2026 年 78 巻 2 号 p. 65-78
近年のコロナ禍やテレワークの普及,さらには地方創生の流れを背景に,コワーキングスペース(CWS)の数は増加している。CWSには,地域内外の人々をつなぐハブとしての拠点機能も期待されている。しかし,その利用者の特性,とりわけ地域に関連する意識や行動については必ずしも明らかではない。そこで本研究では,大規模なインターネット社会調査(GULP)のデータを用い,CWS利用者の個人属性および地域的な意識・行動(社会関係資本,シビックプライド,居住地選好)を定量的に把握することを試みた。分析の結果,大都市のCWS利用者には若年層や学歴・収入の高い男性が多い一方で,非大都市ではより多様な層による利用がみられた。また,大都市では社会関係資本を豊富にもつCWS利用者が多く,さらに,移動性や移動志向,農村への居住地選好の強さがCWSの利用に関連することも明らかになった。これらの結果を総合すると,地方に展開したCWSがハブ拠点化し,地域内外の関係性の結節点となりうる可能性が示唆される。
In recent years, the number of coworking spaces (CWS) has increased, driven by the COVID-19 pandemic, the spread of telework, and policy initiatives promoting regional revitalization. CWS are expected to serve as hubs that connect people both within and beyond local communities. However, the characteristics of their users—particularly their regional attitudes and behaviors—have not been fully examined. This study therefore seeks to quantitatively capture the personal attributes of CWS users, as well as their regional attitudes and behaviors (i.e., social capital, civic pride, and residential preferences), using data from a large-scale online social survey (GULP).The analysis revealed that in major cities, CWS users are predominantly young, highly educated, high-income men, whereas in non-major cities, user profiles are more diverse. In major cities, many CWS users exhibit high levels of social capital, and their use of CWS was also found to be associated with residential mobility, a strong intention to relocate, and, in particular, a preference for living in rural areas. Taken together, these findings suggest that the expansion of CWS in rural areas may enable them to develop into hubs that function as nodes of connection between local and external networks.
オフィスは,中枢管理機能論やCBD研究をはじめとする都市地理学の重要な研究対象となってきた(阿部, 1991; 古賀, 2014; 山崎, 2001)。伝統的なオフィス空間は,都心部において,一定の時間と空間を同じ企業・組織が占有する状況を出現させ,構成員が固定的で同質的な「職場」で働くことを当たり前のものとして定着させた。しかし近年,働き方(ワークスタイル)とともに,働く場所(ワークプレイス)の多様化が注目を集めるようになった。その受け皿となるフレキシブルオフィスの一つに,コワーキングスペース(Coworking space:以下,CWS)がある。
CWSは端的にいえば多数の個人と組織による共有のオフィスであるが,その特徴は利用者間の関係性にある。コワーキングは「働く個人がある場に集い,コミュニケーションを通じて情報や知恵を共有し,状況に応じて協同しながら価値を創出していく働き方」(宇田, 2013, p.115)と定義される。そして,CWSでは多様な職種・業種の人々が空間をシェアし,時に意見やアイデアを交換しながら,それぞれがそれぞれの仕事をすることが想定されている(埴淵, 2014)。
CWSは2006年にサンフランシスコで,日本では2010年に神戸で初めて誕生したとされ,少なくともこの名称による歴史は短い(佐谷, 2012)。しかしその後世界各地へと急速に拡大し,スペース数は日本国内に限っても2016年時点で700以上(阿部・宇田, 2017),2022年12月時点では2, 129に達したとされる(三宅, 2023)。2010年代前半はいわば黎明期にあたり,独立した小規模なスペースが多かったものの,2010年代後半以降は不動産大手や外資系企業の参入が本格化した。さらに同時期,日本では地方創生が主要な政策課題に浮上するなかで,リモートワークの実現や地域課題解決を後押しする一つの方策として,CWSが政策的にも注目を集めるようになった。そして2020年以降は,コロナ禍によるリモートワークの普及や固定オフィスの削減が契機となり,CWSの施設数や利用者がさらに増加している(星野ほか, 2023)。
