天然有機化合物討論会講演要旨集
Online ISSN : 2433-1856
第60回天然有機化合物討論会実行委員会
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18. α-ケト酸誘導体の有機光化学:低疎水性光反応性基の開発と新規反応形式の発見(口頭発表の部)
*太田 英介三瓶 悠臼井 一晃大沼 可奈越野 広雪長澤 和夫西山 繁平井 剛袖岡 幹子
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会議録・要旨集 オープンアクセス

p. 103-108-

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抄録

【背景・目的】 光照射により反応性活性種を生じる光反応性基を利用して、標的生体分子と生物活性分子との間に共有結合を形成する光親和性標識法は、天然物の標的探索において広く用いられる手法である1)(Figure 1)。本手法は、生物活性分子と標的分子の可逆的な相互作用を、アミノ酸残基非特異的に共有結合で捕捉でき、また生細胞中でも実施可能であることが特徴である。この際、天然物に光反応性基を導入した分子プローブを準備する必要がある。光反応基としては、反応性に優れた芳香族アジド1、芳香族ジアジリン2、ベンゾフェノン3などが汎用されており、多くの標的同定に寄与してきた。しかしこれらの疎水的で嵩高い光反応性基は、しばしば天然物自体の性質を変化させてしまい、本来標的としないタンパク質との非特異的な結合形成を誘発する。その結果、真の標的が非特異的に結合したタンパク質に埋もれてしまい、標的探索が困難になることもあった2)。そこで我々は、低疎水性でよりコンパクトな光反応性基を開発すれば、非特異的標識を軽減でき、(特に親水性の)天然物の標的同定研究に貢献できると考えた。 Figure 1. 光親和性標識の概略と代表的な光反応性基1-3 【α-ケトアミドの設計指針と光反応性基としての妥当性の検証】 α-ケトアミドの設計指針 我々は、ベンゾフェノン3のような繰り返し励起可能な性質と高い標識能力を持ち、かつコンパクトで疎水性の低い光反応基の開発を目指した。そこで、タンパク質に損傷を与えない350 nm以上の波長で励起可能で、一級アミンのアシル化によって容易に生物活性物質に連結できるα-ケトアミド4に着目した3)(Figure 2)。α-ケトアミド4は、3と同様の機構、すなわち光励起で生じるビラジカル様中間体6に、近傍のタンパク質のH原子が移動し、生じたラジカルが炭素ラジカル7と結合形成することで、光親和性標識が達成可能と考えた。しかし、α-ケトアミド4のケト基は求電子性が高く、光不活性なハイドレート5を生成する4)、もしくは非特異的に求核性アミノ酸残基とヘミアセタール、ヘミアミナールを形成し結合する可能性がある。またこれまでの光化学研究5)から、α-ケトアミドから生じるビラジカル様中間体6は短寿命であり、電子移動してzwitterion 9を生成し分子内環化、もしくは分解することが予想された。実際、これまでにα-ケトアミド4を光反応性基として利用

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