として知られるtryptanthrin (1a)の8位メチル体1bに、胚性腫瘍 (Embryonal Carcinoma) 細胞から心筋様細胞 (cardiomyocyte-like cell)への分化促進作用を有することが報告された4)。インドロ[2,1-b]キナゾリン骨格を有する特異な構造とともに多彩な生物活性を示すことから、新規合成法の開発や生物活性について大きな関心を集めている5)

     これらインドロ[2,1-b]キナゾリンアルカロイド1-9の合成では、キナゾリン骨格の構築が鍵となる。今回我々は、インドロ[2,1-b]キナゾリン簡便合成法の開発とその応用性の検討を行い、6を除くインドロ[2,1-b]キナゾリンアルカロイドの全合成を達成した。本討論会では合成の経緯と詳細について報告する。

    2.合成計画

     我々の合成計画をScheme 1に示す。まず、インドール-3-カルバルデヒド (10a) および スカトール (11a)の酸化反応により生じるホルメート12aの酸化的二量化反応によるtryptanthrin (1a) のワンポット合成を計画した (式1)。Phaitanthrin A (3), B (4)、cruciferane (8)とcephalanthrin A (9) は 合成した1aから変換することとした。また、イサト酸無水物 (13a)と10bの酸化的縮合によりインドロ[2,1-b]キナゾリン骨格が構築出来れば、phaitanthrin C (5) へ変換できると考えた (式2)。

    Phaitanthrin E (7) はインドールカルボン酸メチルエステル (15)とイサト酸無水物 (13a)の縮合/C-Hアミノ化反応によりワンポットで合成できると期待した (式3)。

     これら合成計画の特徴として、1) ワンポットもしくは短工程であること、2) 出発原料が安価に市販されているため各種誘導体合成に適していることが挙げられる。

    3.酸化的二量化反応によるインドロキナゾリン1の合成

     これまでに我々は、複素環アルデヒドのDakin酸化によるキノンのワンポット構築法を鍵反応の一つとする抗腫瘍性抗生物質calothrixin AとBの全合成を報告している6)。全合成の検討途上において、Dakin酸化のモデル基質としてインドール-3-カルバルデヒド (10a) を用い検討したところ、偶然にもtryptanthrin (1a) がワンポット反応操作で得られた (スキーム 2)。この発見を契機として、1aの簡便合成法の開発研究に着手した。まず、アルデヒド10aを基質として用いDakin酸化を検討した (表1)。酸化剤としてmCPBAを用いた場合、収率5%で1aを得た。過酸化水素を用いた反応において目的物を得ることはできなかったが、触媒量の(PhSe)2を加えると収率が向上した。さらに検討した結果、過酸化尿素を用いると収率55%で1aが得られることを見出した。さらに、置換基を持つアルデヒド10のDakin酸化を検討した結果、種々の置換基R1を持つ1を得た7)

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  • 金 尚永, 長嶋 紘紗子, 田中 直伸, 高石 喜久, 柏田 良樹, 小林 淳一, 高上馬 希重
    p. Poster12-
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/10/01
    会議録・要旨集 フリー HTML

    センリョウ科 (Chloranthaceae) は5属、約70種の植物から構成され、そのうちChloranthus属植物はアジアの熱帯地方及び東アジアの温帯に十数種分布している。Chloranthus属植物に含有されるlindenane型セスキテルペンの単量体や二量体は、細胞毒性1)、細胞接着阻害活性2)、K+ channel阻害活性3,4)、チロシナーゼ阻害活性5)などの生物活性を示すことが報告されおり、本属植物は医薬シードの探索対象として大変興味深い植物群である。

    植物由来の特異な化学構造や生物活性を有する新規天然物の探索研究の一環として、我々はこれまでにC. spicatus根部より10種のlindenane型セスキテルペン二量体を報告している6-8)。今回、ヒトリシズカ (C. japonicus) に興味を持ち、成分探索を行った。ヒトリシズカは、中国では神経痛、リウマチ、痛風などの改善に用いられるが、北海道ではアイヌ民族が「イネハム」と称し、胃薬として利用している。本植物の詳細な成分探索の結果、4種の新規テルペノイド (1–4) を単離し、その構造を明らかにしたので報告する。

    抽出・分離

     北海道様似郡様似町で採集したヒトリシズカ地上部を乾燥後、MeOHで抽出し、得られたエキスをEtOAcと水で分配した。このうちEtOAc可溶部を各種クロマトグラフィーにより繰り返し分離・精製し、新規C25テルペノイドhitorin A–C (1–3) と新規C22テルペノイドhitorin D (4) を単離した。

    Figure 1. Structures of hitorins A–D (1–4).

