Thermal Medicine
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磁気粒子イメージングを用いた磁気温熱療法と化学療法との併用に対する腫瘍反応性の定量的評価
大木 明子田上 穂小林 彩友美村瀬 研也
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2017 年 33 巻 2 号 p. 39-51

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抄録

磁気粒子イメージング(Magnetic Particle Imaging: MPI)は磁性体ナノ粒子の外部磁場に対する非線形磁化応答特性を利用したイメージング法である.磁気温熱療法(Magnetic Hyperthermia Treatment: MHT)では,磁性体ナノ粒子をがん組織に取り込ませ,外部から交流磁場を印加し,磁性体ナノ粒子を発熱させてがん細胞を死滅させる.シスプラチンはがん治療に臨床で広く用いられている白金製剤である.本研究では,磁気温熱療法とシスプラチンを用いた化学療法を併用した場合の磁性体ナノ粒子の腫瘍内空間分布の経時的変化および抗腫瘍効果について,MPIを用いて検討することを目的とした.
BALB/cマウス(雄性8週齢)の皮下にマウス直腸癌由来細胞株(Colon-26)1.0×106 cells/100 μLを播種し,対照群(n=10),MHT単独群(n=11),シスプラチン単独群(n=8)及びMHT・シスプラチン併用群(n=8)を作成した.腫瘍体積が100 mm3を超えた時点で,シスプラチン単独群ではシスプラチンを5 mg/kg腹腔投与した.MHT単独群では腫瘍部に磁性体ナノ粒子[リゾビスト(γ-Fe2O3)]250 mM(14.0 mg Fe/mL)溶液 200μLを直接投与し,MHTを20分間行いMHTの前後でMPI撮像を行った.MHT・シスプラチン併用群では,シスプラチン投与1時間後に同様にMHTを行った.MHTから3,7,14日後にもMPI撮像を行い,磁性体ナノ粒子の経時的変化を観察した.MPI撮像後,最大MPI画素値の40%以上の画素値を示す領域を関心領域(region of interest: ROI)として,平均画素値,最大画素値,ROI面積を評価した.腫瘍体積は治療当日から14日間毎日計測し,抗腫瘍効果を腫瘍体積成長率を用いて評価した.また,治療から3日後の腫瘍を切除し,ヘマトキシリン・エオジン染色を行い腫瘍組織を観察した.対照群では腫瘍体積が100 mm3を超えた日の3日後に腫瘍を切除した.
リゾビストの腫瘍組織内の空間分布の経時的変化については,シスプラチン・MHT併用群におけるMPI画像の平均画素値および最大画素値の変化率はMHT後3日目にMHT単独群に比べて有意に高値を示した.MHT・シスプラチン併用群の腫瘍体積成長率は,いずれの治療群に対しても有意に低値を示した.HE染色の結果,シスプラチンを使用した群では腫瘍組織が広く傷害される傾向が見られた.
本研究結果より,磁気粒子イメージングを用いて磁気温熱療法と化学療法との併用に対する腫瘍反応性を定量的に評価できる可能性が示唆された.

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© 2017 日本ハイパーサーミア学会
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