Thermal Medicine
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Hikeshiノックアウト細胞におけるHSP70阻害剤YM-1の効果
ラーマン KMZ小瀬 真吾今本 尚子
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2017 年 33 巻 4 号 p. 129-134

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抄録

Hikeshiは,熱ストレス時に熱ショックタンパク質HSP70(HSPA1, HSPA8)を核に運ぶタンパク質である.ヒトでのHikeshi機能欠損は重篤な遺伝性疾患の原因にもなるが,Hikeshiの細胞機能の詳細はまだ十分には解明されていない.我々は以前,二種類のヒト培養細胞(HeLaがん細胞,hTERT-RPE1不死化細胞)を用いて,タンパク質毒性ストレス(Proteotoxic stress)応答におけるHikeshi欠損の影響を解析した.その結果,HeLa細胞では,Hikeshiをノックアウトすると,タンパク質毒性ストレスによって細胞生存率が低下するが,hTERT-RPE1細胞では,Hikeshiをノックアウトした方が,p21(WAF1/CIP1)発現が亢進し,タンパク質毒性ストレスに対して,より強い抵抗性を示すことが判った.p21は細胞周期進行を抑制し,その発現は,がん抑制遺伝子p53によって制御されている.今回,我々は,HeLaとhTERT-RPE1細胞において,Hikeshi欠損とHSP70機能阻害が細胞情報伝達に及ぼす影響を調べた.HSP70阻害剤YM-1で処理すると,HeLa細胞では細胞死を,hTERT-RPE1細胞では増殖停止が誘導された.さらに,YM-1処理によって,hTERT-RPE1細胞ではp53とp21の発現が劇的に誘導され,両細胞において,細胞周期制御因子であるFoxM1とsurvivinの発現が抑制された.今回の結果は,Hikeshiの有無に関わらず,YM-1でhTERT-RPE1非がん細胞を処理すると,p53-p21経路が活性化し,細胞死が抑制されることを示している.Hikeshiは,HSP70の上流制御因子として機能することで,特にタンパク質毒性ストレス時において,p53-p21経路の活性を制御している可能性がある.

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© 2017 日本ハイパーサーミア学会
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