天理医学紀要
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症例報告
食餌性ヨード過剰摂取による甲状腺機能低下症とリフィーディング症候群を呈した42 歳女性の1 例
日和 良介佐田 竜一東 光久石丸 裕康八田 和大郡 義明
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2009 年 12 巻 1 号 p. 61-67

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抄録

症例は42歳女性で,8年前から摂食障害があり,特定の食物(キュウリ,キノコ,焼き海苔,コンニャク,大根)のみを摂取するという食習慣を持っていた.入院2か月前からやせと浮腫が増悪したため近医を受診した際に,肝機能異常と甲状腺機能低下症を指摘され当院総合内科へ紹介された.外来加療中,妄想のエピソードがあり精神科へ入院した.入院後は病院食を全量摂取し,妄想は軽快したが肝機能異常が増悪したため,総合内科へ転科した.リフィーディング症候群による臓器障害と考えられ,経口のリン補充を行って経過を観察したところ,肝機能異常は改善した.甲状腺機能低下症はノリ大量摂取によるヨード過剰が原因と思われ,海藻類の摂取を禁止して経過を観たところ,euthyroidとなった. リフィーディング症候群は,稀な病態ではないが,広く一般に知られていない.低栄養状態の患者を認識し,栄養補給の際に予防を行うこと,および早期にリフィーディング症候群の病態に気付き治療を開始することが重要である.本症例では高度肝機能障害がみられたが,リフィーディング症候群による肝機能障害と,脂肪性肝炎によるリン需要亢進が互いに病態を増悪させていた可能性が考えられる. ヨード過剰摂取では,ヨードの有機化が抑制される.健常人では通常この現象は一過性であるが,健常人の中に機能低下が続く例もある.海藻類の摂取量が多い我が国では,甲状腺機能低下症の鑑別に,ヨード過剰摂取を挙げる必要がある

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© 2009 公益財団法人 天理よろづ相談所 医学研究所
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