CWSは当初大都市に集中しており,なかでも,IT・ハイテク産業やクリエイティブ人材が集中する「創造都市」(フロリダ, 2008)への立地が特徴とされてきた(Moriset, 2013)。これは,CWSの利用者にクリエイターやエンジニアが多いことと関連しており,国内のCWSについても三大都市圏や東京都,渋谷などへの集中が早くから指摘されてきた(宇田・阿部, 2016; 佐谷・藤木, 2012; 埴淵, 2014)。その一方,最近では非都市的地域にも多くのCWSが出現し,縁辺地域や農村を対象とした研究への注目も高まりつつある(Bosworth et al., 2023; Vogl and Akhavan, 2022)。日本でも大都市だけでなく中小都市や中山間地域でのCWSの設立が相次ぎ,主に2010年代後半から「地方展開」がみられるようになった(宇田・阿部, 2016; 埴淵, 2019)。その背景には,国が主導する地方創生の潮流がある。CWSは地方におけるテレワーク,リモートワーク,ワーケーションといった多様な働き方の受け皿として活用され,近年は自治体による設立・運営・支援も進められてきた(総務省, 2015; 星野ほか, 2023)。
2. 先行研究の課題と本研究の目的CWSに関する社会科学的な分析は必ずしも多くないものの,施設数の急増を受けて研究蓄積が急速に進みつつある(Merkel 2015; Berbegal-Mirabent 2021)。従来,研究の関心は主にCWS内部の空間または建物に向けられており,都市や地域といった外部への影響を議論する研究は限定的であった(Brown, 2017; Jamal, 2018)。しかし,CWSは地域経済や都市再開発,社会関係の創出などの諸側面で周辺地域・都市への波及効果をもつ。さらに最近では,農村的CWS(Rural coworking spaces)の立地とその地域的諸影響への関心も高まっている (Bosworth et al., 2023; Vogl and Akhavan, 2022)。ここから,建物周辺の地価上昇を通じたジェントリフィケーションへの関与や,知識労働者の流出抑制による農村人口への影響,移住者と地域住民との交流拠点としての機能など,CWSの地域的な影響と役割を問う派生的な研究課題が多く生まれている。
国内のCWSに対しては,その実態把握を目的とする研究が主に経営学や建築学で進められてきた。阿部と宇田による一連の包括的な研究は,日本全国のCWSを対象とした全数調査に基づいて,施設の開設・閉鎖数,設備,運営組織,イベント活動,売り上げ・費用等の様々な実態を明らかにした(阿部・宇田, 2015, 2016, 2017; 宇田・阿部, 2015, 2016, 2018)。一方,CWSの地域的な意義や役割を考えるうえでは,利用者の情報も重要になる。従来の研究では,CWSの利用者に30代男性の専門技術職が多いことなどが指摘されてきた(宇田・阿部, 2015; 埴淵, 2014)。しかし,研究の多くはCWSでの来場者調査に依拠しており,対象が限られる。他方で,出現率の低いCWS利用者をとらえるには大規模な標本が必要であり,一般住民を対象にした標本調査は困難であった。このような制約から,利用者特性についてはまだ断片的な理解にとどまっている(埴淵, 2019)。
さらに近年は,地方創生をめぐる政策的動向やコロナ禍を通じて普及したリモートワークにより,新たなCWS需要の創出がみられる。それを受けて,CWSが大手企業の従業員や地方移住者など,新たな利用者を惹き付けていることも予想される。また,CWSの周辺地域への波及効果として,近年はとくに地方において地域住民と訪問者,移住者などの関係をつなぐハブとしての拠点機能が指摘されている(星野ほか, 2023; 松村・佐藤, 2022)。こういった新たな動向を記述し,さらに地域的な役割や波及効果を推し量るうえでは,年齢や職業といった属性だけでなく,利用者の地域に対する意識や行動面からもその特徴をとらえていくことが必要になる。そこで本研究では,CWS利用者の地域的な意識・行動として,以下の三点に注目する。
第一に,利用者と近隣コミュニティとの関わりとして,社会関係資本(Social capital)に注目する。CWSは利用者間の交流を重視するが,それが施設を超えて地域の社会関係資本と接続する可能性を検討したい。近隣住民に対する信頼感やネットワークのようなローカルな社会関係資本(埴淵, 2018)は,CWS内で形成される「職場」の社会関係資本(Cabral, 2021)とは異質であるように思われる。しかし,多様な住民間の関係をつなぐ拠点機能がとくに地方で期待されていることを踏まえると,CWS利用者が地域でどのようなつながり(近所付き合いや様々な活動への参加など)を有しているのかは,CWSの地域的な意義・役割を論じるうえで重要なポイントになりうる。
第二に,「市民としての誇り」を意味する,シビックプライド(Civic pride)との関係に注目する(伊藤, 2017)。この概念は,地域に何らかの帰結をもたらす人々の意識や行動という点では社会関係資本に通じる部分があるものの,地域に対してより能動的・積極的に関与する意識・行動を表すものである。もし利用者がシビックプライドを強くもち,地域への積極的な参画を志向するのであれば,CWSは地域課題や社会課題の解決を目指す,ソーシャルイノベーションの創出拠点となることも期待される。
