季刊地理学
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農村部における住宅復興過程
2003年宮城県北部の地震
中澤 雄太村山 良之
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2007 年 59 巻 2 号 p. 71-86

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抄録

本研究は, 2003年7月26日宮城県北部の地震で被災した農村部における住宅復興の実態と課題について明らかにすることを目的とする。世帯レベルの聞取り調査にもとづいて, 被災直後の避難から住宅再建または補修に至る住空間の変化と, そのための資金確保に注目し, 農村部としての特徴がどのようにこれらに影響するか検討した。(1) 自宅敷地内で避難生活を送るものが多く, それを可能にする空間が農村部には存在するが, 農機具や付属建物など住宅被害以外の費用も多くかかる。(2) 再建世帯における主な資金源は住宅ローンであり, 共済や地震保険がそれに次ぐ。住宅ローンを組めたのは農外就業の若い世代と同居する世帯である。一方ローンを組めずに転出した世帯もある。(3) 県や国の支援制度は, 金額と支給対象制限のために, 再建には効果的とは言えない。(4) 補修世帯では, 共済や地震保険と県の支援によって全額の費用を賄った世帯が多い。(5) 再建世帯では農地転用の要不要によって, 補修世帯では自力補修かどうかによって, 再建や補修時期に遅速が生じた。このように, 農村部の特徴は住宅復興過程にも反映しており, それに対応した支援制度などが求められる。

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