東北地理
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山形県の水文気候環境に関する年気候学的考察
青山 高義
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1986 年 38 巻 2 号 p. 132-142

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抄録

山形県の水文気候環境の地域的相違をソーンスウェイトの方法による可能蒸発散量に基づいて, 年気候的に考察した。
可能蒸発散量は庄内平野で700mm~720mm, 山形・米沢盆地で680mm~700mm, 新庄盆地で650mmである。新庄盆地と他の2地域の箋界では660mm~680mmとなっている。温度気候的に見ると, 新庄盆地は冷温帯で他の2地域は暖温帯であるが, このような特徴は植生からも裏付けられる。さらに可能蒸発散量と水稲の作柄の関係によると, 可能蒸発散量が670mm以下では豊作にはならず, 不作または凶作の頻度が増大する。エネルギー収支式で可能蒸発散量670mmはボーエン比を0とすると正味放射量は約50W/m2となる。これらの値は植生帯からも水稲耕作からも有意なものであることが示された。
乾燥月数は, 庄内平野, 新庄盆地で1.5ヶ月, 山形・米沢盆地では2.5~3.0ヶ月になる。水不足量の最大値も大体同じ分布パターソとなって, 新庄盆地, 庄内平野で50mm前後, 山形・米沢盆地で100mm以上で200mmを越す地域もある。水不足は92年間に36回発生しているが, 2年程続けて発生する傾向が認められる。このことを考慮すると水不足は, 3~4年に1度発生することになる。水不足量は, 太陽黒点数が極小から極大に向かう4年間には大きな値が発生せず, 極大から極小に向かう時期に大きくなる傾向が認められる。以上のような水文条件の地域的な違いは, コナラ群落の分布上限高度にも認められる。

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