季刊地理学
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風化被膜から推定した木曾駒ケ岳の化石周氷河斜面の形成期
小泉 武栄関 秀明
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1992 年 44 巻 4 号 p. 245-251

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抄録

わが国の高山地域には化石周氷河斜面と呼ばれる岩塊斜面が広く分布する。この斜面は高山の地形形成を考えたり, 古環境を復元したりするためには重要な存在であるが, その形成期はまだ十分明らかにされていない。本研究では岩塊に生じた風化被膜を用い, 化石周氷河斜面を構成する岩塊の生産・移動期を明らかにしようと考えた。調査地域は中央アルプス木曾駒ケ岳の濃ケ池カール西方の, 主稜線西側に分布する化石周氷河斜面である。ここの化石周氷河斜面は径1~2mの粗大な花崗閃緑岩岩塊からなり, その大部分はハイマツによっておおわれている。最初に風化被膜の基準値として, 濃ケ池カールの新期モレーンを構成する岩礫に生じた風化被膜を調べ, 平均5.66mmという値を得た。このモレーンはおよそ2万年前の最終氷期最盛期頃の形成と推定されているものである。一方, 化石周氷河斜面をつくる岩塊の場合は, 斜面上の2箇所で調べた値がそれぞれ5.85mm, 5.64mmとなった。この値は新期モレーンの構成礫の値よりわずかに大きいが, ほぼ同じレベルの数値と考えられ, このことから濃ケ池カール西方の化石周氷河斜面の形成期を最終氷期最盛期頃と推定した。

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