日本調理科学会大会研究発表要旨集
2023年度大会(一社)日本調理科学会
セッションID: 2P-14
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ポスター発表
グラニュ糖と粉砕糖の加熱熔融特性がクッキーの品質に及ぼす影響
*坂本 薫森井 沙衣子加藤 舞子山本 絢子由井 可奈子柴 美佐紀
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抄録

【目的】グラニュ糖は,スクロース結晶でありその純度は高いにもかかわらず,加熱熔融特性の異なるものが存在する。また,粉砕によってもその加熱熔融特性は変化する。これまで,加熱熔融特性の異なるグラニュ糖や双目糖およびそれらを粉砕したものを用いてカラメルソースやキャンディを調製し,味や色などに差異が認められることを明らかにした。これらの特性はクッキーなどの焼き菓子にも影響を及ぼしていることが推察される。そこで粉糖が使用されることの多いクッキーを調製し,グラニュ糖の粉砕がクッキーの品質にどのような影響を及ぼすかについて実験を行った。

【方法】市販グラニュ糖W(粒度0.50±0.06 mm)を用い,ボールミルにより粉砕糖WP(平均粒度40 µm)を調製した。示差走査熱量分析計(DSC, Thermo plus EVO2, (株)Rigaku)によりそれぞれの砂糖の熔融状況を観察した。これらの砂糖を用いてクッキーを調製し,偏光顕微鏡観察,走査電子顕微鏡観察,色差測定,破断強度測定,官能評価を行った。

【結果】W糖とWP糖ではDSCの吸熱カーブが異なり,加熱熔融特性が異なった。官能評価の結果,WクッキーとWPクッキーは色や外観,苦味,硬さなどで有意差が認められ,色差測定においても感知できる程度に異なることがわかった。これらの差異は,グラニュ糖を単独で焼成してキャンディを調製して行った実験結果とは異なる差異であった。顕微鏡観察では,焼成前のクッキードウにはグラニュ糖の溶け残りが認められたが,焼成後には溶けたグラニュ糖が小麦粉澱粉の粒構造を包み込むように固まっている様子が観察された。これらのことから,クッキーでは,温度の上昇とともに融け残っていた砂糖が砂糖の融点に達する前に少量の水分に溶解したことが推察された。

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