ピアノ教育の現場において、バルトーク『子供のために』を日本の子どもたちに弾かせる難しさがしばしば指摘されている。この作品集は東欧の民俗音楽を基盤とした作品であり、教育的意図を持ち合わせた作品のため、日本の子どもたちにとっても修得する意味があるものと考えられる。
本稿は、この作品の教育的意図と、彼がおこなった民俗音楽の研究という2つの背景を踏まえて、この作品を音楽的に演奏するためにはどのような指導が必要であるかを検討していくものである。まず、ハンガリー民謡を素材とする『子供のために』Ⅰ巻のなかから、難しさを生じさせていると考えられる要素を持つ作品を選曲した。そして、その難しさを克服し、音楽的に演奏するためには、どのような指導がなされるべきかについて考察・検討した。