2024 年 76 巻 3 号 p. 120-125
地理学をはじめ,近年の社会調査ではインターネット調査が多用され,そこではスマートフォン回答が大きな割合を占めるに至っている。しかし,このことが回答の質に与える影響を日本で実証したものは未だ少ない。そこで本研究は,2020年に実施されたインターネット調査のデータを利用して,回答デバイス(パソコン・タブレット・スマートフォン)と回答の質(超短時間回答およびストレートライニング)の関連を検討した。分析の結果,スマートフォン回答は必ずしも回答の質の低下に関連していないことが示された。超短時間回答とは有意な関連がみられず(年齢調整後),また,ストレートライニングはむしろスマートフォン回答者において少ない傾向が確認された。さらにスマートフォン回答の場合,若年層ほど回答の質が低い傾向が緩やかになることも示された。今後は,スマートフォン回答を前提として回答しやすい設計を目指すとともに,地理学研究における利用可能性と課題を検討していく必要がある。