天理医療大学紀要
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宗教者による非信者への宗教的ケアについて 〜天理よろづ相談所病院事情部講師の活動に関する 患者への質問紙調査より〜
山本 佳世子
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2020 年 8 巻 1 号 p. 13-26

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抄録

天理よろづ相談所病院の患者に対し,当病院で活動する宗教者(事情部講師)の活動をどのように捉えているのかを尋ねる無記名式の質問紙調査を行い,非信者にとっての宗教的ケアの意義,非信者への宗教的ケアのあり方を再考した。2018年12月に290人に質問紙を配布,224人から回答を得た。うち天理教信者は33人であった。

事情部講師の訪問を8割以上の患者が受け入れており,対話と,「おさづけの取り次ぎ」という病気平癒を願う宗教行為が行われていた。回答者のほとんどが,事情部講師に対して肯定的印象を持っており,非信者でも「神様の支えを実感した」と回答したものが29人いた。事情部講師に勧誘されたと答えたものはいなかった。再訪を希望する者は39%,希望しない者は7%,どちらでもいいが42%であり,講師への印象の良さに比して再訪の希望は少なく,消極的肯定であることがわかった。事情部講師との関わりによって価値観や死生観に影響があったと回答した者は34%,なかったと回答した者が30%,わからないが18%だった。

以上より,患者が天理教信者であるか否かに関わらず,事情部講師による対話と祈りがともに広く受け入れられ,価値観の変化をも起こしうる,祈りによる「生き方」を支える宗教的ケアが実現していた。事情部講師による非信者に対する宗教的ケアとして,講師との関わりから何らかの超越的存在に触れるという「間接的な宗教的体験」による宗教的ケアと,真摯な祈りに対する感謝に基づく宗教的ケアがあった。そこでは信頼関係が求められ,対話によって信頼関係を結ぶことで宗教的ケアに移行するだけでなく,まさに祈りという宗教的行為によって信頼関係が生まれることもわかった。一方で,講師の訪問を負担に感じる非信者の患者も少数ながらいた。

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