第三に,現在地・大都市圏・農山漁村のそれぞれに対する将来的な居住地選好の強さに注目する。仮に,現在地での居住継続意思が強い人ほどCWSを利用する傾向がみられた場合,利用者はより長期的なつながりを求め,結束的でローカルな社会関係資本の蓄積やシビックプライドの醸成に寄与するとの仮説が導かれる。他方で,現在とは異なる地域への選好が強い人(たとえば農山漁村を志向する大都市居住者)ほどCWSを利用していた場合は,移住前後のCWS利用を通じて,地域住民や訪問者,他の移住者らとの新たなネットワーク(橋渡し型社会関係資本)の構築に寄与する効果が考えられる。これはCWS側からみると,多様な居住経歴をもつ人々が集まりやすく,地域住民と移住者などをつなぐ拠点機能を発揮しやすいことを意味する。
以上を踏まえ,本研究ではCWS利用者の個人属性および地域的な意識・行動(社会関係資本,シビックプライド,居住地選好)を定量的に把握することを目的とする。それを通じて,CWSの地域的な意義と役割を問うための基礎資料を提示することとしたい。なお,筆者は同様の関心に基づき,2017年に試行的なウェブ調査とクラウドソーシング調査を実施した(埴淵, 2019)。その結果,CWSが地方展開する兆候を見せつつも利用者は東京圏に多く,また居住地選好でも大都市志向のほうがCWSの認知や利用と正の関連をもつこと,また結束型・橋渡し型いずれの社会関係資本もCWSの認知や利用と関連することを指摘した。ただし調査は2017年に実施されたものであり,地方創生やリモートワークの観点からするとその影響が十分に反映された段階とはいえない。また,サンプルサイズ(n = 1,000)の面でも,調査時の利用実態の把握としては不十分であった1)。したがって,本研究では問題意識を踏襲しつつも,2020年時点(コロナ禍以後)の新たな大規模データを用いてこの問題に取り組むこととしたい。
本研究では,2020年10-11月に実施されたインターネット調査である「都市的ライフスタイルの選好に関する地理的社会調査」(GULP:Geo-social survey for Urban Lifestyle Preferences)のデータを利用する。ここではGULPの主たるデータである「大都市調査」(n = 30,000)と,ベンチマーク調査の一つである「非大都市調査」(n = 3,000)を分析に用いた。それぞれ,21大都市(東京特別区と政令指定都市)および非大都市(21大都市以外の市町村)に居住する20-69歳が対象であり,調査会社の登録モニターから年齢・性別・地域(大都市調査は21都市,非大都市調査は地方6区分)の構成比が母集団人口(令和2年住民基本台帳人口)に比例するよう,割当法による抽出が実施された。GULPでは3種類の調査票を無作為に割り当てており,本研究はこのうちCWSの利用に関する質問が含まれる調査票Bを用いた。学歴・所得の欠損値をもつ回答者を除外した最終的な分析ケース数は,大都市調査が8,789,非大都市調査が878である。なお,調査は東北大学大学院工学研究科「人を対象とする研究に関する倫理委員会」の承認(20A-10)を受け,実査は株式会社日本リサーチセンターに委託しておこなわれた。個票データは東京大学社会科学研究所が運営するSSJデータアーカイブに寄託・公開されている(調査番号1468-69,1471-72)。調査の詳細については埴淵(2022)を参照されたい。
2. 変数CWSの利用状況としては,「過去1年間に利用したことがあるシェアサービスを選んでください」という複数回答設問(設問番号:B2)において,「コワーキングスペース(シェアオフィス)」を選択したものを利用あり(= 1)として従属変数に用いた。
独立変数には,まず基本的な利用者特性として,回答者の年齢(20-69歳:5歳階級値を連続値として使用),性別(男性ダミー),配偶関係(有配偶ダミー),職業(専門・技術職ダミー),学歴(大卒・大学院卒ダミー),所得(等価世帯所得:連続値),居住年数(連続値)を設定した。所得と居住年数については回答選択肢の中間値(例えば「500~700万円未満」は600万円,「1~5年未満」は3年)に変換したうえで連続値として利用した。職業や学歴などを単一のカテゴリとしてダミー変数化し,所得・居住年数を連続値として処理したのは,後述のようにCWSの利用率が著しく低く,元の選択肢のままでは利用者が0となるカテゴリが生じて回帰分析に利用できない場合があったためである。
次に,研究目的に関連して,個人レベルの社会関係資本およびシビックプライドに関する合成指標を用いた(第1表)。社会関係資本については,近所付き合いに対する4項目の意識設問を足し合わせたものをローカルな認知的社会関係資本指標(大都市:α = 0.87,非大都市:α = 0.87),5種類の活動への参加状況を足し合わせたものを構造的社会関係資本指標(大都市:KR-20 = 0.62,非大都市:KR-20 = 0.66)として分析に利用した。また,シビックプライドについては,伊藤(2017)が抽出した「愛着」「アイデンティティ」「持続願望」「参画」という4項目に対応する設問項目を足し合わせた指標(大都市:α = 0.88,非大都市:α = 0.88)を作成した2)。また,居住地選好を表す変数として,将来的に暮らしたい場所を問う設問のうち「現在の市区町村に住み続けたい」「農山漁村で暮らしたい」「大都市圏で暮らしたい」に対して「そう思う(= 4)」~「そう思わない(= 1)」までの4段階の値を,それぞれ現在地選好,農村選好,大都市選好の強さを示す指標として利用した。
さらに,CWSへのアクセシビリティを示す指標として,地域別のCWS数を用いた。資料は「コワーキング.com」(https://co-work-ing.com/)の掲載情報を定期的に集計した三宅(2023)に依拠し,GULPの調査時期と最も近い2020年8月の値を用いた。ただし三宅(2023)には,都道府県別および東京23区別の値はすべて実数が掲載されているものの,都市別では上位25都市のみに限られている。多くの政令指定都市はこの25都市に含まれるものの,一部の都市の値は不明である。ここでは便宜的に,掲載都市の最小値が5であることを踏まえ,記載されていない政令指定都市の値に範囲(0-4)の中間値である「2」を代入して分析に用いた。また,上位の都市に著しく偏った分布を示すため,分析には対数変換した値を用いた3)。このデータの利用可能性を踏まえ,大都市を対象とした分析では都市別,東京特別区を対象とした分析では区別,非大都市を対象とした分析では都道府県レベルのCWS数を用いた。
