季刊地理学
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仙台南方, 高舘丘陵の小流域における植生パッチと地形との対応関係
松林 武
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1997 年 49 巻 4 号 p. 247-261

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抄録

地形単位と植生単位との空間的分布の一致, 不一致を通して, 植生と地形との関係を検討するために, 相関により植生を固有の形と広がりを持つ空間的単位として把握する「植生パッチ」という概念を考案した。仙台市街南方の高舘丘陵内にある一つの三次流域において, 斜面の形状と位置の特徴で把握され傾斜変換線で区切られる微地形単位と, 植生パッチ分布域とを比較した。結果, 各植生パッチはそれぞれ異なる樹種構成をもち, 分布境界は傾斜変換線と重なることが多い。これは, 各植生パッチは土壌断面形態により代表される土壌水文環境と地表面安定度によく対応し, この土壌断面形態の特徴と広がりが, 微地形とよく対応するためと考えられる。結果として, 地形, 土壌, 植生は, カテナ的配列および対応関係を持つ。しかし, 典型的な頂部斜面および上部谷壁斜面の土壌水文環境, 地表面安定度に分布する植生は, 必ずしも頂部斜面と上部谷壁斜面の全領域に分布するわけではなく, 上部谷壁斜面の範囲内にある地形的にそれほど明瞭ではない遷急線の下部には分布しないことがある。これは, 上部谷壁斜面下部では, 典型的な上部谷壁斜面よりも地形変化が活発なためと考えられる。

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