東京未来大学研究紀要
Online ISSN : 2433-5487
Print ISSN : 1882-5273
15 巻
選択された号の論文の29件中1~29を表示しています
原著
  • ―乳児クラス担任と幼児クラス担任の比較―
    浅井 かおり, 浅井 拓久也
    原稿種別: 研究論文
    2021 年15 巻 p. 1-12
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/05/26
    ジャーナル フリー

     本研究は、保育者が保育経験を積み重ねキャリアを形成していく過程において、乳児クラス担任及び幼児クラス担任としてのキャリア形成それぞれの決定要因を比較することを目的とした。分析の結果、乳児クラス担任はキャリア形成の過程において、乳児クラスの担任をしながら乳児の可愛らしさや乳児保育の重要性、低年齢児保育の魅力を実感したことが、その後も低年齢児クラスの保育のキャリアを築くことに繋がっていた。それに対し幼児クラス担任は、幼児クラスの担任をしながら3〜5歳児の集団保育の中での行事への取り組み過程の面白さや達成感、年長児への期待や願い、3、4歳児クラスを担当後はそのまま卒園まで子ども達を見守りたい、責任を持って卒園させたいという思いが、その後も3〜5歳児クラスの保育のキャリアを築くことに繋がっていたことが示された。

  • ―親子の関係性と親子間の距離との関連から―
    及川 留美
    原稿種別: 研究論文
    2021 年15 巻 p. 13-23
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/05/26
    ジャーナル フリー

     子育て当事者たちによる活動によって各地に広がりをみせた子育て広場は、2005年に地域子育て支援拠点事業として規定され、2019年度末時点で、7,578カ所での実施が報告されている。数値目標はほぼ達成され、今後は支援内容の質的向上により子育て支援機能の充実を図ることが求められる。

     本研究では、S市においてNPO法人Jが運営する4つの子育て広場における物的な環境とその構成に着目し、実地調査と支援スタッフに対するインタビュー調査を実施した。その結果、NPO法人Jでは子育て広場の環境を構成する際は「親子(特に親)が安心して過ごせること。」「利用者や支援スタッフは多くの親子が見える(見渡せる)こと。」「子どもが主体的に遊び込めること。」を重視していることがわかった。これらの環境構成は、親子間に適切な距離を創出し、そのことによって親子と支援スタッフや他親子とのつながりを生み出す、親子の関係性を改善するなど支援者の意図が含まれていることが示唆された。

  • 川原 正人
    原稿種別: 研究論文
    2021 年15 巻 p. 25-34
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/05/26
    ジャーナル フリー

     近年、インターネットの過度な使用によって生活や健康に支障をきたすネット依存の問題が指摘されている。こうしたネット依存を測定する尺度としてインターネット依存度テスト(IAT)がある。本研究ではIATの因子構造について検討した。探索的因子分析により「コントロール喪失」と「執着と恥・苛立ち」の2因子が抽出された。1因子モデルと2因子モデルについて確認的因子分析を行い、モデルの適合度について比較したところ、各指標について2因子モデルの方がよい値を示した。精神的健康に関わる指標や対人関係に影響を及ぼす指標との関連を調べたところ、因子によって相関係数に差が見られる尺度があった。従来のIATの合計得点で表される重症度は日常生活の活動への支障を表す「コントロール喪失」がより強く反映されており、「執着と恥・苛立ち」はネット依存の心理的側面を検討するのに有用であることが示唆された。

  • ―「ぼくは王さま」と「くまのパディントン」シリーズを中心に―
    佐々木 由美子
    原稿種別: 研究論文
    2021 年15 巻 p. 35-46
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/05/26
    ジャーナル フリー

