季刊地理学
Online ISSN : 1884-1252
Print ISSN : 0916-7889
ISSN-L : 0916-7889
大雪山国立公園, 裾合平周辺における登山道侵食の長期モニタリング
渡辺 悌二太田 健一後藤 忠志
著者情報
ジャーナル フリー

2004 年 56 巻 4 号 p. 254-264

詳細
抄録

大雪山国立公園の中でももっとも利用者が多い地域の一つである, 旭岳姿見の池から裾合平周辺において, 1991年以降, 10~13年間にわたる登山道侵食のモニタリングを実施した。侵食量・侵食速度の見積には, 登山道の断面を反復測量する方法をとり, 侵食量を体積ではなく流失した土壌の面積であらわした。
算出された侵食速度は193.4~1,402.5cm2/yr (平均617.4cm2/yr) で, 観測地点による違いが大きかった。また, 土壌侵食量・侵食速度は, 同一地点においても年による変動が大きく, 1~3年間程度の短期間のモニタリングでは, 侵食速度を正確に知ることはできない。短期間の侵食速度は, たとえば1999年の事例からわかるように, 夏季の豪雨によって著しく大きくなる。これまで大雪山では, 融雪水の恒常的な供給が土壌侵食に大きな貢献をするものと考えられてきたが, 夏季の豪雨の貢献も大きいと考えるべきであろう。
これらの結果から, 中・長期的国立公園管理にとっては, 長期モニタリングによる侵食速度の見積が不可欠であることが強調される。しかし同時に, 短期間のデータの蓄積も必要であり, 定期的な反復測量を長期モニタリングの中に位置づける必要がある。

著者関連情報
© 東北地理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top