天理医療大学紀要
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臨床検査データの関連性を反映した新しい基準範囲設定の試み
山西 八郎
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2021 年 9 巻 1 号 p. 4-12

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抄録

 臨床検査データに対する臨床的判断指標の一つである基準範囲は,多数の健常者(基準個体)における測定値分布の95%信頼区間として設定される。しかし,各検査項目の基準範囲は独立して設定されており,検査項目間の臨床的関連性は反映されていない。そこで,本研究では,健常日本人臨床検査データより,「細胞障害」「腎機能」「脂質代謝」などと解釈できる指標を因子分析により抽出,スコア化することにより,従来の基準範囲に代わる新しい判断基準(健常判断指標)を創出することを目的とした。さらに,スコア化した各指標と生活習慣との関係について要因分析した。その結果,「細胞障害指標」「炎症指標」「脂質代謝指標」「骨代謝指標」「腎機能指標」と解釈できる5つの因子が抽出された。そこで,それぞれの指標について基準範囲を設定したところ,すべての指標で地域差は認められなかったが,「炎症指標」以外の指標で性差が,また「骨代謝指標」で年齢差が認められた。一方,各指標と生活習慣との関係については,特に適度な飲酒習慣は脂質代謝スコアと骨代謝スコアの上昇を抑制する効果を有することが認められ,逆に過度な飲酒習慣は骨代謝異常の原因となることが示唆された。健常判断指標は関連する検査成績の総合的な臨床情報を内包しており,また生活習慣改善のための指標としても有用であると考えられる。

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© 2021 学校法人天理よろづ相談所学園 天理医療大学
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