| 質問文 | 項目 | 回答選択肢 | 変数作成 |
| 認知的社会関係資本指標 | |||
| ご近所の方との関係について,どう思いますか。(Q4) | ・近所の人は一般的に信頼できる ・近所の人と互いに助け合っている ・近所の人の勤め先や家族構成を知っている ・自分はこの地域の一員だと感じる |
そう思う まあそう思う どちらともいえない あまりそう思わない そう思わない |
「そう思う」 = 5~「そう思わない」 = 1として4項目の値を合計 |
| 構造的社会関係資本指標 | |||
| 以下の団体やクラブの活動に参加していますか。(Q9) | ・地域の活動(自治会,町内会,消防団など) ・子どもに関する活動(PTA,父母の会,子ども会など) ・趣味に関する活動(スポーツ,趣味・文化サークルなど) ・政治に関する活動(政治団体,後援会など) ・社会的な活動(ボランティア,NPO,市民活動など) |
参加している 参加していない |
「参加している」と回答した活動数 |
| シビックプライド指標 | |||
| お住まいの地域について,あなたご自身のお考えを教えてください。(Q2) | ・この地域に愛着がある ・この地域を自分の手で良くしたい ・この地域の文化や景色を残したい ・自分の人生はこの地域に強く結び付いている |
強くそう思う ややそう思う どちらともいえない あまりそう思わない 全くそう思わない |
「強くそう思う」 = 5~「全くそう思わない」 = 1として4項目の値を合計 |
CWS利用の有無を従属変数,個人属性および地域に対する意識・行動変数,また地域のCWS数を独立変数とする,マルチレベル・ロジスティック回帰分析をおこなった。分析に際しては,① 大都市調査(21大都市)と ② 非大都市調査(21大都市以外)のそれぞれについて,同じ変数を投入した回帰モデルを検討した。これは,CWSの利用に関連する要因が大都市とそれ以外で異なる可能性があること,また,GULPは大都市調査を主として設計されており,ベンチマーク調査である非大都市調査との間には20倍以上の抽出率の差があったことを踏まえたためである。さらに,CWSの立地が東京で先行してきた経緯を踏まえ,大都市調査のうち,③ 東京特別区のみに限定した分析も補足的におこなった。なお,地域のCWS数を表すデータの利用可能性に応じて,① では個人が市にネストされた階層構造を想定して21都市を,そして ② では47都道府県,③ では23区をそれぞれグループ変数として分析した。
ここで,① と ② の区分は大都市(東京特別区と政令指定都市)であるか否かであり,大都市圏と地方圏(または農山漁村)という居住地選好等にかかわる区分と必ずしも対応するものではない。非大都市には,大都市郊外の市町村や地方の中心的都市,あるいは過疎地域を含む農山漁村地域まで多様な地域が含まれる。したがって,分析上は非大都市をさらにいくつかのグループに層別化することが望ましいものの,非大都市調査のサンプルサイズが小さくCWS利用の出現率も低いことから,推定結果が極端な値を取りやすく,解釈が困難であった。そのため本研究では,非大都市調査については全ケースを対象とした分析結果のみを示すこととした。
なお,本稿における統計学的な有意水準は5%とし,p値が0.05未満である場合に有意な差または関連があるものとした4)。
第2表には,分析対象となった大都市および非大都市における回答者の属性および意識・行動に関する変数の記述統計を示した。過去一年間におけるCWSの利用率は,大都市の回答者で2.3%,非大都市では2.5%であった。大都市よりも非大都市の値がわずかに高いものの,その差は統計学的に有意ではない。独立変数の記述統計について,大都市と非大都市の間で大きく異なる項目はみられないものの,大都市の回答者の方が平均的には年齢が若く,大学・大学院卒や高所得層が多く,居住年数は短い傾向がある。認知的・構造的社会関係資本の値はいずれも非大都市回答者のほうが高い。居住地選好については,大都市住民が大都市圏,非大都市住民が農山漁村を選好する度合いがそれぞれ強い傾向がみられる。
大都市,非大都市,東京特別区を対象とした回帰分析の結果を示したのが第3表である。大都市と非大都市に共通する傾向として,年齢はCWS利用と強い負の関連を示した。オッズ比はおよそ0.7~0.8であることから,年齢が5歳上がるとCWSを利用する見込みが20-30%ほど低下すると解釈できる。大都市の回答者においては,他にも男性ダミー,大学・院卒ダミー,等価世帯所得が有意な正の関連を示し,社会経済的地位の高い若年男性が大都市の主な利用者特性であることがうかがえる。非大都市でも大学・院卒ダミーは有意傾向(p < 0.1)を示すものの,それ以外に大都市と共通する個人属性はみられない。東京特別区の結果は大都市全体のそれと類似するものの,5%水準で統計学的に有意な関連がみられたのは年齢と性別のみであった。
次に地域的な意識・行動との関連について結果を確認すると,大都市では認知的・構造的社会関係資本指標がいずれも正の有意な関連を示し,これらの値が高い住民ほどCWSを利用しやすい傾向が認められた。これに対して非大都市では,いずれの社会関係資本指標もCWS利用と有意な関連を示さなかった。ただし,構造的社会関係資本が高い回答者ほどCWSを利用しやすいという関係は有意傾向(p < 0.1)であった。また東京特別区の結果は,認知的社会関係資本が有意傾向(p < 0.1)にとどまるものの,大都市全体の分析結果とほぼ同じ点推定値を示しており,類似の傾向であると読み取れる。これに対して,シビックプライド指標については大都市,非大都市,東京特別区のいずれにおいても有意な関連がみられなかった。