     「朝の読書」で、小学校低学年に読まれた本の9割をシリーズ作品が占めている。シリーズ作品が活況だが、幼年文学において作品のシリーズ化が顕著になったのは、1970年代から80年代にかけてである。 なかでも、食べ物を中心テーマとしたシリーズ作品がこの時期から数多く登場している。寺村輝夫の『ぼくは王さま』(1961)と、マイケル・ボンドの『くまのパディントン』(1958)は、ほぼ同時期に登場し、シリーズ化され、以来60年にわたって読み継がれている人気シリーズである。両作品に共通しているのは、たまご好きの王さまと、ママレード好きのくまという、キャラクターの構築に食べ物を用いていることである。食べ物がキャラクターにどのような性格を与えているのか、また作品やシリーズ全体のなかで、どのように機能しているのかについて検討した。〈食〉はシリーズを固定化させ、キャラクターの造形に影響を与えているだけでなく、作品の根本的なテーマにつながる重要な役割を果たしている。

  • ―Soft CLILを導入して―
    執行 智子, 塩田 直子, カレイラ松崎 順子
    原稿種別: 研究論文
    2021 年15 巻 p. 47-57
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/05/26
    ジャーナル フリー

     職業など専門領域にあわせて言語教育を行うESPは、社会の変化に伴い、言語教育と内容教育を組み合わせたCLILを取り入れ、学習者の言語学習を一層促進するように修正されてきた。本研究では、資格取得において英語が課されていない臨床工学技士の養成専門学校の必修科目の英語におけるSoft CLILの導入について考察するために、専門学校1年生が、英語をどのような場面で将来使用すると想定しているのか、また、英語科目にSoft CLILを導入することをどのように受け入れているかを調査した。その結果、多くの学生が仕事で英語を使用すると想定しており、専門領域の内容を扱ったSoft CLILを肯定的に受け入れていたことが分かった。学生の英語力の向上につながるように授業を工夫することで、CLILは専門学校の英語の科目に導入できる学習方法であると思われる。

  • ―小学校からの小論文指導を通して―
    篠原 京子
    原稿種別: 研究論文
    2021 年15 巻 p. 59-67
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/05/26
    ジャーナル フリー

     国際化、情報化、価値の多様化が進む現代では、これまでの日本社会で重視されてきた「常識でわかる」「暗黙の了解」「以心伝心」による相互理解は通用しなくなっている。客観的な根拠を示して誰にとっても分かりやすく表現するための論理的思考力・表現力が求められている。一方、中央教育審議会答申(2016.12.21)では子どもの論理的思考力・表現力における課題が指摘された。さらに、大学生の書く力が不足しているという報告もある。そこで、本研究では、現行の小学校国語科教科書の教材分析を通して、「書くこと」の指導の課題を考察し、社会人として必要な書く力を育成するために、小学生から大学生までの系統的な指導体系の構築へ向けての端緒として、小学生からの小論文指導が効果的であることを提案する。提案に際して、論理的思考力・表現力の育成に効果的な文章構成、及び、構成に重点を置いた小論文指導の効果的な指導方法を示す。

  • ― 東京都荒川区の保育園児を対象に ―
    篠原 俊明, 長野 康平, 堀内 亮輔
    原稿種別: 研究論文
    2021 年15 巻 p. 69-77
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/05/26
    ジャーナル フリー

     本研究は、東京都荒川区の保育園に通園する幼児を対象に起床時刻別の生活習慣の特徴を捉えることを目的とした。そのため、東京都内の4、5歳児425名対象に、アンケート調査を実施した。その結果、以下のことが明らかとなった。

     本研究の対象児の多くが9時間30分未満の短時間睡眠となっていた。スクリーンタイムは2時間以内となっており、適切にテレビやスマートフォンと関わっていることが示唆された。

     また、起床時刻が早いほど、朝食時刻が早く、4歳児においては朝食を摂取する時間が長かった。起床時刻による就寝時刻の差異はなく、起床時刻が早いほど、睡眠時間が短くなった。7時前に起床した場合、起床時の機嫌がよく、起床が6時半前の場合、朝の排泄な良好である一方、7時半以降に起床すると朝の排泄が習慣化されていないことが明らかとなった。

     以上のことから、生活習慣においては、就寝時刻を早め、起床時刻を早くすることの必要性が示唆された。

  • ―ムスリムSOGIマイノリティ―
    白石 雅紀, 酒井 美里, 戸田 有一
    原稿種別: 研究論文
    2021 年15 巻 p. 79-92
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/05/26
    ジャーナル フリー

     This study examines issues and challenges confronting multiple minorities. The term “multiple minorities” refers to individuals who have more than two aspects of minority identities. In particular, it focuses on the situations surrounding those who are with minority statuses of Muslims/Muslimas in non-Islamic societies and SOGI. We tried to apply Identity Politics and Connolly’s Pluralism as frameworks for our discussion.

