日本転倒予防学会誌
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原著
認知症看護のエキスパートによる転倒予防ケアの臨床判断の構造とプロセス
丸岡 直子鈴木 みずえ水谷 信子谷口 好美岡本 恵理小林 小百合
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2018 年 5 巻 1 号 p. 65-79

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抄録

【目的】認知症看護のエキスパートが実践している認知症高齢者に対する転倒予防ケアの臨床判断の構造とそのプロセスを明らかにすることである。

【方法】認知症看護認定看護師あるいは5 年以上の認知症看護の経験を有する看護師18 名を対象に,6 名を1 グループとしたグループインタビューを実施した。インタビュー内容は,認知症高齢者に対する転倒予測と判断根拠,転倒防止策の内容であり,質的記述的に分析した。

【結果】認知症看護のエキスパートは,認知症高齢者の〈安全か尊厳かのジレンマ〉に直面しながらも,〈認知症高齢者と行動を共にしてリスクを判断〉し,〈その人の持つ視点を重視しかかわる〉転倒予防ケアを実施しながら看護職員や介護職員と〈情報・ケア方法を共有するシステムをつくる〉ことを行い,認知症高齢者の病院や施設での生活が〈落ち着く〉ことを目指していた。

【考察】認知症高齢者に対する転倒予防ケアの特徴は,認知症高齢者の意思を尊重し,認知症高齢者が〈落ち着く〉ことを目指したケアであった。認知症高齢者の転倒を防止するには,認知症高齢者と行動を共にしながら転倒リスクを判断し,環境適応や生活能力を維持するケアが重要であることが示唆された。【結論】認知症高齢者の転倒予防には,認知症高齢者が〈落ち着く〉ことを目指したケアの提供が重要である。

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