季刊地理学
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論文
北海道における生シイタケ栽培への企業参入と生産構造の変容
松尾 忠直
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2009 年 61 巻 2 号 p. 89-108

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抄録

本論は,農業部門への企業進出が顕著にみられた生シイタケ栽培の代表的な地域として北海道を取り上げ,栽培動向,地域的変化,企業の立地戦略,企業間取引,流通の特性を明らかにした。
北海道では,1990年代にK社やM社の系列に属する企業の相次ぐ進出がみられた。K社は系列企業を全国的に立地させる過程で北海道にも進出し,M社は本州以南の原木栽培農家との関係を考慮して北海道へ進出した。北海道への企業進出の要因は,新しい菌床栽培技術に加え,補助金の交付が受けられることにあった。さらに,手作業に頼らざるを得ない生シイタケ栽培の特性が安価な労働力をいかすことができた。
一方で,行政は旧産炭地の補助金を活用し,新たな雇用の創出を目指すとともに,栽培の特性をいかし,障害者の雇用と自立支援のために就業の機会を増やす意図もあった。このような施策によって企業進出が後押しされ,北海道では菌床栽培による生産量が増大した。
また,生シイタケの流通については,K社系は系列間の流通に重点を置き,M社系は系列下の企業の判断に委ねるという差異がみられた。それは,両社の立地戦略と参入経緯の違いから生じた。

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© 2009 東北地理学会
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