2013 年 16 巻 2 号 p. 126-132
Janus kinase 2 (JAK2)遺伝子のV617F変異は,骨髄増殖性腫瘍の診断基準の1つに取り上げられている.JAK2 V617F 変異の検出には,melting curve (MC)アッセイとamplification refractory mutation system (ARMS)法の2 つの方法が主として用いられている.我々は,希釈系列を用いて,両法によるJAK2 V617F変異の検出感度を検定 した.その結果,融解曲線の目視による判定を採り入れるとMCアッセイの検出感度は5%,ARMS法の検出感度は1%であった.臨床検体を用いた解析では,真性多血症(PV)の11例すべてで,いずれの方法でもJAK2 V617F変異を検出することができたが,1例ではMCアッセイで混合型,ARMS法で変異型であった.本態性血小板血症(ET) の8例では,5例 (MC アッセイ)または6 例 (ARMS 法) が混合型で,変異型は認めなかった.ARMS 法によってのみ変異陽性であった1例の変異型クローンの割合は3% 程度と推定されたが,2年後のMC アッセイでは14.3%に増加 した.骨髄異形成症候群2 例が変異陽性であった.今回の解析によって,PV のJAK2 V617F 変異はMC アッセイの感度で検出可能であるが,変異型クローンの割合が低いETでは,MCアッセイで野生型であっても,高感度のARMS 法による検証が必要であることが明らかになった.