     With insufficiencies in the labor force, Japan is expected to receive many more foreigners including Muslims/Muslimas in coming years. Not only foreigners but also SOGI minorities have been increasingly recognized as new minority groups. These groups need support for their integration into Japanese society because their vulnerability and experiences of discrimination are too often disregarded. When we consider how best to support them due to their historical backgrounds, we should consider that those two groups are situated in tensions with each other, and most importantly, some belong to both minority groups.

     Identity Politics provides a framework to empower and visibility of multiple minority identities. However, it is necessary to overcome tensions among identity groups for inclusion. Concerning the identity of multiple minority groups and the position of minorities, this study has only provided some clues for locating them. For further research, a framework that goes beyond the significance and limitations of Identity Politics and Connolly’s Pluralism is necessary to consider multiple minorities.

  • 鈴木 公啓, 真家 英俊, 寺島 宏紀
    原稿種別: 研究論文
    2021 年15 巻 p. 93-99
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/05/26
    ジャーナル フリー

     This study aims to investigate the relationship between oneʼs gait patterns and psychological characteristics such as affect and personality. Fifty-two adults( men = 18, women = 34, mean age = 33.8, age range = 18-72) participated in this study. Their gait patterns were assessed by an apparatus, while psychological characteristics were assessed by several self-report questionnaires. Results showed that vitality was positively related to some specific gait patterns. With walking goal-oriented behavior, vitality as energy for the environment is considered to be reflected on the gait patterns. Furthermore, with other psychological variables were not related to the gait patterns, it is considered that the perceived psychological characteristics from gait patterns may not be related to actual psychological characteristics.

  • ―気候地名収集のためのソース拡大―
    宅間 雅哉
    原稿種別: 研究論文
    2021 年15 巻 p. 101-109
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/05/26
    ジャーナル フリー

     2020年春をもって、『イングランド各州地名要覧』(以下、『要覧』)をソースとする気候地名の収集作業が終了した。しかし『要覧』がいまだカヴァーできていない州や地域については、他の地名辞典から例を収集する必要がある。本稿では、過去の論文執筆時には精読が完了していなかった『要覧』5冊のほか、特定の州を対象にした地名辞典3冊、イングランド全土を対象にした地名辞典2冊から新たに収集した気候地名のうち、古英語caldあるいはcōlを構成要素とする地名81例について、全ての綴りのパターンと、該当する綴りを有する各例の出典情報を提示した。古英語caldを第1要素とする地名の中には、ほぼ同じ綴りで、すべて初見となる例が、特定の州内の限られたエリアに集中して分布することが明らかになった。またcald、cōl以外の古語が構成要素となって「寒い、冷たい」「涼しい」を意味する地名2例は、今後の研究の方向性を示唆する性質を持つものであった。

  • ―ある長期滞在の日本人男性の語りから―
    田中 真奈美
    原稿種別: 研究論文
    2021 年15 巻 p. 111-119
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/05/26
    ジャーナル フリー

     日本人の海外への渡航が許可されて以降、アメリカ合衆国には、多くの日本人が移住してきた。第二次世界大戦以前に移民してきた日系一世とその子孫から、1960年代以降に移民してきた新一世と呼ばれる人々とその子孫まで、多くの日系人・日本人が現在もアメリカ合衆国の各地でアメリカ文化に適応しながら、日本文化を保持し、コミュニティを形成して生活している。

