東京未来大学研究紀要
Online ISSN : 2433-5487
Print ISSN : 1882-5273
原著
人名を第1要素とするイングランドの地名A~B: 人名の形態に基づく出現傾向の分析
宅間 雅哉
著者情報
ジャーナル フリー

2017 年 12 巻 p. 57-61

詳細
抄録

 一般に、中世イングランドの人名は、独立した意味を持つ要素1つからなるmonothematic namesと2つからなるdithematic namesに大別され、それぞれ地名の第1要素となり得る。A. D. Millsの地名辞典(2011)のA及びBの該当ページから収集した784例を検討した結果、monothematic namesを第1要素とする地名の出現数は2対1以上の割合でdithematic namesを第1要素とする地名よりも多く、特にイングランド東部でその傾向が強い。また、初出例を基準として、8世紀から13世紀の各世紀における両地名の出現数を比較した結果、この間、常にmonothematic namesを第1要素とする地名が多数を占めることが明らかになった。ただ、8世紀には80%以上だった比率は、13世紀には60%をやや上回る程度にまで低下する。一方、dithematic namesを第1要素とする地名は、この間、常に増加傾向にあり、8世紀には20%未満だった比率は、13世紀には35%程度にまで上昇する。前者の減少傾向と後者の増加傾向を顕著に把握できるのは12世紀である。少なくとも現時点では、地名の第1要素としてのmonothematic names とdithematic namesの関係は、一方が他方を駆逐するようなものではないことが明らかになった。

著者関連情報
© 東京未来大学
前の記事 次の記事
feedback
Top