季刊地理学
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カナダ・ニューブランズウィック州における言語使用状況とその形成要因
大石 太郎
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2001 年 53 巻 1 号 p. 1-20

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抄録
本稿は, カナダ・ニューブランズウィック州の言語使用状況とその形成要因を考察することを目的とした。また, カナダの地理学における言語社会研究で関心が寄せられてきた言語のテリトリー化についても検討した。
カナダ・ニューブランズウィック州はフランス語系住民が約3割をしめており, 1969年に英語とフランス語が公用語とされて以降, 住民の二言語化が進行した。とくに, 英語系住民とフランス語系住民が混住している州南東部では若年層を中心に英語系住民をも含めた住民の二言語化が顕著である。このような言語使用状況が形成された要因には, 次のようなことが考えられる。第一に, フランス語の公用語化, 教育, 家庭環境, フランス語系住民の適応戦略によってフランス語系住民がフランス語を維持している。第二に教育やフランス語の国際語としての評価の高さなどから一部の地域では英語系住民の二言語化も進んでいる。第三に, 言語境界線上の都市の存在も, 言語のテリトリー化の進行を阻害し, 逆に住民の二言語化を促進している。
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