     長期滞在者の日本人男性に半構造化面接による聞き取り調査を2015年8月に実施し、長期滞在や異文化適応の課題、パーソナリティの変化に焦点を当てておこなった。本研究は、2007年におこなった5人の長期滞在の日本人女性の聞き取り調査の継続であり、その結果と比較し、考察を行った。2007年の調査と一致したのは、日本ですでに自己確立がされていたこと、海外生活に適応するために活動的な自己形成がされたこと、次世代への日本語・文化教育の考え、日系人・日本人コミュニティへの思いであった。

  • ―フィンランドにおける子どもの参画と自己決定の実践―
    藤後 悦子, 野澤 純子, 石田 祥代
    原稿種別: 研究論文
    2021 年15 巻 p. 121-129
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/05/26
    ジャーナル フリー

     Recently, the development of children’s norm consciousness has been considered a social issue in Japan. Finland has made pioneering efforts in child-centered development of norm consciousness and Finnish children have been practicing rule decisions. This study examined the situation in Finland for obtaining suggestions to develop norm consciousness in Japanese children, including special needs children, and examined cooperation among homes, elementary schools, and other related organizations. The authors visited child-related facilities in and around Helsinki and conducted interviews with seven participants. The following results indicated characteristics of norm development in Finland: (1) the process of deciding group rules mainly by children,( 2) individual and small-group support for understanding the rules,( 3) environmental settings for understanding the rules, and( 4) cooperation with other organizations.

  • ―保育士の運動遊びの指導志向と指導参考資料に対する保育経験年数からの検討―
    長野 康平, 篠原 俊明, 堀内 亮輔
    原稿種別: 研究論文
    2021 年15 巻 p. 131-139
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/05/26
    ジャーナル フリー

     本研究では、文部科学省の幼児期の運動に関するモデル事業を活用してきた地域の保育士を対象に、運動遊びに関する志向や指導参考資料を保育経験年数により比較することで、保育士間の運動遊びの指導に関する情報共有と伝承の重要性を検討した。そのために、モデル事業活用地域の全保育所の保育士81名を対象に質問紙調査を実施した。その結果、以下のことが明らかになった。

     1) 保育経験年数の長い保育士は、短い保育士に比べて遊び志向得点が高値を示した。

     2) 運動遊びの指導参考資料として、「大学・短大・専門学校時代の講義」は、2~5年の保育士で有意に高い割合を示し、「市の資料」は11 ~20年の保育士が有意に高い割合を示し、2~5年の保育士が有意に低い割合を示した。

     以上のことから、モデル事業や行政独自の運動遊びに関する情報を蓄積していくシステムを構築していくことが、運動遊びの指導理念や指導感といったリテラシーを伝承していくためには必要であると考えられた。

  • 野澤 義隆, 大内 善広, 萩原 康仁
    原稿種別: 研究論文
    2021 年15 巻 p. 141-148
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/05/26
    ジャーナル フリー

     本研究は、保育士による母親への育児理解や多重役割理解が、育児ストレスを媒介してマルトリートメントに与える影響を検討した。調査は、2013年6月~7月にかけて、A県の保育所696カ所を対象に依頼を行い、保育所に通う子どもの母親に対して自記式の質問紙調査を実施した。得られた回答のうち、104 カ所、2,634件を本研究の分析対象とした。分析の結果、多重役割理解から育児不安感に有意な負の影響、育児理解から育児不安感と育児負担感に有意な負の影響が見られた。また、育児不安感と育児負担感からマルトリートメントに有意な正の影響が見られた。これらから、保育士による母親への育児理解や多重役割理解は、育児ストレスを媒介してマルトリートメントを軽減していることが示唆された。

  • 細川 匡美
    原稿種別: 研究論文
    2021 年15 巻 p. 149-159
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/05/26
    ジャーナル フリー

     本研究は、19世紀中期から後期にかけて活躍した音楽教育家マリー・シャスヴァンの物語を活用したソルフェージュについて考察し、その手法を援用して保育士、および教員養成における音楽表現の学習法を考察するものである。シャスヴァン『子どものためのソルフェージュ2巻』の第2部は、物語の場面と対応する歌を歌うことで、さまざまな音楽的ニュアンスを経験できる内容であり、歌に合わせて歩く、ダンスすることなど、身体運動やリズムを重視したソルフェージュであることが判った。また、保育者養成のための音楽表現の学習についてはシャスヴァンの考えを援用し、物語に合った曲をつけることや、歌と物語を創作する活動を提示した。