居住地選好に関する結果をみると,大都市の場合はいずれの変数も有意であり,現在地に対しては負の関連,農山漁村と大都市圏に対してはともに正の関連を示した。大都市の回答者については現在地での居住年数も負の有意な関連を示したことから,長期居住者ほど,そして定住意向が強い住民ほどCWSを利用しない傾向が認められる。非大都市および東京特別区の場合,現在地と大都市圏に対する選好はCWS利用との有意な関連を示さなかった。他方で,農山漁村への選好は非大都市の場合に5%水準で有意な正の関連を示し,東京特別区ではこれが有意傾向(p < 0.1)であった。さらに,地域のCWS数については,大都市(都市レベル),非大都市(都道府県レベル),東京特別区(区レベル)のいずれにおいても有意な関連は認められなかった。
| 大都市(n= 8,789) | 非大都市(n= 878) | 群間差a) | |||||||
| Min | Max | n / mean | % / SD | Min | Max | n / mean | % / SD | ||
| CWS利用経験 | 0 | 1 | 198 | 2.3 | 0 | 1 | 22 | 2.5 | |
| 年齢(20-69歳:5歳階級値) | 1 | 10 | 5.5 | 2.6 | 1 | 10 | 5.9 | 2.7 | *** |
| 男性ダミー | 0 | 1 | 4,522 | 51.5 | 0 | 1 | 454 | 51.7 | |
| 有配偶ダミー | 0 | 1 | 5,008 | 57.0 | 0 | 1 | 541 | 61.6 | ** |
| 専門・技術職ダミー | 0 | 1 | 1,295 | 14.7 | 0 | 1 | 117 | 13.3 | |
| 大学・院卒ダミー | 0 | 1 | 4,906 | 55.8 | 0 | 1 | 453 | 51.6 | * |
| 等価世帯所得(100万円) | 0.0 | 22.5 | 4.1 | 2.7 | 0.0 | 22.5 | 3.7 | 2.4 | *** |
| 居住年数(年) | 0.5 | 25.0 | 12.9 | 9.3 | 0.5 | 25.0 | 14.9 | 9.8 | *** |
| 認知的社会関係資本指標 | 4 | 20 | 11.7 | 3.6 | 4 | 20 | 12.1 | 3.7 | ** |
| 構造的社会関係資本指標 | 0 | 5 | 0.6 | 1.0 | 0 | 5 | 0.8 | 1.2 | *** |
| シビックプライド指標 | 4 | 20 | 12.8 | 3.6 | 4 | 20 | 12.7 | 3.7 | |
| 居住地選好(現在地) | 1 | 4 | 3.0 | 0.9 | 1 | 4 | 2.9 | 0.9 | ** |
| 居住地選好(農山漁村) | 1 | 4 | 1.7 | 0.8 | 1 | 4 | 1.9 | 0.9 | *** |
| 居住地選好(大都市圏) | 1 | 4 | 2.5 | 1.0 | 1 | 4 | 2.2 | 1.0 | *** |
| CWS数(対数)b) | 0.7 | 5.8 | 3.4 | 1.7 | 0.7 | 5.9 | 3.1 | 1.2 | n.a. |
Min:最小値,Max:最大値,n / mean:ケース数または平均値,% / SD:割合または標準偏差,n.a.:not applicable, ***:p < 0.001, **:p < 0.01, *:p < 0.05, +:p < 0.1
a) Fisherの正確確率検定(二値)またはt検定(連続値)による
b) 大都市は「市」,非大都市は「県」レベルのCWS数
| 大都市(n= 8,789) | 非大都市(n= 878) | 東京特別区(n= 2,361) | ||||
| OR | 95%CI | OR | 95%CI | OR | 95%CI | |
| 年齢 | 0.79*** | (0.73-0.86) | 0.70** | (0.54-0.90) | 0.77*** | (0.67-0.89) |
| 男性ダミー | 2.07*** | (1.45-2.95) | 0.55 | (0.21-1.47) | 2.00* | (1.12-3.58) |
| 有配偶ダミー | 0.96 | (0.68-1.35) | 0.35+ | (0.11-1.09) | 0.84 | (0.47-1.51) |
| 専門・技術職ダミー | 0.95 | (0.64-1.39) | 0.79 | (0.20-3.08) | 1.12 | (0.61-2.06) |
| 大学・院卒ダミー | 1.51* | (1.05-2.16) | 3.25+ | (0.97-10.87) | 1.77 | (0.90-3.51) |
| 等価世帯所得 | 1.06* | (1.01-1.12) | 0.98 | (0.77-1.24) | 1.06 | (0.98-1.15) |
| 居住年数 | 0.97** | (0.95-0.99) | 0.99 | (0.94-1.04) | 0.97 | (0.94-1.01) |
| 認知的社会関係資本指標 | 1.09** | (1.03-1.16) | 0.97 | (0.82-1.16) | 1.10+ | (1.00-1.20) |
| 構造的社会関係資本指標 | 1.50*** | (1.35-1.68) | 1.42+ | (1.00-2.02) | 1.53*** | (1.25-1.88) |
| シビックプライド指標 | 1.05 | (0.98-1.11) | 1.06 | (0.88-1.28) | 0.99 | (0.89-1.10) |
