2009 年 12 巻 1 号 p. 68-74
上縦隔から頸部におよぶリンパ管腫に対し頸部切開のみのアプローチで摘出しえたので報告する.症例は28歳男性.健康診断時の胸部単純X線写真にて異常を指摘され当院を受診した.胸部造影CTにて大動脈弓下部レベルから甲状腺下極レベルにおよぶ約8 cm大の低吸収域を呈する腫瘤を認め,嚢胞状腫瘤と考えられた.胸腺嚢胞やリンパ管腫,甲状腺嚢胞などが鑑別に挙がったが,高度の気管狭窄を認めたために摘出術を施行した.術中に嚢胞液を排液することにより良好な視野が得られ,頸部切開のみで合併症なく完全摘出することができた.術後胸部単純X線写真にて気管偏移および狭窄の軽快を確認した.病理組織検査ではリンパ管腫の診断であった.良性腫瘍の場合,縦隔の腫瘍であっても腫瘍の下端が大動脈弓レベルであれば,適切な手順,剥離により頸部切開のみで摘出することは可能であり,特に本症例のように嚢胞状のものならば内用液を排液することで摘出はより容易になると考えられた.