Abstract
本研究は、昔話の再話や受容のありようについて、保育との関わりの中で明らかにすることを目的としている。その手がかりとして、「ぶんぶくちゃがま」を取り上げ、その変遷を追った継続研究である。1945年以降の絵本や紙芝居を中心に分析し、その変遷をみていった結果、大きな変化が認められた。一つは物語構造の変化であり、二つ目は中心場面の変化である。物語が簡略化し、構造自体が変化することによって、物語自体がわかりやすくなるとともに、人と動物の交流や友情、親切といったテーマをより鮮明に描きだそうとする傾向がみられた。また、中心場面については小僧さんたちが茶釜を追いかけ回す場面が描かれなくなり、見世物の場面は見開き1頁で、つなわたりが中心として描かれ、見世物の固定化の傾向は強まっていると言える。
References
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- 相澤京子・佐々木由美子(2023)「「ぶんぶくちゃがま」の変遷−1895年から1945年までの作品を中心に」 『未来の保育と教育』10号
- ワタナベテツヲ文、スズキトシヲ絵『ぶんぶく茶釜』(文新社書店1947)
- 小口吉太郎文、倉島泰絵『ぶんぶくちゃがま』(春江堂1948)
- 奈街三郎文、大森弓麿絵『ぶんぶくちゃがま』(新子供社1949)
- 木村貞美文・絵『ぶんぶくちゃがま』(錦城社1949)
- 高野哲治文・絵『ぶんぶくちゃがま』(二葉書房1949)
- 土家由岐雄文、高畠華宵絵「ぶんぶくちゃがま」(永晃社1950)
- 浜田廣介文、河目悌二絵「ぶんぶくちゃがま」『こどもクラブ』(講談社1951)
- 平井芳夫文、鈴木寿雄絵「ぶんぶくちゃがま」『小学館の幼稚園』(小学館1951)
- 中村小波文、服部龍男絵『文福茶釜』(暁画劇社1952)紙芝居
- 土家由岐雄文・絵、古藤幸年絵「ぶんぶく茶釜」(永晃社1953)
- 水上不二文、石田英助絵「ぶんぶくちゃがま」『小学一年生』(小学館1953)
- 鈴木重三・木村八重子編(1985)『近世子どもの絵本集 江戸篇』岩波書店 p.490
- 平塚武二(1960)「「ぶんぶくちゃがま」について」『ぶんぶくちゃがま』講談社 頁数なし