| 居住地選好(現在地) | 0.71** | (0.58-0.86) | 1.01 | (0.52-1.97) | 0.82 | (0.58-1.16) |
| 居住地選好(農山漁村) | 1.51*** | (1.29-1.79) | 1.87* | (1.05-3.36) | 1.31+ | (0.98-1.74) |
| 居住地選好(大都市圏) | 1.39*** | (1.16-1.67) | 1.13 | (0.68-1.90) | 1.15 | (0.83-1.60) |
| CWS数a) | 1.07 | (0.98-1.17) | 0.96 | (0.62-1.50) | 1.00 | (0.79-1.27) |
OR:オッズ比,CI:信頼区間,***:p < 0.001, **:p < 0.01, *:p < 0.05, +:p < 0.1
a) 大都市は「市」,非大都市は「県」,東京特別区は「区」レベルのCWS数
本研究では,CWS利用者の特徴をインターネット調査によって定量的に把握することを試みた。調査では過去一年間におけるCWS利用の有無を尋ねており,頻度や内容は不問であるため,なかにはイベント利用のような使い方も含まれうる。それにもかかわらず,該当者は大都市と非大都市のいずれも2%台にとどまった。また,この値にはインターネット調査ゆえの偏りが一定程度含まれるため,利用率の真値はさらに低い可能性が高い5)。実際に,非公募型パネルを用いたGULP全国郵送調査によるCWS利用率はわずか0.7%と,インターネット調査に比べてさらに低い水準であった。つまり,近年の施設数の増加にもかかわらず,CWS利用率は全体としてみると未だ低い水準にあるといえる。
ただし,地域差についていえば,大都市と非大都市の利用率に有意な差はみられなかった。この結果から,CWS利用は2020年時点ですでに大都市に限られたものではなく,地方圏を含む非大都市まである程度拡大していたことがうかがえる。むろん,ここでいう非大都市には大都市郊外から農村地域までが含まれるものの,総じていえば,2010年代後半以降のCWSの地方展開が利用者側のデータにも表れたとみることが可能であろう。「コワーキング.com」掲載数に基づくと,全国のCWS数は2015年の300から2020年には1,062へと増加している。一方で都道府県別にみると,同じ時期に東京都のシェアは44%から34%へ,三大都市圏6)のシェアは77%から65%へと減少しており,地方圏での設立が相対的に進んだことがわかる。人口あたりCWS数の変動係数(CV)も1.11から0.64へと低下し,地理的に平準化してきた。CWS数がCWS利用と関連しなかったとの結果も踏まえると,施設へのアクセスは一定程度充足されたうえで,特定の層によって選択的に利用されている状況がうかがえる。
CWS利用者の特徴としては,若年層ほど利用しやすい傾向が確認された。30-40代が主たる利用者層であるとする報告も多いものの(宇田・阿部, 2015; 埴淵, 2014),今回のデータではとりわけ大都市において20代の利用率が高い値を示した7)。ただし,今回は利用形態や頻度を考慮していないため,たとえばドロップインとよばれる一日または時間単位での利用や,イベント会場としての利用などがより強く反映された可能性もある。他にも,性別や学歴,所得による差が確認され,社会経済的地位の高い男性がとくに大都市でCWSを利用しやすい傾向がみられた。ただし,職業(専門・技術職)との有意な関連はみられなかったため,多様な職業に利用が広がっている可能性がある。また非大都市では,性別と所得による利用傾向の違いもなく,大都市に比べて利用者層がさらに多様であることが示唆された。
2. 利用者の地域的な意識・行動CWS利用者の地域的な意識や行動について,まず大都市では利用者の社会関係資本が非利用者よりも高い水準にあることが示された。これには,近所付き合いや活動参加が活発であるほど新たな情報やイベント等を通じてCWSの利用機会を得やすいこと,逆に,CWS利用を通じて各種の活動参加の機会が得られることなどが考えられる(埴淵, 2019)。とりわけ,大都市において近所付き合いにかかわる認知的社会関係資本がCWS利用と関連していた点は特徴的であり,この傾向は非大都市では確認できなかった。大都市では,認知的社会関係資本の水準自体は非大都市より低いものの,CWS利用者は近隣住民との関係を相対的に重視しているとの見方ができる。むろん,ここで因果関係を確かめることは難しいものの,ローカルな社会関係資本を多くもつ人ほどCWSを利用しやすいという傾向は,CWSが異なるコミュニティ間をつなぐハブになりやすいことを示唆する。
これに対して,シビックプライド指標は,大都市・非大都市のいずれにおいてもCWS利用との関連を示さなかった。あえて社会関係資本との違いを解釈するならば,CWSは地域に対する強い愛着や能動的な参画意思をもつ人々よりも,日常的な交流(近所付き合いおよび各種の活動参加)を重視する人々を惹き付けやすいといえる。ただし,社会関係資本とシビックプライドには,概念的に重なり合う部分が少なからずある。実際に,両変数の間には一定の相関があり8),大都市データでは社会関係資本指標を同時投入しないモデルでシビックプライド指標が有意な正の関連を示すことから,シビックプライドがCWS利用と全く無関係であるとまではいえない。
居住地選好についてみると,大都市住民の場合は,居住年数が長く,将来も現在地での居住を志向する人ほどCWSを利用しない傾向が認められた。つまり,CWS利用は定住よりも移動志向と結び付いている。その理由は定かではないものの,長期的な居住者はすでに固定オフィスなどを利用しており,新たに登場したCWSへのニーズが生じにくいこと,また,安定的なオフィス環境があることで定住意思が強まりやすいことなどが考えられる。別の見方をすれば,CWSは移住者を含む短期居住者,また将来的な移住志向者にとって利用しやすく,移動性の高い人々にとって地域への「ゲートウェイ」となりやすい可能性を読み取ることができる。
