季刊地理学
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東京都足立区における土地利用の変化と用途地域の対応
片柳 勉
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1994 年 46 巻 2 号 p. 107-125

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抄録

本稿では, 東京都足立区を対象に, 旧都市計画法の制定時 (1919年) から現在に至るまでの都市化の過程と用途地域の変遷を比較検討した。足立区は, 第2次大戦以前に市街化を完了した地域と, 大戦以後に急速に市街化した地域とに大きく二分できる。大戦前に市街化した地域では, 住工混在地域が広く見られるが, これは当時の用途地域 (特に工業地域) の土地利用規制が極めて寛容であったため, 結果的に住工混在地域を拡大したことによる。また近年, 住工混在地域では工場の移転跡地に住宅団地や公共施設が次々と建設されてきたが,準工業地域に代表される土地利用の用途が明確でない用途地域に変更されてきたため, 新たな土地利用の混在がみられる。一方, 戦後になって市街化した地域では, 急速な都市化の過程において実際の土地利用と用途地域との間で乖離が認められたが, 土地区画整理事業の実施に伴って用途地域が変更され, 土地利用と用途地域の目指す方向とが一致した。しかし, 実際は宅地化の一向に進まない土地が残るなど, 土地利用の混乱もみられる。

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