主催: 第60回天然有機化合物討論会実行委員会
会議名: 第60回天然有機化合物討論会
開催地: 久留米シティプラザ
開催日: 2018/09/26 - 2018/09/28
p. 169-174-
【研究背景】 Oscillatoxin D (1) は海洋性シアノバクテリアより単離されたポリケチド系天然物である 1)。その構造は、プロテインキナーゼC(PKC)の強力な活性化剤として知られているaplysiatoxin (3)と類似しており、スピロエーテル骨格とβ-ケトエステルにβ-hydroxy- γ-lactoneが結合した非常にユニークなものである(Figure 1)。そして、その全合成は1995年に市原らによってのみ達成されている2)。Aplysiatoxinは強力な炎症作用、発がん促進作用を示すが、近年開発されたaplysiatoxinの構造単純化アナログは発がん促進作用をもたず強力ながん細胞増殖抑制活性を示すことで非常に注目を集めている 3)。一方で、oscillatoxin Dの生物活性はマウス白血病由来のL1210細胞に対して細胞毒性を示すことが合成論文中に単離したR. E. Mooreからの私信として記述されているだけで、その詳細はまったく分かっていない。しかし、oscillatoxin Dはaplysaitoxinが有するPKCへの結合に必要なジオリド構造をもっていないことから、PKC活性化によらない新たな細胞毒性発現メカニズムの発見が期待できる。そこで我々は、oscillatoxin Dとそのアナログの供給可能な合成法を開発し、生物活性の詳細を明らかにすることとした。本発表では、O-methyloscillatoxin Dの合成とその生物活性に関して報告する。 【合成計画】 Oscillatoxin Dを含むaplysiatoxin類は上記のように様々な生物活性を有する。そこで、我々は、oscillatoxin Dのみならずaplysiatoxin類を網羅的に合成できる以下のような合成計画を立てた(Scheme 1)。すなわち、aplysiatoxin類に共通する炭素骨格を含む中間体Aを設定し、この共通中間体Aから両化合物群を合成するというものである。Oscillatoxin Dの合成ではこの共通中間体Aからオキソニウムイオン(G)を生じさせ、続くβ-ケトエステルからの求核攻撃によりスピロエーテル骨格を構築できると考えた。共通中間体AはLeft Segment BとRight Segment Cのカップリング反応により合成する計画である。Left Segment Bは既