また,将来の居住地に大都市圏を選好する人ほどCWSを利用しやすい傾向が大都市でみられた一方,農山漁村を選好する人ほどCWSを利用しやすい傾向は,大都市・非大都市を問わず確認された。この分析結果はあくまで選好であり実際の移住ではないものの,従来都市的とみなされてきたCWSが,農村志向と結び付いているという結果は興味深い。またこの結果は,大都市志向のほうがCWSを認知・利用しやすいとした埴淵(2019)とは大きく異なるものであった。その理由の一部は,おそらく調査時期の違いによって説明できる。つまり,CWSの拡大と地方展開,地方創生施策,リモートワークの普及などが2010年代後半以降に並行して進んだ結果,農山漁村に対する居住地選好とCWS利用が結び付くようになったと考えられる。とくに,GULPの実施時期(2020年10-11月)はコロナ禍によるリモートワークの拡大と地方移住への関心の高まりが急速にみられた時期でもあるため,その影響が今回の結果に強く表れた可能性がある9)。
3. CWSの地域ハブ拠点化本研究が示唆するのは,大都市を起点としてCWSが地方にも展開し,それが移住と結び付いて地域内外の社会関係を取り結ぶ拠点となる可能性である。従来,CWSは都市的な施設とみなされ,研究の多くも大都市や創造都市に注目してきた経緯がある(Jamal, 2018; Moriset, 2013; Pacchi, 2018)。他方で近年は農村的CWSへの注目が各地で起こり,地域経済やコミュニティ,都市との関係性に与える諸影響にも注目が集まっている(Bosworth et al., 2023; Vogl and Akhavan, 2022)。日本でも主に2010年代後半からCWSが地方展開するのに伴い,地方でのハブとしての拠点機能が期待されるようになった(宇田・阿部, 2016; 中村, 2013; 埴淵, 2019; 星野ほか, 2023; 松村・佐藤, 2022)。なかでも中村(2013)は,CWSが日本に登場した直後の段階ですでに「地域のコミュニティ拠点化」の動向に言及し,地方展開したCWSが自治体,大学,企業,NPOなどを巻き込みながら地域のコミュニティ機能を担う可能性をいち早く指摘した。本研究は利用者側のデータから,これを支持するいくつかの知見を示したものといえる。
なお,地方のCWSを論じるうえで欠かせないのが,行政との関係である。背景としては国が主導する地方創生の潮流があり,地方におけるテレワーク,リモートワーク,ワーケーションといった多様な働き方の受け皿としてCWSの活用が期待されている。具体的には,補助金・助成金によるCWS支援のほか,自治体による設立・運営・支援も進められてきた(総務省, 2015; 星野ほか, 2023)。例えば,松村・佐藤(2022)は,山形県内で地方創生事業の一部として行政によるCWSの設置が進んだことを指摘している。地方でのCWS開設を支援する国や地方自治体の補助金・助成金も多くあり,それはコロナ禍を経て地方での需要が高まることでさらに増えたとされる(星野ほか, 2023)。
また,地方のCWSには,大都市のそれと比べて役割や利用者層に違いがあることも指摘されている。行政が設置するCWSには産業振興や起業支援だけでなく,より広く産学官や訪問者と地域住民との「連携」や関係人口の創出を促す機能があり,このことが地方において極めて重要な意味をもつとされる10)(松村・佐藤, 2022)。さらに,地方のなかでもとくに小規模自治体や離島のCWSは,移住相談やワーケーション利用,あるいは地域住民のコミュニティスペースなど多様な機能をもち,地域内外のコミュニケーションハブとなっているところもある(星野ほか, 2023)。すなわち,従来は大都市・創造都市の文脈で注目されたCWSが,地方創生・移住の推進という文脈のもとで,地理的な移動性の高い人々をつなぐ地域のハブ拠点として,とくに地方において新たな役割を期待されているといえる。
本研究の結果は,こういったCWSと社会関係資本,移動性の連関を部分的に示したものであり,さらなる検討の必要性を提起する。大都市住民のCWS利用者は,近隣の社会関係や活動参加が活発であるものの,現在地での継続居住意思が弱く,農山漁村への居住選好をもつ人が少なくない。こういった層の一部が実際に地方移住(または二地域居住やワーケーションなど)した場合,移動先にCWSがあればそこを拠点に利用しやすく,地域内外に多様なつながりをもたらすことが考えられる。この意味では,CWSが移住者や関係人口の拠点として機能するという指摘(松村・佐藤, 2022)とも親和的な結果である。そして,移住者が持ち込む新しいつながりや異質な関係性は,地域の変革や活性化に寄与することも期待されている(狭間, 2017)。以上の諸点に鑑みると,地方のCWSには地域内外の人々をつなぐハブ拠点として,都市以上に多面的な役割が求められているといえよう。ただし,ここでの考察は断片的な相関をつなぎ合わせたものに過ぎず,実際にこういった地方移住とCWS,社会関係資本の有機的な連関が生じているのかは,さらなる調査を積み重ねることで明らかにしていく必要がある。
本研究の目的は,CWS利用者の個人属性および地域的な意識・行動(社会関係資本,シビックプライド,居住地選好)を定量的に把握し,CWSの地域的な意義と役割を議論する基礎データを示すことであった。依然として低い利用率からわかるように,CWSは伝統的なオフィスを代替するような量的インパクトをもつわけではない。しかし,この新たな形態の「職場」は,多様な人々の移動性と社会関係を媒介しつつ, 「地域」にも様々な波及効果をもたらすことが期待される。この意味で,CWSは伝統的なオフィス立地研究にとどまらず,都市地理学や経済地理学,あるいは人口地理学や農村地理学の様々なトピックに紐づけて論じることが可能な,重要な研究対象といえるだろう。