  • ―「保護者と関わる中で困難に感じていること」への自由記述回答からの分析―
    横畑 泰希, 板川 知央
    原稿種別: 研究論文
    2021 年15 巻 p. 161-169
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/05/26
    ジャーナル フリー

     児童発達支援に従事する療育者に対して行なった自由記述調査をKJ法に基づき分析した。療育者は日々の療育で保護者と関わる中で、【保護者への支援・やり取りに対する困難感】を抱えていること、療育者自身はその要因として【保護者の要因】、【療育者自身の要因】、【物理的な要因】の3つをとらえていること、中でも【保護者の要因】が最も中核的な要因であることが明らかにされた。これらの結果に基づき、 【保護者への支援・やり取りに対する困難感】は一次的困難感として位置づけられ、【保護者の要因】、【療育者自身の要因】、【物理的な要因】の3つは一次的困難感の要因であるとともに、それ自体が二次的困難 感として位置づけられることを論じた。また、それら療育者の困難感は療育者の支援動機から出発し、支援常識の限界に直面することで一次的困難感の意識を超え、二次的困難感としての支援問題を成立させていくことを論じた。

  • ―児童館における子育て支援の実践から―
    横山 文樹, 川﨑 理香
    原稿種別: 研究論文
    2021 年15 巻 p. 171-179
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/05/26
    ジャーナル フリー

     日本の社会は、1989年の1.57ショックを契機に少子化傾向が表面化し、1994年、「エンゼルプラン」が施策された。これにより、「子育て支援」という言葉が広く社会一般に用いられるようになったのである。 2015年4月、子育て支援の質の向上・量の拡大を推進するために、「子ども・子育て支援新制度」が制定され、さらなる子育て支援拠点事業の改革が行われた。この結果、全国的に子育て支援事業は展開されている。

     子育て支援施設の一つである「児童館」の子育て支援の実態や実践を通して、保護者が身近で馴染みのある施設を足掛かりに、さまざまな地域の子育て施設を利用し、各々の事情にあったサービスを適宜に受け、悩みや不安を解消することに繋げる実態があった。また、子育て支援施設は地域の子育て支援機能と連携することで、保護者の実態により即した支援を可能とすることが検証された。

     地域の子育てを支援(参加)することは、地域社会全体の役割である。地域の力で子育てを次世代に繋げる「循環型の支援」が求められる。しかし、課題として、地域の中で複数存在する子育て支援施設の重複するサービスの在り方を各々が改善する必要がある。各自の特性と相違点を明確にし、独自の支援と推進を目指すことで、地域子育て支援の充実が図られるのではないかと考える。

実践報告
  • 郭 潔蓉, 杉本 雅彦, 森下 一成, 金塚 基
    原稿種別: 研究論文
    2021 年15 巻 p. 181-189
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/05/26
    ジャーナル フリー

     本報告は、2018年4月より2019年3月までに実施された「足立区菓子業界の魅力発信事業」において、東京商工会議所と足立区の菓子業界団体と東京未来大学との協働により行った産学連携事業を活用した実践型教育の事例報告である。足立区の地場産業である菓子業界を取り上げ、その伝統と文化を国内外に情報発信を行うことで足立ブランドの魅力を広く伝えることを目指した本事業は、学生参加型の産学連携事業としても、実践型教育としても新しい試みであり、学生にとっても得られる知見が多い事業であったことは特筆すべきである。本連携事業がどのような背景で発足し、事業を推進する過程においてどのような成果と課題が得られたのか、本稿において報告を行うものとする。

  • ―授業体験で深まった教育観を通して―
    中村 礼子
    原稿種別: 研究論文
    2021 年15 巻 p. 191-201
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/05/26
    ジャーナル フリー

