季刊地理学
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東北地方における医薬品卸の情報化対応
中村 努
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2003 年 55 巻 1 号 p. 20-34

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抄録

本研究では, 東北地方における医薬品卸を対象として, 情報化への取り組みの現状と情報化がもたらす諸施設の機能分化および立地変化について検討した。医薬品卸は, 薬価基準の見直しおよび流通の規制緩和などの流通改善のなかで, 情報化によって既存の流通システムを再編した。
その結果, 情報ネットワーク化を背景とした企業立地の変化として, まず商物分離に伴う物流機能の郊外転出が捉えられた。さらに, 同一企業内におけるOTC部門と医療用医薬品部門の分離による支店の立地再編も確認された。すなわち, 公定価の対象外であるOTC部門では, 受発注オンライン化が進み物流拠点と支店が集約された。それに対して, 高度な商品情報伝達機能と緊急配送性を要する医療用医薬品部門では, いまだに対面接触による営業活動が重視され, 担当テリトリーの時間距離的中心を指向する支店の立地展開に変化はみられなかった。このようにして, それぞれの商品特性に対応した形で流通形態が再構築された。一方, 情報化に対応した企業合併による商圏の広域化とそれに伴う支店の統廃合が確認された。

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