抄録
【目的】本研究は,介護保険施設職員が経験的に得ている身体拘束しない転倒予防ケアと,そのケア提供を可能とした施設や施設職員の要因を明らかにすることを目的とした。さらに一般病棟における認知症高齢者の転倒予防ケア向上に関する示唆も加えた。【方法】調査対象者は,A 県内の4 つの介護保険施設の看護職,介護職,リハビリ職ら29 名である。グループインタビューによる半構造化面接を行い,質的に分析した。【結果】カテゴリの抽象度を高めた4 領域として,【身体拘束しない転倒予防ケアを可能とする基盤】,【施設高齢者に関する多角的な情報を把握する能力】,【情報や観察結果の統合】,【活動と安全を両立したケア】を見出した。プロセスとして,施設職員は【身体拘束しない転倒予防ケアを可能とする基盤】に支えられ,【施設高齢者に関する多角的な情報を把握する能力】を培い,【情報や観察結果の統合】を深め,【活動と安全を両立したケア】を提供していた。【考察】介護保険施設で高齢者の転倒予防ケアを行うには,職員が協力して対象者の情報を収集し,共有することが必要不可欠であることが示された。一般病棟において認知症高齢者に対して身体拘束しない転倒予防ケアを行うためには,病院・病棟の体制の検討や看護師が多角的な情報を把握する能力を養う必要性が示唆された。