天理医学紀要
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症例報告
Helicobacter pylori感染に伴うMénétrier's diseaseから 両下腿浮腫と腹水貯留を呈した1 例
佐田 竜一西田 誠橋本 就子東 光久石丸 裕康八田 和大郡 義明本庄 原
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2011 年 14 巻 1 号 p. 80-86

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抄録

症例は64 歳女性.約6 週間前から緩徐進行性の両下腿浮腫・体重増加が出現し,腹部膨満により屈伸できないほどの全身浮腫に至ったため当院に入院した.腹骨盤部造影CTにて胃壁の著明な脳回状肥厚を認め,上部消化管内視鏡にて胃体上下部大彎に巨大皺襞を認めたため,悪性腫瘍に伴う低栄養と癌性腹膜炎を考えた.腹腔穿刺により得られた腹水の細胞診は陰性であり,胃粘膜生検組織では腺窩上皮過形成と間質のリンパ球浸潤を認めるのみであった.尿素呼気試験陽性からHelicobacter pylori (H.pylori) 感染に伴うMénétrier's disease を疑い,H.pylori 除菌療法と共に高カロリー食摂取を促したところ,約2 週間の経過で急速に浮腫・低栄養が改善した. Ménétrier's diseaseは疾患概念が未だ曖昧だが,一般的には腺窩上皮細胞の過形成を特徴とする胃の巨大皺襞症で,酸分泌の低下および胃からの蛋白漏出による低蛋白血症を伴うものとされている.成人ではH.pylori感染が発症に関与していることが知られており,H.pylori 除菌により改善する. 本症例のように急速に進行する全身浮腫の鑑別疾患として,Ménétrier's diseaseは稀な病態であるため報告した

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© 2011 公益財団法人 天理よろづ相談所 医学研究所
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