2023 年 75 巻 1 号 p. 16-26
近年の都市政策では,ウォーカビリティ(徒歩での生活しやすさ)が注目を集めている。それが地域経済や住民の健康など生活にもたらす効果を定量的に検証するには,一貫した基準による,広域的な,利用しやすい形式の指標の整備と公開が必要である。そこで本研究では,人口密度,施設種類数,道路接続性の3要素からなる,日本全国の郵便番号界ウォーカビリティ指標(JPWI)を,公開を前提に作成した。本稿では指標の作成方法と概要を解説し,「都市的ライフスタイルの選好に関する地理的社会調査」(GULP)の結果に基づく大都市住民の歩行時間との関連性分析を通じて,その有用性を検証した。分析の結果,通勤通学,日常生活,散歩といった目的別の歩行時間とJPWIの間には,いずれも有意な正の相関が確認された。さらに,住所レベルのWIを用いた分析との比較を通じて,JPWIが近隣レベルのウォーカビリティ指標として有用であることが示された。