日本転倒予防学会誌
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回復期リハビリテーション病棟における転倒事象の横断研究
林 節也竹中 孝博岩本 千秋延田 侑華里久保田 将成田中 利典森 憲司
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2016 年 2 巻 3 号 p. 33-39

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抄録

【目的】回復期リハビリテーション(以下,回復期リハ)病棟に在籍していた患者の転倒,および転倒者の特性を明らかにすることを目的に,年齢,総転倒件数,疾患別転倒件数,転倒場所,回復期リハ病棟入棟後から転倒までの期間,転倒時のFunctional Independence Measure(以下,FIM),転倒・転落アセスメントスコアを調査した。【対象と方法】対象は2013 年4 月から2015 年3 月の2 年間にA 病院回復期リハ病棟に在籍していた患者383 名。平均年齢は73.6 ± 14.3 歳であり,疾患別内訳は脳血管疾患246 名,整形疾患117 名,廃用症候群20 名であった。調査方法は,転倒に関する事故報告書および集計より,年齢,総転倒件数,疾患別転倒件数,転倒場所,回復期リハ病棟入棟後から転倒までの期間,転倒の有無からみた運動FIM(以下,M-FIM)点数,認知FIM(以下,C-FIM)点数,合計FIM(以下,T-FIM)点数,転倒アセスメント点数を横断調査した。【結果】2 年間の回復期リハ病棟における転倒者数は,63 名(91 件)であり,在籍患者の16.4 %であった。性別は,転倒群は男性33 名,女性30 名,平均年齢は転倒群75.5 ± 13.4 歳,非転倒群73.2 ± 14.5 歳であった。転倒群の疾患別内訳は,脳血管疾患44 名(17.9 %),整形疾患14 名(12.0 %),廃用症候群5 名(25.0 %)であった。転倒場所で最も多いのは病室で71.4 %,次いで病棟トイレ11.0 %であった。入棟から転倒までの期間は,入棟後1 週間以内が30.8 %で最も多く,85.7 %が2 か月以内の転倒であった。FIM においてはM-FIM,C-FIM,T-FIM ともに転倒群のほうが低かった。転倒アセスメントスコアでは,リスクレベルⅡでは,291 名中転倒者72 名(24.7 %),リスクレベルⅢでは,78 名中転倒者19 名(24.4 %)であった。【結論】転倒が多く発生したのは,場所別では,病室とトイレで,時期では,回復期リハ病棟入棟後比較的早期であった。また,転倒群はFIM 点数が中等値であり,転倒・転落アセスメントスコアではリスクレベルⅡ以上の患者に転倒が多いことが示唆された。

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