季刊地理学
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わが国における最終氷期後半の広域的な侵食段丘の形成
豊島 正幸
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1994 年 46 巻 4 号 p. 217-232

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抄録

わが国における最終氷期後半の河成地形発達を一般化するため, 地殻変動様式あるいは気候変化過程を異にする河川流域の河成段丘の種類や形成時期を詳細に検討した。その結果, 地殻変動の活発な奥羽・出羽両山地の諸河川に広く見られる「2万年B. P. 前後の堆積段丘離水とそれに伴う侵食段丘形成」という現象が, 緩慢な曲隆を示す北上山地刈屋川流域にも見い出され, 最終氷期後半の堆積段丘-侵食段丘連鎖が地殻変動様式に関係なく, 気候変化を契機として生成された地形であることが明らかになった。既往研究の詳細な検討によりこの時期の河成段丘連鎖が確認できる河川の分布図を作成したところ, 少なくとも東北日本一帯に分布することが判明した。また, 西南日本にも化石周氷河地形が広く分布することを考慮すると, 堆積段丘分布域はさらに南方の九州付近にまで達していた可能性が高く, 紀伊・四国・九州山地の諸河川で認められている最終氷期後半の侵食段丘は, 同河成段丘連鎖の一部であると判断された。
このような特徴的な地形 (面) を最終氷期以前の地形発達の中にも見い出すことができれば, 地形発達に依拠する新たな地形分析法の確立が可能になる。

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