    Hitorin A (1) の構造

     Hitorin A (1) は無色非結晶性の個体として得られ、その分子式を高分解能ESIMSよりC25H36O6と帰属した。IRスペクトルでは水酸基 (3520 cm-1) とカルボニル基 (1794 and 1704 cm-1) に由来する吸収が観測された。1D NMRスペクトルでは2個のカルボニル基、2個のアセタール炭素、1個のオキシメチレン、1個の1,1,2-三置換シクロプロパン環、1個のイソプロピル基に由来するシグナルが観測さ

    Figure 2. (A) Selected 2D NMR correlations for two partial structures (units A and B) of hitorin A (1), and (B) the gross structure of 1.

    れた (Table 1)。1H-1H COSYとHMBCスペクトルの解析から、4,5-seco-eudesmane型セスキテルペン部分 (unit A) とthujane型モノテルペン部分 (unit B) の存在が示唆された (Figure 2A)。1794 cm-1のIR吸収と、D-HMBCスペクトルにおける5-OHとC-11間の相関から、unit Aにg-ブチロラクトン環とテトラヒドロフラン環が存在することが示唆された (Figure 2A)。さらに、H2-10'とC-7及びC-8間のHMBC相関から、1をunit Aとunit Bがテトラヒドロフラン環を形成して結合した平面構造と帰属した (Figure 2B)。ROESYスペクトルの解析により、1の相対配置をFigure 3Aに示した配置と帰属した。

    Hitorin B (2) の構造

     Hitorin B (2) の分子式は、HRESIMSより1と同一のC25H36O6であることが示唆された。2の1D NMRは、1のそれらと類似しており (

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  • 山岡 庸介, 谷口 麻里枝, 早阪 真奈美, 山田 健一, 高須 清誠
    p. Poster13-
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/10/01
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    チロホリン (1) は5環性のフェナントロインドリジジンアルカロイドのひとつで、60を超える類縁体が知られている1(Figure 1)。また、類縁天然物としてE環がピペリジン環となったクリプトプレウリン (2) などのフェナントロキノリジジンアルカロイドも知られている。これらは抗腫瘍活性や抗ウイルス活性をはじめとする様々な生理活性を示すことから、全合成や構造活性相関研究が盛んに行われている。しかしその中枢神経毒性から未だ臨床応用には至っておらず、フェナントロインドリジジン骨格に対し官能基修飾を施すのみではなく、これまでにない独創的な構造変換が求められている。

    我々は最近、多環縮環シクロブタノールの新規合成法ならびに多環芳香族化合物への新規変換法を見出した。本研究では、これらの独自の反応を基盤としてチロホリン類の新たな合成法を確立するとともに、芳香環骨格自体の変換による新たな構造活性相関の知見を得ることを目的とした。

    塩基による分子内 (2 + 2) 環化付加を鍵とする多環芳香族炭化水素の合成2

    (3Z,5Z)-オクタ-1,3,5,7-テトラエンは、連続的に8p- および4p-電子環状反応を起こしビシクロ[4.2.0]オクタ-2,4-ジエンを与えることが知られている。我々はシクロブタン合成法開発の研究の過程で、2,2’位に2つのアルケニル基を有するビアリール化合物について連続的8p-6p電子環状反応が進行すればビスベンゾ縮環シクロブタンが得られると企画した(Figure 2)。我々は、鈴木‐宮浦カップリングにより容易に調製できるビアリール化合物3に化学量論量のKHMDSを作用させエノラートを発生させたところ、速やかに分子内の不活性アルケン部と反応し2つのC-C結合が形成された多環性シクロブタノール4が生じることを発見した(Scheme 1)。また、触媒回転数(TON)は10程度であるものの、本反応は触媒量の塩基存在下でも反応が進行した。3から4を与える反応は、エノラート部位と不活性アルケンとの分子内での形式的 (2 + 2) 環化付加ととらえることができる。当初、3から4を与える反応機構はFigure 2に示すように連続的電子環状反応での進行を想定していたが、反応前後の基質と生成物の立体化学の収支を詳細に検討した結果、段階的にアニオンが求核付加する連続反応であることを明らかにした3

