【目的】本研究では,回復期リハビリテーション病棟(回リハ病棟)における転倒による骨折後患者の入院時栄養状態とactivities of daily living(ADL)能力の関係および自宅復帰率に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。
【方法】転倒による骨折後のリハビリテーション目的で,2015 年4 月から2017 年3 月までに回リハ病棟へ入院した整形外科疾患患者(整形患者)を対象とした。基礎情報,ADL 指標,栄養指標を診療録から後ろ向きに調査した。基礎情報は,年齢,性別,身長,体重,骨折タイプ,治療方法,アルブミン値,改訂長谷川式簡易知能評価スケール,受傷前および退院時functional ambulation category(FAC),入院前同居人の有無,退院先,当院入院期間,受傷から当院入院までの期間とした。ADL 指標は入院時および退院時function independence measure(総得点:FIM総合,運動項目:FIM 運動,認知項目:FIM 認知)とした。栄養指標は,geriatric nutritional risk index(GNRI)を使用し,92 点以上を栄養良好群(良好群),92 点未満を栄養不良群(不良群)とした。良好群と不良群については基礎情報,ADL 指標についてMann-Whitney U 検定,カイ二乗検定,Fisher の正確確率検定を行った。先行研究で報告されている因子および2 群間で有意差があった項目を独立変数,退院先を従属変数としてロジスティック回帰分析を行った。
【結果】調査期間中に入院した整形患者は189 名で,除外基準に該当する61 名を除いた128 名について解析を行った。GNRI により52 名(40.6 %)が栄養障害と判断された。GNRI は入院時および退院時FIM と有意な正の相関を認めた。ロジスティック回帰分析の結果,栄養障害があること(オッズ比:0.24 ,95 % CI:0.06-0.91),入院時FIM 認知が低いこと(オッズ比:0.87 ,95 % CI:0.78-0.97),退院時FAC が低いこと(オッズ比:0.53 ,95 % CI:0.29-0.97)が自宅復帰率を低くすることが示された。
【結論】回リハ病棟における転倒による骨折後患者は約40 %が栄養障害を呈していた。入院時の栄養状態が良いほど入院時および退院時のADL 能力が高く,また,栄養障害があることは独立して自宅復帰率を低くすることが示された。
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