本研究では、文部科学省の幼児期の運動に関するモデル事業を活用してきた地域の保育士を対象に、運動遊びに関する志向や指導参考資料を保育経験年数により比較することで、保育士間の運動遊びの指導に関する情報共有と伝承の重要性を検討した。そのために、モデル事業活用地域の全保育所の保育士81名を対象に質問紙調査を実施した。その結果、以下のことが明らかになった。
1) 保育経験年数の長い保育士は、短い保育士に比べて遊び志向得点が高値を示した。
2) 運動遊びの指導参考資料として、「大学・短大・専門学校時代の講義」は、2~5年の保育士で有意に高い割合を示し、「市の資料」は11 ~20年の保育士が有意に高い割合を示し、2~5年の保育士が有意に低い割合を示した。
以上のことから、モデル事業や行政独自の運動遊びに関する情報を蓄積していくシステムを構築していくことが、運動遊びの指導理念や指導感といったリテラシーを伝承していくためには必要であると考えられた。