    得られたシクロブタノール4を酸性条件で処理したところ4、転位反応が進行し高収率で5が得られた(Scheme 2)。なお、本法では原料となるビアリール化合物を設計することで、多環芳香族炭化水素の置換・縮環様式の制御が可能であることが特徴である。また、R1側鎖の末端に求核部位をもつシクロブタノール基質を酸性条件に付した場合、分子内環化が進行することも明らかとした。

    チロホリンの不斉全合成5

    前述の反応を基盤に、多様な誘導体の合成に適用できうるチロホリン類の合成経路を計画した。すなわち、7の (2 + 2) 環化付加で

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  • 齋藤 義紀, 谷口 瑞穂, 佐々木 陽子, 三浦 唯, 岡本 育子, 中島 勝幸, 大崎 愛弓, 永野 肇, 八百板 康範, Gong Xu ...
    p. Poster2-
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/10/01
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     中国横断山脈地域は世界有数の植物種の宝庫として知られており,現在も進化・種分化が進行中であると言われている.我々は,本地域およびその近隣地域に生息するキク科Ligularia属植物を題材とし,化学成分や塩基配列の地域差・個体差に関する調査を行っている.これまでに,本討論会などにおいて,様々なレベルの種内多様性が存在することを報告してきた1,2.多様化の実態を属レベルで記述するためには,できるだけ多くの種について調査を行う必要がある.しかし,調査の過程で必ずしも所望の植物が入手できるわけではなく,自ずと分布の調査も兼ねている.我々はこれまでに雲南省から四川省,さらに青海省や甘粛省の一部,および重慶市まで調査を行って多くの試料を得,それらの分析を行ってきた.そのデータから,主要種の多くはエレモフィラン型セスキテルペンを産し,中でもフラノエレモフィラン類を生産する種(あるいは種内グループ)が特に多く,フラン生産型は非フラン生産型(eremophilan-8-one生産型)と比較して生態的に有利であるとの仮説を提唱している3

     L. brassicoidesは四川省西部,L. liatroidesは四川省から青海省およびチベット自治区の高原地帯に生育する種で,互いに形態が似通っている.これらは同地域に生育するL. virgaureaなどの主要種と比較すると少ないものの,2007年,2009年,および2011年の調査によってL. brassicoidesを2試料,L. liatroidesを3試料,いずれか不明瞭なものを3試料得た(Fig. 1およびTable 1).今回は,それらの化学成分の単離構造決定,LCMS分析,およびDNA解析を行ったので,その結果について報告する.

    Fig.1. Locations where samples of L. brassicoides and L. liatroides were collected.

        Table 1. List of L. brassicoidesand L. liatroides samples.

    【2007年採集L. brassicoidesの成分】

    四川省南西部にて採集した試料1および2の乾燥根をエタノールで抽出し,成分分析を行った4.合計8種(1-8)の化合物を単離構造決定した.そのうち6種(1-6)が新規であった.これらセスキテルペノイドの特徴は化合物3以外はeremophil-1(10)-ene類およびその類縁体であり,6位に置換したエステルは化合物4以外はhydroxymethylacrylateであった.

    【2009年採集L. liatroidesの成分】

    四川省中北部にて採集した試料3および4の根の

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  • 永谷 幸太郎, 上森 理弘, 星野 雄之介, 南 篤志, 中田 雅久
    p. Poster3-
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/10/01
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    【背景・目的】 

    cotylenin A (1)は、植物成長調整物質としてCladosporium属の代謝産物から単離されたジテルペン配糖体である1。1は前骨髄性白血病細胞に対して分化誘導活性を示し、更にINF-α存在下、種々の固形がん細胞に対してタンパク質間相互作用に基づく腫瘍増殖抑制活性を示す2。このため1は新規抗がん剤として注目されているが、1の生産菌の継代培養が途絶えているため、有機合成による供給が望まれている。しかし、これまでに1のアグリコンの全合成については報告されているものの3、1の全合成は報告がない。そこで、1の構造と生物活性、また量的供給に対する興味から1の不斉全合成を計画した。

    【逆合成解析】 

    cotylenin A (1)の逆合成解析をScheme 1に示す。1はジアルデヒド2の分子内ピナコールカップリングによる八員炭素環の構築と、グリコシル化により得られるものとし、2はA環フラグメント3とC環フラグメント4のカップリング反応とその後の変換によって得られると考えた。また、3、4はそれぞれジアゾ体7、8の触媒的不斉分子内シクロプロパン化(CAIMCP) 4とシクロプロパンの開環反応を経由して合成できると考えた。α-ジアゾ-β-ケトスルホンのCAIMCPは1の持つ不斉中心を効率的に構築する上で有用であり、CAIMCPの生成物は再結晶により光学的に純粋にすることができ、各種官能基変換により多彩な化合物に変換可能であるため有用である。

