日本転倒予防学会誌
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原著
入院時口腔ケア介助の必要性と入院中の転倒との関連
〜過去起点コホート研究〜
古賀 秀信伊藤 悠介佐々木 彰福村 文雄森山 由香野田 佐代美樋口 圭子久保 佳子井村 洋
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2021 年 8 巻 1 号 p. 3-14

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抄録

【目的】本研究の目的は,急性期一般病棟の入院患者における入院時の口腔ケア介助の必要性と入院中の転倒の関連 性を明らかにすることである。

【方法】単施設過去起点コホート研究である。2018年4〜9月までの間に,急性期病院である当院一般病棟に 入院した患者で完全寝たきり状態の患者を除いた6,009名を対象とした。データはDPC(Diagnosis Procedure Combination)一部である様式1, H ファイルおよび転倒インシデントレポートを用いた。H ファイルは重症度,医療・看護必要度でA〜C の3 項目で構成される。口腔ケア介助の必要性はB 項目の「口腔清潔」を用いた。臨床的重症度としてはA項目の合計値,入院時ADL には様式1 に記載されている情報を用いた。その他,転倒の危険性を評価とした転倒リスク評価を,栄養状態および貧血の評価として入院時のアルブミンおよびヘモグロビンを用いた。 統計解析は転倒の有無による2 群比較,ならびに転倒を目的変数としたロジスティック回帰分析を用いた。口腔ケア介助の必要性を曝露因子とし,年齢,性別,栄養状態,貧血の有無,入院時ADL および臨床的重症度を共変量として逐次的に説明変数へ投入した。妥当性の確認にはBootstrap 法を用いた。なお本研究は,飯塚病院倫理委員会の承認を得て行った。

【結果】転倒を起こした患者は139 名(2.3 %)であった。単回帰分析の転倒に対する口腔ケア介助の必要性のオッ ズ比は3.84(95 %信頼区間:2.73 〜5.39,p <0.001)であった。年齢,性別,栄養状態,貧血の有無で調整した多重ロジスティック回帰分析のオッズ比は2.59(95% 信頼区間:1.62 〜4.14,p <0.001)で,さらに転倒アセスメント,入院時ADL および臨床的重症度を加えた場合のオッズ比は2.31(95 %信頼区間:1.20 〜4.44, p =0.012)で,Bootstrap 法を用いても同様であった。感度分析においても転倒に対する口腔ケア介助の必要性に対するオッズ比は高いことが確認できた。

【結論】入院時の口腔ケア介助の必要性は,年齢,性別,栄養状態,貧血の有無,転倒アセスメント,入院時ADL や臨床的重症度で調整した上でも入院中の転倒と関連していた。急性期一般病棟の入院患者において,入院時に口腔ケア介助が必要な患者は転倒のリスクが高いことが示唆された。

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