天然有機化合物討論会講演要旨集
Online ISSN : 2433-1856
第60回天然有機化合物討論会実行委員会
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21. 糸状菌マクロライド化合物のポストゲノム型天然物探索(口頭発表の部)
*森下 陽平伊藤 芽衣青木 優浜口 昌武張 恵平清水 公徳浅井 禎吾
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会議録・要旨集 オープンアクセス

p. 121-126-

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抄録

近年、ゲノム解読技術の進展にともない生物のゲノム情報が安価かつ短期間で入手できるようになると、遺伝子情報の蓄積が急激に増加するようになった。それにともない、二次代謝物とリンクしていない膨大な未利用生合成遺伝子の存在が明らかになってきた。これら膨大な未利用生合成遺伝子資源を天然物へと変換することが、21世紀、すなわちポストゲノム時代の天然物探索研究の大きな課題である。  糸状菌は、これまでに数多くの有用天然物を輩出してきた重要な微生物資源であり、また、ゲノム上には数十から100近くの二次代謝物生合成遺伝子クラスターが存在し、その大半が未利用遺伝子である。これらのことから、当研究室では、糸状菌を天然物探索における魅力的な遺伝子資源として着目し、糸状菌の未利用生合成遺伝子を活用するポストゲノム型天然物探索を実施している(図1)。ポストゲノム型天然物探索は、植物や昆虫から分離した糸状菌に対して、①次世代シーケンス解析によるドラフトゲノム情報の取得、②ゲノムマイニングによる標的二次代謝物生合成遺伝子クラスターの探索、③標的遺伝子クラスターの過剰発現ベクターの作製と麹菌への導入、④遺伝子導入麹菌の培養と単離•構造決定からなる。新規天然物が得られるかどうかはどのような生合成遺伝子クラスターを標的とするかが重要である。当研究室では、修飾酵素遺伝子の組み合わせや骨格形成遺伝子の新規性を指標に、新規天然物をコードすると予想される遺伝子クラスターを選択している。当研究室で志向するポストゲノム型天然物探索と従来の天然物探索では、これまで探索資源として扱われてきた糸状菌を遺伝子供与体として扱い、異種宿主 (本研究では麹菌) に天然物を生産させる点で大きく異なる。第59回天然有機化合物討論会では、糸状菌ジテルペノイド類を標的としたポストゲノム型天然物探索について報告した1。本研究では、糸状菌マクロライド天然物のポストゲノム型探索について報告する。

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© 2018 天然有機化合物討論会電子化委員会
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