    【A環フラグメントの合成】

    CAIMCPを経由するA環フラグメントの合成に着手した。市販化合物より数工程で合成したα-ジアゾ-β-ケトスルホン9を用いて鍵反応となるCAIMCPの検討を行った(Table 1)。その結果、スルホン上の置換基がメシチル基の場合、(E)体、(Z)体いずれの基質においてもTable 1に示したビスオキサゾリン配位子とCuClとNaBARFを用いることで、所望のシクロプロパン体10が高収率で高エナンチオ選択的に得られることを見出した。

    9-(E)、9- (Z)体からそれぞれ得たシクロプロパン体10-(E)、10-(Z)はDMSO中、NaCNを用いてシクロプロパンを開環させることにより単一の生成物として開環体11-(E)、11-(Z)へ変換することに成功した(Scheme 2)。得られた生成物11-(E)、11-(Z)はそれぞれ単結晶X線結晶構造解析によって絶対配置を確認した。その結果、10-(E)体から得た生成物11-(E)がcotylenin Aの持つ立体配置を有していることが分かった。得られた11-(E)より6工程の官能基変換によりcotylenin AのA環フラグメント3の合成を達成した(Scheme 3)。

           

    【C環フラグメントの合成】

    cotylenin AのC環フラグメント4の合成においてもCAIMCPを用いた(Scheme 4)。市販化合物より数工程で合成した8のCAIMCPにより高収率、高エナンチオ選択的にシクロプロパン体6を得ることができ、PhSKとの反応によりシクロプロパンの開環体12を得た。続いてヨウ化サマリウムを用いて脱スルホン化を行い、生じたサマリウムエノラートをホルマリン水溶液で処理すると、ワンポットで13を得ることができた。13から種々の官能基変換を経ることでC環フラグメント4の

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  • 橋本 勝, 廣瀬 あかね, 本村 優奈, 日下部 一晃, 上杉 祥太, 殿内 暁夫, 前多 隼人, 根平 達夫, 木村 賢一
    p. Poster4-
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/10/01
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    白神山地は1993年に登録されたUNESCO世界自然遺産として知られている。報告者らはこの地域の微生物を遺伝子資源ととらえ、有用二次代謝物の探索研究を展開、これまで複数の新規天然物を単離してきた。今回、弘前大学白神自然観察園で採取したDaedaleopsis tricolor(チャカイガラタケ)に寄生するTrichodermasp. 1212-03の培養液から新規ドリマン型ジテルペンであるネオマクロフォリン I-VI (1-6)、及びその生合成前駆体と考えられるプレマクロフォリン (7)を単離した1

    【単離と構造決定】

    Trichodermasp. 1212-03培養液の酢酸エチル抽出物をシリカゲルクロマトグラフィーなどを用いてこれら化合物を精製した。まず、ネオマクロフォリンI (1) の構造を解析した。ESIMSスペクトルはプロトン化した分子イオンをm/z477.2493に与えたことから分子式C26H36O8を推定、さらにNMR解析により3-位にアクシアル水酸基を有するドリマン誘導体であると決定した。H-9はH-5’との間に明確なNOEを与えたが、分子モデリングの結果、(9S*,5’R*)-異性体では、安定配座(図1)においてH‑9/H‑5’間距離は近く観測したNOEを説明できるが、その異性体の安定配座ではこれを説明出来ないことから、ドリマン環部とエポキシキノン環部との相対立体配置を決定した。

    側鎖のC-4”メチル基は19.51 ppmに観測された。複数の2,3-ジヒドロキシブタン酸エステルの文献値を調査したところ、threo-体の場合4-位メチル基は19.5 ppm付近に、erythro-体のそれは17.5 ppm付近に普遍的に現れることを見出し、threo-体と決定した。また、プロトン非デカップリング13Cスペクトル等より3JCH, 3JHH値(3JC-1”/H-3” = ca 1 Hz, 3JH-2”/H-3” = 2.3 H, 3JH-3”/C-4” = 2.0 Hz)を帰属したところ、図2のような関係を帰属し、先の相対配置に矛盾しないことを確認した。