     児童の思いや願いの実現を目指した生活科の授業づくりへの理解を深め、「児童の思いや願いを育み、気付きを生む生活科の模擬授業づくり」を進めていくために、令和元年度の初等生活科教育法の授業において、筆者の生活科指導の実践をもとにした授業体験を取り入れた。学生が生活科の授業を体験することを通して、生活科の授業を行う上で必要な教育観(生活科観、子ども観、授業観、教師観)が形成され、深まり、指導案や模擬授業に活かされていくことができたか検証した。検証では、学生が作成した指導案や模擬授業の様子、授業後に学生が提出した振り返りシートを分析した。分析の結果、授業体験を通して形成された教育観を指導案や模擬授業に活かすことができたとの結論が得られた。

研究ノート
  • 大橋 恵
    原稿種別: 研究論文
    2021 年15 巻 p. 203-212
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/05/26
    ジャーナル フリー

     This study analyzes the evaluations of e-learning among college students. The assessments of e-learning were examined between correspondence course students and students in commuting courses who took an asynchronous class using on-demand videos. With the videos used was evaluated easy to understand by both groups, it was found that correspondence college students considered e-learning more positively than commuting students. They were pleased with the clarity and convenience of the video classes, and were not dissatisfied with the one-sidedness and difficulty in maintaining motivation to keep studying. On the other hand, the commuting students were not very satisfied much with the clarity and convenience of the video classes, suffered more from the onesidedness, and felt difficulty in keeping study motivation. The score of the final exam was not related to satisfaction or dissatisfaction with e-learning.

  • ―古英語期―
    西野 博道
    原稿種別: 研究論文
    2021 年15 巻 p. 213-222
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/05/26
    ジャーナル フリー

     This article reproduces and summarizes the contents of an English history class that I have lectured at Saitama University( 2003-06) and Meiji University( 2005-11). This time, I will post the contents of Old English from my lecture record in particular. Of course, itʼs not just a summary of books on the history of the English language I have read so far, but a unique article with original perspective and knowledge of European culture and history I have acquired through my life as a university lecturer. The English used here is American English, and the level of English is for students in general liberal arts courses at the university. It is a record that I want many English learners to have a comprehensive understanding of the historical, linguistic, political, and cultural background of English. Besides, it is going to mention the future of English, the ideal form as a global language.

  • 佐藤 久恵
    原稿種別: 研究論文
    2021 年15 巻 p. 231-243
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/05/26
    ジャーナル フリー

     大正十一(一九二二)年七月七日、宮尋常高等小学校の小野さつき訓導は、担任の児童五十六名と共に校外授業の写生のため白石川を訪れた。授業後、川遊びを始め溺れた児童三名のうち二名を救助し、その後一名と共に溺死し殉職した。本稿では、この経緯について宮城県公文書館から取り寄せた公文書『大正十一年学事雑務』のそれに関する部分を翻刻し考察した。文書全体は七月八日から約一カ月の間の文書だが、その中から以下の三文書を中心に取り上げた。①は同校上席訓導佐藤保治、校長我妻貞亮が宮城県知事に提出した「進退伺」の別紙「調査書」、②は①を受け七月十五日付けで刈田郡長佐藤静治が同知事宛に報告する起案文書の「別紙」、③は小野訓導表彰申請の際の「調書」である。これらによって、雑誌等による資料では見えなかった到着時から既に「水泳をしたい」と希望するような児童の行動予測が不十分であったと考えられる記述があることと、また、村葬の可決や仙台四新聞社との協議により最初期から顕彰の広がりがみられることとを確認した。

原著
  • ――廻在者の取締りをめぐって――
    山﨑 善弘
    原稿種別: 研究論文
    2021 年15 巻 p. 245-255
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/05/26
    ジャーナル フリー

     廻在者の取締りを素材に、近世畿内における地域管理体制の具体的様相を、幕府(公儀)・領主・地域社会による対応を見ることで、その全体像を明らかにしようとした。すなわち、従来、近世畿内における地域管理は、専ら地域住民が自立・自主的に行っていたと理解されてきたが、幕府・個別領主・地域住民によってそれぞれ成されており、三者の連携によって効果が上がっていた。そうした地域管理体制の内実の解明に取り組んだ。

feedback
Top