Thermal Medicine
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温熱感受性ならびに温熱効果の修飾について
高橋 健夫
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2007 年 23 巻 4 号 p. 171-179

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抄録

温熱療法 (hyperthermia) は以前から癌治療の3本柱である外科治療, 放射線治療ならびに化学療法についで直接的な殺細胞効果を持つ治療に位置づけられてきた. 通常43°C以上の加温が実現できるとin vitro, in vivoのいずれにおいても強い抗腫瘍効果を引き起こす. 43°C以上の加温では, 細胞致死に関与する不活性化エネルギーが異なっていることが知られている. 43°C以下での加温, mild hyperthermia単独では細胞致死効果は軽微であるものの, 抗癌剤 (anti-cancer drug) やサイトカイン (cytokine) ならびに低線量率放射線 (low dose-rate irradiation) との併用効果により顕著な増感効果を示す場合が多い. またmild hyperthermiaは局所的に用いても免疫能を高め, 免疫による細胞致死効果を増強させることが明らかになりつつある. 温熱療法の機構は温熱耐性 (thermoresistance) に関わるとされてきた分子シャペロンであるheat shock protein (HSP) が, 実は免疫能を高める役割を果たしていることも明らかにされつつある. 一時は低迷していた免疫療法ならびに温熱療法が, それぞれの組み合わせにより従来考えられていた以上の効果を発揮する治療へと変貌を遂げる可能性を秘めている. また遺伝子学的にも温熱療法のメカニズムが解明されつつあり, 標的遺伝子をターゲットにした温熱併用の分子標的治療の可能性も模索され始めている. 今回は, これらについての現状を解説する.

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© 2007 日本ハイパーサーミア学会
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