    2では13C NMRカルボニルシグナルが1個減少した。NMRの解析により、2は1の4’-位アルコール体であると結論した。JH-4’/H’-5は0.9 Hzであり二面角H‑C4’‑C5’‑H90°が示唆された。分子モデリング等によりトランス配置と推定したが、シス異性体でも対応する二面角は約60°であり、観測したスピン結合を完全に否定できるものではなかった。最終的には後述するECDによる絶対配置の議論の中で確定した。3, 4はそれぞれ2, 1の2”-位についてのデオキシ体であることが判明した。側鎖3”-位水酸基の立体化学はメタノリシスにより3-ヒドロキシブタン酸メチルとした後、キラルGCにより標品と比較することにより絶対配置として(3”S)-配置を決定した。5, 6は1”-4”側鎖を持たないC7’アルコール体であることが判明した。さらに培養液を検索したところ、ドリマン部が環化していない7を単離し、これをプレマクロフォリンと命名した。このものでは、7’-位も酸化されておらずメチル基のままである。

    ドリマン骨格では両鏡像体の天然物が知られていることから、他のマクロフォリン類の報告などから一意的に決定す

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  • 下牧 克也, 草間 博之, 岩澤 伸治
    p. Poster5-
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/10/01
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    [概要]

     Integrifolin 1は1984年にAndryala integrifoliaから単離・構造決定されたguaianolide類であり[1]、培養ヒトがん細胞増殖阻害作用を示すことが報告されている[2]。構造的特徴として、ビシクロ[5.3.0]デカン骨格上に6つの不斉中心を有しており、また三カ所のexo-メチレン部位を持つ点が挙げられる。このようなexo-メチレン基を三カ所有するguaianolide類はいくつか単離報告例があるが、exo-メチレン基は酸・塩基性条件下で異性化しやすく、また特にα-メチレンラクトン部位はMichael受容体として反応性が高いため、これら類縁体の合成例は少ない[3]。Integrifolin 1もまた全合成の報告はなく、その合成においては、必要な官能基および立体化学を有するビシクロ[5.3.0]デカン骨格を効率よく合成すること、また三カ所のexo-メチレン基の導入が課題となる。

     一方、当研究室では鎖状のトリエンイン2に対し、触媒量のW(CO)6、NEt3存在下、トルエン溶液中で光照射することにより、立体選択的にビシクロ[5.3.0]デカン誘導体3が合成できることを報告している(Scheme 1)[4]。本環化反応は、アルキンの求電子的活性化を契機とし、シクロプロパン化反応、コープ転位、カルベン錯体の1,2水素移動によって環化体3が得られる。また反応は立体特異的に進行するため、シロキシジエン部位およびエンイン部位の幾何配置を適切に選択することで、望みの立体化学を有する環化体3を簡便に合成できる。そこで我々はこの環化反応を鍵反応としたintegrifolin 1の初の全合成を目的とし、以下に示す合成計画を立てた(Scheme 2)。

    [合成計画]

     環化前駆体として、エンイン末端にラクトン部位構築のためのヒドロキシエチル基、シロキシジエン末端に水酸基等価体であるシリル基を有する鎖状トリエンイン4を合成し、環化反応によって三カ所の不斉中心を持つビシクロ[5.3.0]デカン誘導体5を合成する。環化体5からintegrifolin 1の全合成を達成する上で以下の三つの変換が重要になると考えた。

    *現在の所属:学習院大理

    A. 10位メチル基の導入と8位シリル基の水酸基への変換

    B. ジエン部位の酸化による3,6位酸素官能基の導入

    C. 三カ所のexo-メチレン基の導入

    [ビシクロ[5.3.0]デカン誘導体の合成]

     環化前駆体であるトリエンイン11、およびその環化反応によるビシクロ[5.3.0]デカン誘導体12の合成を行った(Scheme 3)。出発原料として市販されている5-ヘキシン-1-オールを用い、常法に従いプロパルギルアルコール9を合成した。続いて、白金触媒であるKarstedt触媒を用いた末端アルキン部位のヒドロシリル化反応により、アルケニルシランへと変換した。TMS基の脱保護、アリルアルコール部位の酸化により不飽和ケトン10へと変換した後、薗頭カップリングによるエンイン部位の構築、不飽和ケトン部位のシリルエノールエーテル化を行うことで環化前駆体である鎖状のトリエンイン11を合成した。鍵反応である環化反応は、10 mol%のW(CO)6、1当量のNEt3

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