季刊地理学
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福島県会津地方における農家兼業化の進展過程の地域性
関根 良平
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1998 年 50 巻 1 号 p. 33-48

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抄録

兼業化はわが国の農家世帯における変容として最も象徴的なもので, 近年ではさらに新しい変容をみせつつある。しかし兼業化は文字どおりプロセスなのであり, かつ地域的な多様性をもったものである。そこで本稿では福島県会津地方を対象とし, これまで等閑視されてきた兼業化プロセスの検出とともに, その特性と地域性の考察を行い, 次のような結果を得た。対象地域においては1960年~1990年をつうじて2種恒常的勤務兼業化が全体としての基調であったが, 平地部町村における専業農家の維持, 只見川流域の山間部町村での日雇兼業の残存がみられる。都市部に接近したり主要交通路沿線に位置する町村では, 当初からほぼ2種恒常的勤務兼業化のみに収束していくが, 山間部町村では1970年代前半までは出稼ぎ, 日雇, 官営兼業が多様な組み合わせをもちつつ, 1970年代後半から2種恒常的勤務兼業化が進展している。その中で人口減少が継続している山間部町村は, 老人社会の到来とともに専業と2種恒常的勤務兼業化に過度に特化する特性をもつに至る。全体としては農家自体の減少が加速し, 地域的に様々な問題が生じつつある。

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