2013 年 16 巻 2 号 p. 119-125
症例: 63歳男性.体重減少(2か月間に6 kg)のため入院.身体診察では,表在リンパ節は触知しなかったが,脾臓を左季肋下3横指触知した.
検査結果: ヘモグロビン11.1 g/dL, 白血球数7,100/µL (リンパ球13.0%), 血小板数121×103/µL, アルブミン3.4 g/dL,C 反応性蛋白18.0 mg/dL, 赤沈1 時間値78 mm, 可溶性IL-2 レセプター7,107 U/mL であった.CT では,傍大動脈・腹腔動脈周囲の著しいリンパ節腫大と,脾腫及び脾臓内多発腫瘤を認め,左鎖骨下リンパ節腫大も認められた.PET検査では,これらの腫大したリンパ節と脾臓にFDGの強い集積を認めた.後腹膜鏡下に傍大動脈リンパ節を生検したところ,リンパ節は線維性の隔壁で囲まれた複数の結節からなり,多彩な炎症細胞を背景に大型細胞が認められた.免疫染色では,大型細胞はCD30+, CD15+, CD20-, CD79a+, ALK-で,ISH法によるEpstein-Barr virus (EBV)-encoded small RNAs陽性であった.PCR法で,免疫グロブリン重鎖遺伝子の再構成を認め,EBVゲノムのフラグメントが増幅された.
経過: EBV 陽性結節硬化型古典的ホジキンリンパ腫,臨床病期Ⅲ-2Bと診断した.ABVD療法2サイクル終了後にPET検査(interim PET)を実施したところ,FDGの異常集積は完全に消失していた.ABVD療法を合計6サイクル実施し,完全寛解に至った.
考察: 本例のような中高年発症のEBV 陽性結節硬化型古典的ホジキンリンパ腫の病理発生は,若年者に好発するEBV陰性結節硬化型古典的ホジキンリンパ腫のそれと異なるのかもしれない.本例は治療前に3つの危険因子(低アルブミン血症,男性,高齢発症)を伴っていたが,interim PET評価によって早期完全奏功を認めたことから,良好な治療予後が予測される.