本研究では,インターネット調査(GULP)のデータを用いてCWS利用に関連する要因を統計分析することで,以下の諸点を明らかにした。まず,CWSの利用者には若年層が多く,とくに大都市では学歴や収入の高い男性が利用しやすい傾向がみられた。一方で,非大都市では明確な傾向がみられず,利用者層がより多様である可能性が示唆された。次に,大都市ではCWS利用者がより高い認知的・構造的社会関係資本を有することが示されたものの,シビックプライド指標とは有意な関連がみられなかった。また,定住傾向・定住志向の強い大都市住民ほどCWSを利用しておらず,むしろ移動性や移動志向の強さが利用傾向と関連していた。とくに,農山漁村に対する居住地選好をもつ人ほど大都市・非大都市を問わずCWSを利用しやすいことも確認された。
本研究が示したのは横断分析に基づく変数間の関連性であるが,そこから結果をつなぎ合わせると,CWSと社会関係資本,移動性の連関を読み取ることができ,地方展開したCWSがハブ拠点となる可能性が導かれる。CWSは移動性が高く職業または居住経歴が多様な人々をつなぐ拠点となり,社会関係資本を涵養する場として機能しうる。大都市では職業や専門性が異なる人々をつなぐ一方,地方では移住・関係人口の結節点として居住経歴の異なる人々を結び付けるといった可能性も考えられる。大都市や創造都市を特徴づける新たなオフィス空間として注目されたCWSは,コロナ禍や地方創生という文脈のもとでその役割を再定義しつつあると解釈できるのかもしれない。ただし,このような見通しは結論というよりもむしろ,今後の検証課題というべきである。
残された課題は他にもある。CWSおよびその利用者はまだ増加の途上にあるため,本研究で示された利用者特性が今後さらにどう変化していくのかは未知数である。とくにサンプルサイズの観点から,本研究では非大都市の分析が不十分であり,なかでも地方圏の利用者の特徴については調査の余地が大きい。また,CWSはコロナ禍を経てなお拡大してきたものの,これまでに閉鎖したスペースも少なくない。地域のハブ拠点として役割を果たすためには,ある程度の期間運営が継続することも重要であるため,CWSの維持・継続要因に関する研究も求められよう。これらの諸点を今後の研究課題としたい。
本研究の実施にはJSPS科研費JP17H00947, JP18KK0371, JP24K00176の助成を受けた。
1) 出現頻度の低さから,埴淵(2019)ではCWS利用を現在利用していない(過去に利用したことがある)人を含めた利用経験として扱っている(それでも利用経験率は3.7%)。また,利用ではなく「認知」(14.1%)も分析の対象とするなど,データ上の制約が非常に大きかった。
2) クロンバックのα係数(Cronbach’s alpha)とKR-20(Kuder-Richardson Formula 20)は,尺度の内的一貫性の度合いを示す指標であり,前者は連続値,後者は二値データに対して用いられる。いずれも0~1の値をとり,1に近いほど強い内的一貫性があることを意味する。認知的社会関係資本指標とシビックプライド指標にはそれぞれ強い一貫性がある(α > 0.8)。構造的社会関係資本指標の一貫性はそれよりも弱いものの(KR-20 > 0.6),この指標はそもそも異なる活動を足し合わせた得点であるため,本研究においては問題ないと判断した。なお,シビックプライド指標については下位概念ごとに分析することも考えられるが,本研究では全体的な関連性を優先して検討することとした。
3) 東京23区のデータには0を含む場合があったため,全区に1を足してから対数変換する処理をおこなった。
4) ただし,CWS利用率の低さや非大都市サンプルの小ささを考慮し,p値が5%-10%未満の場合も有意傾向(Marginally significant)として言及することとした。
5) たとえば,インターネット調査の回答者は高学歴に偏ることが知られており,高学歴者ほどCWSを利用しやすい傾向を踏まえると,ここで示されたCWS利用率は過大推計である可能性が高い。
6) ここでの三大都市圏は,東京圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県),名古屋圏(愛知県・岐阜県・三重県),大阪圏(大阪府・兵庫県・京都府・奈良県)を合わせたものとした。
7) 大都市の場合,利用率は20代・30代・40代でそれぞれ4.6%・3.4%・2.3%と,年齢が上がるほど低い値を示す。非大都市では6.7%・6.5%・1.0%とばらつきが大きいものの,20代が最も高い点は同じである。
8) 相関係数をみると,大都市・非大都市のいずれにおいても,シビックプライド指標は認知的社会関係資本指標と0.6程度,構造的社会関係資本指標と0.3程度の相関を示す。
9) 二つの調査には,実施時期のほかにも委託先企業(モニター特性)やサンプルサイズ,そして具体的な設問レベルでもいくつかの重要な違いがある。GULPでは過去1年のCWS利用を尋ねているのに対して,埴淵(2019)では時期を限定していない(「今も利用している」と「かつて利用したことがある」を合わせて「利用」と定義)。居住地選好については,GULPが現住地・農山漁村・大都市圏のそれぞれに対する将来的な居住意思を尋ねたのに対して,埴淵(2019)では単一のスケールにおいて都市地域から農村地域までの5 段階で選好を尋ねている。このような調査法の違いから,結果の違いをすべて「変化」とみなすことには慎重である必要がある。
10) 地方ではCWSの絶対数が少ないこともあり,行政とイベントや相談などで関わる機会が多く,行政側は若者たちが新しいチャレンジをしている場所と認識しているとの指摘もある(中野,2022)。