2011 年 14 巻 1 号 p. 87-92
上咽頭に発生した良性の隆起性腫瘤2例を経験し,超音波凝固切開装置と硬性内視鏡の併用がその摘出において有用であったため報告する.いずれの症例も上咽頭後壁に基部を持つ血流豊富な隆起性病変であり,診断と治療のために全身麻酔下に摘出術を行った.確実な止血と摘出のための工夫として,軟口蓋を上方に牽引して口腔内より硬性内視鏡と超音波凝固切開装置を挿入し,腫瘍を切離した.いずれも手術時間は5 分以下,出血は少量と最低限の侵襲で腫瘍を摘出できており,また術後の疼痛や出血といった問題も認めなかった.組織診断の結果,1 例は化膿性肉芽腫,もう1 例は神経鞘腫であり,いずれも上咽頭に発生する病変としてはまれなものであった.